表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/45

第五話:偉大なる一歩

第五話

 ハルカとマシロの家で休んで次の日、俺はソファーで眠っていた。

「冬治さん、朝ですよ」

「ああ? 誰だお前……いたっ」

 一発頬を打たれて目が覚めた。

「私が誰だか分かる?」

 俺の腹の上に、またがって……朝のキスをする距離で話しかけてきた。

 残念ながら、胸倉を掴まれた後にキスは望めそうもない。一発殴られて、その笑顔を見せつけられて目の前の少女の名前が浮かぶ。

「ドラゴンから俺の事を助けてくれた向日葵ナツ……」

「マッハパンチ!」

「ぐへっ」

 パンチと言いながら俺の腹にヒップアタックをするのはやめてくれ。

「思い出しました?」

「……櫻井ハルカ」

「うん、大丈夫」

 何が大丈夫なのかは知らん……知らんが、俺の頬とお腹は大丈夫じゃない。

 遠慮なく打つなんて中々酷い事をしてくれる奴である。顔に似合わず、優しくないのだろう。もっとも、可愛い子全てが優しい世界だったなら世界から争いは消え失せるね。

 そんな俺の不満がわかるのか、ハルカは笑った。

「もうちょっと優しく起こされた方が良かったですか?」

「出来れば」

「じゃあ、次は左手で打ちますね」

「違いがわからんぞ。どこら辺に優しさがあるんだ」

「利き手じゃないから」

 意外と屁理屈をごねる人間なんだろうか。

「嬉しそうだな」

「憧れてたから」

 俺は何だか幸せそうなハルカを残して顔を洗いに行った。

「どうぞ、タオルです」

 顔を洗うと近くにハルカが立っていて、タオルを手渡してくれる。

「おう、ありがとう」

「ご飯、出来てますよ」

「悪いな……」

 ふむ、さっきは不満を垂れてしまったが意外と世話好きなのだろうか? ちょっと照れ臭いものの、悪くない。

 目玉焼きを突きながら、ハルカ、俺、マシロの三人でテレビを見る。

「昨日起こった事件です。使用禁止ランクS魔法の異次元転移魔法、または召喚魔法が使用されたと羽津警察が発表しました」

「……」

 俺はその言葉にハルカの方を見る。

 これ、ハルカの事じゃね? 人間を召喚するのっていけない事なんじゃね? この後の展開ってもしかしなくても警察に怯えつつ逃亡者せいかつなんじゃね?

 しかし、至って普通の態度でマシロもハルカもご飯を食べている。

「異次元転移魔法だって」

「凄いねー」

「だね」

「……異次元転移?」

 首をかしげる俺に、ハルカは解説を始める。

「自分を異世界へと召喚するんですよ。この世界で犯罪なんかを起こしても、他の世界に逃げる事が可能です。逃げてしまえば、追ってくるのはごく一部の人間……しかも、どこへ逃げたか特定するのはほぼ不可能だもん」

 これは実感がこもっているような言い方だった。誰かで試した事があるのだろうか。

「へぇ、そりゃすげぇな。俺が使えたら元の世界に戻れるんだよな?」

「うん。使用すれば戻れますよ。ま、使えたらの話ですけど」

 そうだよなぁ、こっちの世界に居た俺は魔法が使えたらしいが、俺はそもそもこの世界で魔法と呼ばれている物の事をよく知らない。

 そんな俺の表情も魔法使いは読みとることができるのか、にっこりと笑って言った。

「魔法の事、詳しく知りたくない?」

「え? 教えてくれるのか?」

「ううん、私は説明が苦手だから……」

「じゃあ、マシロが?」

 マシロの方を見ると彼女も首を振っている。

「本でも買えと?」

「違う違う。学校だよ。教えてもらえるよ?」

「……何か裏がありそうな気がする」

 異世界に来て困惑しているものの、比較的二人には歓迎してもらっている気がする。しかし、ここまで上げ膳据え膳で……魔法の事まで教えてもらえるなんてちょっと話が出来過ぎている気がする。

 困っている事と言えばこの世界に召喚された事だけ。

「裏なんて……ないよ? 強いて言うのなら冬治さんの世話を焼きたいだけ……かな」

「本当かよ。目が泳いでる気がする」

「気のせい! でも、魔法を勉強するのはいい事でしょ? 冬治さんが魔法使えるようになったら自力で元の世界に戻れるしねぇ? まぁ、他の人にお願いする方法もあるけどさ」

「え、他人に?」

「うん。業者に頼めるよ」

 鳴る程、魔法が日常的に使用されているのなら別におかしくない事だな。

「ま、異世界召喚系の魔法って百万は下らないけど」

「……」

 それだけの価値があると言う事か。

 マシロは気付けば居なくなっており、ご飯を食べているのは俺だけだった。

「それで、どうする? 私と一緒に、学園に行く?」

 童顔の挑戦的な表情に俺は頷いた。ここでノーといったらこの家のざしきわらしになるだけである。

「ああ、教えてくれると言うのなら教えてもらうさ。だがな、俺はお金を……」

「そっちは大丈夫。私が何とかするから」

 校長の娘か何かだろうか? 首をかしげたが、そろそろ行くとのことで俺は急いでご飯をかきこむのであった。

「え、今日からか」

「はい、速い方がいいでしょうから」

 外へ出ると空が高かった。今日もいい天気になりそうだ。

「さ、行こう」

「……何だ、その右手は」

「迷子にならないように手を握ってあげようと思って」

 やれやれ、変なところでご機嫌を損ねたくないからな。一応、言う事を聞いておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ