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第六話:変人は変人を呼ぶ

第六話

 ハルカと一緒に羽津魔法学園へと向かっていると、肩を叩かれた。

「やぁ、おはよう」

 この世界にやってきて、俺に興味を持った者は大抵が只者ではない。何せ、魔法を使える世界の住人だからな。これで美少女、美女なら面倒事を増やすだけだと俺の中で決めている。

 しかし、今回ばかりは女の子じゃなかった。

「……誰だ、あんた」

 そこそこの美男子が真面目くさった表情で立っていたのだ。

「友達に向かってそれは酷いな」

「……友達?」

 あっちの世界の友達である友人に雰囲気が良く似た男だった。あくまで、雰囲気だけだ。残念ながら美男子率では勝てそうにない。

「いつものやり取りをしないとなると……一体どうしたんだい?」

 ああ、こいつもか。

 この世界の俺の友達、なのだろうか。

「ハルカ、この人は誰だ?」

「えーと、この人は冬治さんの友達(自称)の、親友さん、だと思う」

「ちかとも?」

 あと、自称ってつかなかったか。俺の気のせいかね。

「そう、おれの名前は只野親友だ。冬治の友達だよ」

「ああ、やっぱりそうか。悪いが俺は……」

 この世界の冬治じゃないんだ。

 そう言おうとするとハルカが前に出た。

「この冬治さんは親友さんが知っている冬治さんじゃないんです」

「なるほど。道理で変なわけだ。あいつは冷たい印象だったが、今日は大分優しい感じがする……ああ、もしかして君が召喚したのかい?」

「はい」

 親友とやらは俺をじっくりと眺め、頷いた。

「あのさ、悪いことはしないほうがいい」

「はぁ? 何の事だよ」

「突然こんな事を言われても困ると思う」

「ああ、すげぇ困ってるわ」

 駅前でアンケ受けたら変な器材買わされそうになった時くらい、困惑してるよ。ファミレスで囲まれた時、突破するまでかなりの時間がかかったなぁ……尋常じゃないプレッシャーを放っている人達だったぜ。

「この世界には魔法がある。魔法は万能じゃないし、人体に影響を及ぼしたりもするもろ刃の剣だ。君も魔法を学ぶのだろう?」

 俺を見た親友に一応、頷いておいた。

「多分な」

 内心、なにいきなりシリアス顔で言ってるのだろう……そんな気持ちだ。いきなり見ず知らずの人間が説教してきても十二分におかしい。

 周りの人達なんて俺らの事を遠巻きに見てるぞ。目立ってまた変なのに目をつけられたらどうするんだ。

「たとえ魔法の素質が無くても、覚えておいてほしいんだ。じゃ、おれはこれで」

 そういって親友とやらは去っていった。

「何なんだ、あいつは。俺が冷たいなんて適当な事を言いやがって」

「……さぁ」

 ハルカは何かを知っているようでそっぽを向いてしまっている。

 俺はそれなりにフレンドリーなんだぞ? 見てみろ。会って間もない女子生徒とぎこちなさなんて皆無のやり取りをしているんだからな。

 まぁ、この世界に召喚したのがオスだったら知らないがな。

「あ、あんたは……」

「ん?」

 声をかけられ、そっちを見るとドラゴンから助けてくれた女の子がいた。

 確か、名前は……。

「向日葵ナツキ?」

「覚えてたんだ。ありがとう」

 何で礼を言われたのかよくわからなかった。ふむ、はにかむ姿は悪くないな。

 ぼけっと見ていた俺のわき腹に何かがぶつかる。

「いてっ、肘で突くなよ」

「……頬、緩んでる」

「え、嘘だぁ」

 撫でたらもう一発もらった。

「確認しないとわからないの?」

「別に緩んでいても問題ないだろうに」

 そんな俺らのやり取りを気にせず、向日葵ナツキも隣に肩を並べた。

「ここにいるってことは冬治も魔法を学ぶの?」

「えーと、まぁ、そうなる……のかな」

「そうです」

 ハルカがどこか冷たい感じで頷いた。この前助けてもらった時もそうだったけれど、ハルカはナツキに対してどうでもよさげだ。

 ハルカの反応なんていざ知らず、何やら嬉しそうな表情を浮かべている。

「あ、そうなんだ。あたしは防衛魔法が得意だから。わからない事があったら言ってね」

「防衛魔法?」

 首をかしげる俺にナツキではなく、ハルカが口を開く。

「……攻撃魔法の事。他者に肉体的ダメージを与える魔法だよ。ドラゴンを倒してくれたとき、見たよね? ちょっと危険な匂いがする魔法だから」

「ああ、なるほど……どう見ても防衛用じゃない気がするんだが。というか、さっき言った通りの攻撃魔法でいいんじゃないのか?」

 水のヴェールが質量をもって相手を押しつぶすのだ。どう考えても防衛とは程遠い。攻めと守り、あのヴェールはしぶきに変われば氷の飛礫となって対象へと襲いかかった。

「平和な今のご時世、そういった魔法は殆ど必要ないからね。後ろめたい人とか、誰かに追われているとかなら必要かもしれないけど。そもそも、向日葵ナツキはこちらの冬治さんと何かしらあって魔法をぶっ放しているところを何度かお見受けしてますよ」

「おい、ハルカ。一体どうしたんだよ」

 俺の言葉に頬をふくらませ、ぷいっとそっぽをむく。

「あ、私、用事が出来たんで先に行くから」

 ハルカはそう言って先に歩きだしてしまった。

 そして、俺とナツキが残されたわけだ。

「あ、えっと……」

 先ほどの説明をされれば誰だってナツキの事を色眼鏡で見てしまうと思う。俺だってそうだ。ああ、そう言われればあのドラゴンと戦っている時のナツキの目はこの平和なご時世に対して闘いを求めているような気がしないでもない。

 それに、こっちの世界の冬治と何かあったらしい。

「あの、あたしは……」

 向日葵ナツキの言葉を手で制して、思いついた言葉を並べてみることにした。先入観で身を滅ぼす……という事もないだろうが、一方的な言い分を飲み込むと落とし穴に落ちてしまう。

 そう、異世界なんて存在しない、ただの日常を過ごしていく。安寧な毎日をこれから過ごせると思っていた俺みたいにな。誰にだって何かしらの事情はあるんだ。

「あんたがどういった人なのかまだよく知らないけど……助けてもらったのは事実だ。だから、ありがとう。じゃあな」

 途中で言っていて恥ずかしくなってきた。

 ナツキの返事を聞かずに、俺はそのままハルカの後を追って走りだした。

「うーむ、自分で言っておいて何だけど、これは思ったよりも恥ずかしいぞ」

 まるで好きな人に告白をした後のような気分だ。

 告白なんてした事はないけどさ。

「……告白された事もないけどなっ」

 先を歩いているカップルを視界に入れないようにして俺は先を急ぐのだった。


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