三話
ふう……、とりあえずこれで一通り主だった人達には挨拶しおわったかな?
右手につけている腕時計を覗き込むとイベント終了までには中途半端に時間が余っている。
酒の量もなんとかセーブできたし、一度家に帰って休もうかな? イベントの締め挨拶もあるし……。
「カズヤく〜ん」
「ああ……瑠菜ちゃん、こんばんわ」
深い切り込みの入ったタイトスカートのスレンダーな美女が声を掛けてくれた。
「ねえねえカズヤくん、いつになったら私を彼女にしてくれるの〜?」
ああ、そういえば何日か前に告られてたんだっけ?
「どうかなあ?……その話ならまずは友達から始めようか?まずはお互いを理解しあわないとだからさ」
「うそ〜!そんなこと言ってこの間、女の子二人侍らせてたじゃな〜い。一体誰と付き合ってるの〜? OL? ショーガール? もしかしてモデルとか?」
「ははは、どっちだろうね?」
「ええ〜、なにそれ〜? まあいいや彼女の枠空いたら電話してね。でも和哉君、そんな態度ばかりだと本当に好きな人が出来たとき辛くなるよ〜?」
「そうだね、肝に命じておくよ」
瑠菜ちゃんからの忠告を耳に入れてとりあえず別れる。
彼女は数年くらい居ない。
一応数人程度は付き合ったことはあるけれど、男女交際というものは疲れてしまう。
やれバレンタイデーだとかクリスマスだとか記念日だとかで、男は春夏秋冬どこをとっても気が抜けるときがないじゃないか。
だから今は一人でいい。
それに今は将来にとって大事なときなのだから……。
だがたまには息抜きも必要だ。 気の置けない友人達との会話が……。
それに女の子は付き合うと面倒くさいけれど友達としては最高だからね。
タイミングよくメールが届いたのでVIPルームへと僕は戻る。
ふと先ほど言われていた言葉を思い出した。
そんな態度じゃ好きな人が出来たときに辛くなる……か。
果たしてこれから先に本当に好きな人が出来るのかな? なんとなく今まで出会ってきた女性達の顔を思い出す。
だがその誰もが嫌いではないけれどあえて大事な時である今を放棄してまで付き合ってみたいと思う人は居なかった。
結局はそのときになってみないとわからないよね。
無駄なことを考えてもしょうがないか。
ホールから抜け出てVIPルームへと続く扉を開いたときには一瞬だけ考えたそれは忘れ去っていた。




