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第四十三話:アキホ

第四十三話

 人間、努力をすれば人が変わっちまうのかね。

 それまでろくすっぽ勉強していなかったアキホが急に勉強をし始めたと話を聞いたのはついさっきのことだった。

「んー、変われば変わるものだ」

「本当だな」

 シドと食堂で偶然会った俺は一緒に昼ご飯を食べていた。

 ここの食堂は安くて結構なボリュームだから男子生徒に人気がある。

「いやぁ、最近僕も忙しくてね。ハトは逃げるわ、ハトがトランスを使った何だで警察に捕まるわで」

「ああ、だから学園に居なかったのか」

「そうだよ。でも、君らも大変だったんだろう? 何でも、僕の母親に逢いに行こうとか何とか」

「ん?」

 其処まで聞いて首をかしげる。

「お前の母親じゃないよ。アキホの母親を探すって話になってたんだ」

「はは、そうだよ。僕の父親はね、アキホの母親と再婚しているんだ」

 シドは優雅に紅茶を啜りながらそんな事を言った。いつもの軽さはなりを潜め、悟ったような表情をしている。

「へ? どういう事だ」

 シドは俺の変な顔をみて苦笑している。

「僕が彼女に近づいていたのも母の……アキホの母親の意向だよ。学園の入学式のときに偶然、彼女を見つけたそうなんだ」

 母親と言うものはそういうものらしいとシドは首をすくめていた。

「久しぶりにあった娘の事が気になって僕に近況報告をさせてたんだ」

「どうしてそんな回りくどい事を……」

「精霊化が始まっていたし……ああ、軽度さ。魔法を使用しなければ寿命が来るのが先だよ。それに、今更どの面下げて娘に逢えばいいんだって言っていたよ」

「何だよ、そう言う事ならさっさと言ってくれればいいのに」

 親って言う物は逢わなくたって子どもが元気ならそれでいいんだよとシドは呟いた。

「この話、アキホには内緒だよ。本来は、君が元の世界に戻って居たら話しているつもりだった」

「……ああ、なるほど」

「本当はね、僕が彼女の心を射止めて……家に紹介して、ドッキリにさせるつもりだったんだ」

 シドはそれだけ言うと先に立って行ってしまった。

 世界ってせまいんだな……そう思っていたら声をかけられる。

「冬治君、一人で何をしているんですか」

「昼飯を食ってる。アキホこそどうした」

「お昼を作ってきました。どうぞ、食べてください」

 そういって可愛らしい弁当箱を差し出される。

「あのね、俺今……お昼ご飯食べてるんだわ」

「ささ、卵焼きの出来はグッジョブですよ」

 あーんしてくるアキホに俺はため息をつくしかない。

「やれやれ、相変わらず強引なところがあるな」

「嫌いですか?」

「いいや、好きだよ」

 俺は箸を置いて、甘んじてあーんを受け止める。

「っしゃ、いいだろう。俺の胃袋にこの程度のお弁当が入らないとお思いかっ」

「よかったぁ、冬治君だったらそう言ってくれると思っていました。まだ、ありますからね」

 そういって可愛らしいお弁当箱の隣に重量感のある御重が幅を利かせる。

「これ、食べ終えたらわたしの事好きにしていいですよ」

「……いいだろう、この程度のお重で俺が屈服すると思うなよ」

 俺の胃袋が音をあげるのはそれから数分後の事であった。

「どうですか、好きな女の子に胃袋を蹂躙される気分は?」

「はは、最高だね……だがね、俺の胃袋が根をあげたところで……諦める気はさらっさらだ」

 夕方になるまでに、俺は料理を食べ終えた。非常に残念なことに、保健室に運び込まれた俺が、彼女の事を好きにする時間なんてなかったのだ。

 ま、いいだろう。これから先、そんな時間がやってくるさ。

「今度は、二倍の量にすれば冬治君はもっと喜んでくれますね」

 来るだろうか、来るよね? 来てほしいなぁ……。


今回でアキホ編、終了です。四人の中でもっともまとものような気がしないでもありません。もし、やり直すとすればおそらく今回の四人の中で一番伸びるような話にしたいと思います。アキホ編を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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