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第四十二話:トランス

第四十二話

 夢川冬治がトランスしたハトに襲われ、消失したと言う話は羽津魔法学園に広まることはなかった。

 一部の生徒にだけ知らされ、元の世界に戻ったのだと説明が行われた。

 おかしいなと思う者も数名居たが、記憶操作の魔法等で真実に近づけた者が居ても、大抵が忘れ去られると言う結果になったのだ。

 ただ一人を除いて。

「冬治さんを返して……」

 何のことはない、住宅街のアスファルトの上……花束を置いたナツキに声をかけてくる人物が居た。

「……ハルカ、って言ったかな?」

 竜を仕留めたナツキの元へとやってきたのは櫻井ハルカだった。彼女の手には大きな花束が握られていた。

「何か用?」

「防衛魔法なんて使っているから、冬治さんが巻き込まれたんだ」

「そう、かもしれない」

「聞いたよ。冬治さんは逃げようって言ったんでしょ? あんたが、逃げずに闘うとか言うからだ。防衛魔法が得意とか言っていた割には貧相な魔法ぶつけたんだって? 囮にして冬治さんが襲われている間にぶつけて間に合わないとかさ……」

 ナツキの魔法をぶつけられた竜は空中で魔力となって霧散。冬治の姿が見つかることはなかった。

「……あたしだって、辛いんだ」

「辛い? ふざけんなっ! 原因はあんただ。あんたがいなければ冬治さんはっ」

「……それをいったら、ハルカが冬治を召喚しなければあの人は普通の生活をしていたと思う。」

 危ない色を眼に湛え、ハルカはナツキを睨みつけた。

「あんた、此処で消してやる……」

「ごめん、冬治のためにも消えるわけにはいかないんだ」

 おかれた花束を中心にしてお互い距離を取った。

 一触即発の中、声が聞こえてくる。

「おいおい、何を喧嘩してるんだ。と言うか、誰だ、人を勝手に死んだ者として扱っているのは」

「え……」

「と、冬治っ」

 死人を見たような顔をして、二人とも精霊化しつつある少年を見つめた。

「ど、どうしてっ」

「どうしても何も、あの竜の中に魔法陣があったんだ。ハトに魔法が効かなかったのは別の場所に繋がってたんだよ」

「別の場所?」

「そう。ハトを飼ってた馬鹿の所だ。シドって言ったかな……そいつの所からハトが逃げ出していたらしい。やられたハトはハト小屋へ行って、また元気なハトと入れ替わるみたいだ。ま、あいつらのおかげで立派なハト小屋で過ごす羽目になっちまった。人は来ないし、中から鍵はかけられているしで大変だったわ……あ、そうそう。ナツキ、そこのハトの小屋の中にワープする魔法陣が逢ったみたいでな、ハトはそこから色々な場所に出ていたようだ」

 おかげでハトの餌で数日過ごす羽目になったぜ……冬治はため息をついていた。

「よかった……」

「はは、そうだな。よかったよ。解決して……ところで、二人はなんで喧嘩してたんだ」

 冬治の問いかけに、ナツキは首を振る。

「何でもない。ただ、ちょっと冬治の事が好きだって話をしてたから」

「ははぁ、なるほど。冗談でも嬉しいね」

 冬治は肩をすくめるのであった。

「とりあえず事件は解決だろ。ナツキ、手伝ったんだから何か奢ってくれよ」

「うん」

「ほら、ハルカも行くぞ」

「……わかってる」

 ナツキは冬治の隣に立つと、声をかける。

「冬治」

「ん?」

「お帰り」

 頬にキスしただけだったのだが、ハルカとナツキは喧嘩を始めるのであった。


今回でナツキ編終了。元の世界の冬治との関係性が薄いかなぁと思いつつ、気づけば終了していました。当初、元の世界の冬治を追い詰め、裏切られたことに関して恨み、魔法で消し飛ばした犯人と言う結構暗いたちいちでした。終わりも、冬治と共に過去に飛ばされ、そこで冬治がその事実を知ってしまったまま、元の世界に逃げ帰るという山姥見たいなオチ。さすがに暗いなと思ったので第二が今のような形ですね。治癒魔法を失敗し、中に魔力の塊を残したままの冬治は竜に食われ、内側と外側から魔力にむしばまれて蒸発する……そんなオチ。あれですね、精神状態に中身が左右されるのは非常に、駄目ですね、うん。あぁーどっかに暇な作者がいたら是非、やり直してほしい……と、思う今日この頃。次回はアキホ編終了予定。これまでナツキ編を読んでくれたそこのあなた、ありがとうございました。

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