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第四話:永遠のいる世界

第四話

 俺の手を引いてやってきたのは一般庶民が住むような築二十年ぐらいの家だった。よく言えば風情のある、悪く言えばぼろい、そんな家。

「此処です」

「そうかい」

「何か感想は?」

「たとえばどんな感想だ」

「とても素晴らしい家ですねぇ」

 何かを期待するかのような目は辛いもんだな。あいにく、将来は建築方面に進むつもりはないので家の事なんてわからない。

「こほん、あー、見えますね。あそこの窓から中年男性の霊が満面の笑みを浮かべていますよ」

「そんなの居ないから!」

 若干怯えた感じで回し蹴りを喰らった。

「……まぁ、家は住めさえすればいいんじゃないかと」

 しばらく考える素振りを見せるが、結局何も言わず俺を家の中へと案内する。

「あのさ、召喚がどうたらこうたらって言ってただろ?」

 犬を飼い始めたら捨てちゃ駄目、ハルカも言っていたけれど、俺もそう思う。

「ええ」

「そうだとしてもだ。よく知りもしない男を家にあげるのは危機感が無さ過ぎないか?」

 俺が女の子だったら得体のしれない男を家の中にほいほいあげたりしない。いい男を俺の家にご招待すればその晩はアッーと驚く展開が待っているに違いないね。

「大丈夫だって。だって、この家に一人で住んでいるわけじゃないし」

 あっけらかんとして言うハルカに俺はため息をつく。

「だとしてもだよ」

「私、こう見えても強いから」

 力瘤を作るようにして見せるが、俺には今一つ理解できなかった。覆いかぶさったら魔法が発動する……のか?

 それにしたって、不用心である。

「あのな、俺はハルカのためを思って……」

「お客さん?」

 俺達の声が聞こえたのか、淡くて白い、幻想的な少女が現れた。

 少女の姿は時折透けて、向こう側が見えたりしている。

 ぼろっちい家にはやはり、お化けがいるのだろうか。

「……」

 その少女は俺を見て……愛おしそうに眺めた後、空気が変わる程の殺気を感じたのだった。

「あ、やっぱり驚いてる!」

 少女の姿を見て、口を開けた俺にハルカは実に嬉しそうだった。あまり歓迎的な雰囲気じゃなかったんだけどな。ほいほいと知らない人について行った俺の方が危ないんじゃないのか?

 俺の心情なんて察することなく、ハルカは家へあがると白い印象を与える少女の隣へ立つ。

「紹介するね。こっちは夢川冬治さん」

 おい、気安く指差すんじゃないよ。

「知ってる。でも、彼は……」

「それで、こっちは永遠マシロ。以上、紹介終わりっ」

 マシロという名前の少女が何かを言う前に、ハルカは紹介を終えてしまった。

 人物紹介ってもうちょっと必要だろうに……。

 紹介された少女は黙って俺に頭を下げた。

「永遠マシロです」

「俺は夢川冬治だ。よくわからないうちにこっちの世界に召喚されてここまで連れて来られた……ところで、あんたは幽霊か?」

 俺の言葉にマシロは少し困った表情になる。

「マシロは精霊になりつつあるんだよ」

「精霊?」

 ハルカの説明に首をかしげる。精霊と言われて頭に出てくるのは政令のほうだ。

「魔力が体を蝕みすぎるとね、最終的に魔力の塊になって霧散しちゃうの。もうちょっとうまく説明したいんだけど……簡単に言うならその過程ってところかな」

 起承転結の起、結を言われた気分だ。

「すまん、よくわからん」

「更に簡単に言うと、魔法を使いすぎた人間って事かな」

 マシロは困ったようにまたほほ笑んだ。

「そうなんです」

「そうなのか……といっても、全然理解してないんだが。そもそも、魔法って概念がまだよくわかってない」

 魔法陣があって、杖があるのは理解した。ついでにお化けがプラスされたら良くわからないが……ま、あれだ。こっちにいる期間が長ければわかるんだろう。

「ま、この話は追々するからさ。とりあえず冬治さん、お茶を出すよ」

 少し汚れた廊下を歩き始めると、俺の左側にマシロさんがひっつくようにして歩き始める。

「ん?」

「あ、すみません……」

「いや、別にいいけど。ところで、マシロさんは……」

「マシロ、そう呼んでください」

 俺とタメか、一つ下ぐらいだろうか? それにしては大人びた印象を受ける少女だが……名前で読んでほしいと言った時の表情は我がままを押しとおす子どものようだった。

 俺に背伸びしたい年頃の妹が居たらこんな感じなのだろうか。でも、妹がいる兄貴って『いらねぇ、姉がほすぃー』と言ってたし、隣の芝は青いって奴なのだろう。

「わかった。マシロって呼ぶよ」

「ありがとうございます」

「それで、マシロも魔法、使えるのか?」

「勿論です。多分、どんな魔法も使えますよ」

 これはいい話を聞いた。

「俺を元の世界に戻す事も?」

 しばらく間を置いて、マシロは笑った。

「そうですね、出来ますよ」

「おお、そいつはすげぇ」

「ただ……」

「なに話してるのー、早くこっちにどうぞー」

 どうやらハルカがお茶を入れたらしい。

 俺とマシロは顔を見合わせて急ぐことにしたのだった。

「また、いつか話します」

「ああ、期待してる」

 思ったよりこれは早く帰る事ができそうだ。

 あっちの世界に戻ったら友達にこの事を話そうか……そう思いながら俺はハルカの淹れてくれたお茶に口をつけるのだった。


こんにちは作者の雨月です。とりあえず一巡ですね。先に言っておきます。私ではない誰かがこの小説を書いてくれたら間違いなく、面白くなるでしょう。腹がよじれてもだえてアヘってしまうぐらいの面白さになると思います。私が何べん生まれ変わろうと、世界が明日終わるとしても、私が作者である限り、これを読んでくれている読者をどうにかしてしまうのは不可能です。明日から本気出す……人間、本気を出したら老人になってしまいます。あっという間に老けこんで、朽ち果てます。つまり、全力を出す瞬間で一番リスクが少ない時は今にも命が消えそうな時ですね。私が全力を出すのはその時です。おそらく、その時は「今なら、面白い文章が書けるかもしれない……」そう言い訳することでしょう。平和と言えど、事故は起こりますからね。みなさんも交通事故にはくれぐれも気をつけましょう。

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