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第四十話:黒と白

第四十話

 俺が殴り飛ばした先に居るのは、女の俺だった。

「と、冬治さんが……女? こっちの世界の冬治さんは女だったなんて……」

 記憶のないマシロは驚いて俺の後ろから見ており、え、じゃあ付いてないのと両手で口を覆っている。

 女の子が付いてない、だなんて言うんじゃありません。

「こいつは正確に言うと異世界の俺じゃあない。この世界の夢川冬治はもう、死んでる」

「死んでるって……何故?」

「相当昔だ。というより、生まれた時にね。この人は双子の姉か、妹だ」

 俺がそう言うと目の前の冬治は立ちあがった。

 目の前の女の子は、マシロのように身体が白く、透けている箇所が多かった。

「本当の名前は、夢川冬菜」

「なんだい、死んだ弟が俺に逢いに来てくれたのかい」

 口元を歪め、冬菜は笑っていた。

「だがね、そいつはよくないタイミングだった。いきなり殴り飛ばされたことに関しては不問にしてやる。お互い、時間が無いんだからねぇ」

 流れをぶったぎる形でそんな事を話し始めた。

「お互い? どういう事だ」

「ちっ、来たか……」

 冬菜が通ってきた道から、輪郭しか残っていないマシロが現れた。それは完全に透けていて、白いだけのマシロとは違う存在だ。

 そいつは俺と、冬菜を交互に見比べて硬直していた。どうやら、似ている為に判断がつかないらしい。考える力は殆どないようだ。

「おれとした事が失敗しちまってね。魔力の塊のマシロ、マシロとくっついた俺……そして最後にカスが出来た」

「カス?」

「そうだ。俺が学園の女子から魔力を集めて作り出した際の負の念が魔力によって実体化したとでも言えばいいのか」

 予想外だったと言う割にはあまり悔しそうにしていなかったりする。

「本当は、魔力を永遠に増幅させる魔法陣を作り、この世界を精霊化させるつもりだった。俺が魔法陣を発動させると……俺たちは助かって、バランスの崩れた世界はあっという間に巨大な魔力の塊になって終わるはずだった」

「……酷い事を考えるんだな」

「酷いことだって? いやいや、この世界の連中は魔法をとっても大切にしているからね。精霊化して、魔力となって消えれば嬉しくて思わずおっちぬだろうねぇ」

 目の前の精霊は未だに俺と冬菜を交互に見ているだけだった。

「……俺の両親は二人とも魔力となって散っていったよ。誰ひとりとして、精霊化を止めるすべを知らなかったし、まるで名誉だと言わんばかりの面をする老人どもがいた」

 唾を吐きだし、冬菜は笑った。

「マシロと俺は一つになった。この世界に居続けても精霊化の進行は止まらない……魔法を使わなくても、いずれやってくると思う。だから、嫌な思い出に蓋をしたいんだ」

「蓋をしたい? 滅ぼすのとはわけが違うだろ」

「はは、さっきも言ったろう? 結局は出来なかった。本来作るはずのそれはカスになっちまったんだよ。そろそろ、そいつも動きだす頃合いだ」

 それまで動かなかった精霊は冬菜の方へ視線を向け、地面を滑るように移動し始める。

「今の俺は、あんなのを相手にする程、余裕が無くってね。悪いが囮になってもらうよっ」

「あ、ちょっ……まだ聞きたい事がっ」

「俺の方はないよ。あばよ、兄弟」

 俺らの脇をすり抜けて、冬菜は魔法陣の中へと入りこんだ。そしてすぐさま呪文を唱え始める。

「……我に異世界への翼を授けよっ」

 たったそれだけの呪文で巨大な魔法陣は動き始め、冬菜の姿は消失していた。

「ど、どうするんですか冬治さんっ」

 残っているのは俺とマシロと、あとよくわからない黒い人型一体。

「逃げよう。あいつはやばい気がする」

「ですね。でも、どうしますか」

「あの魔法陣を使えないか?」

「やってみますっ」

「元の時間に戻ろう。あんなの相手にする必要はない」

 俺とマシロは魔法陣の中へと入り込む。

 杖を取りだしたマシロは呪文を唱えることなく、それをふるう。

 瞬間、この世界にやって来た時の嫌な感じが俺を襲った。

「冬治さん、ちゃんと手を掴んでいてくださいね」

「わかってる」

 あの時と違ったのはトイレじゃなかった事、隣に誰かいること、そしてこちらに近づいてくる魔力の塊がいることだった。


なんと、気づけば四十話。終わりが近い、終わりが近い、されど終わりが見えてこぬ……どうも、作者の雨月です。次回作である気になるあの子とアルケミスト、いつもと違って個別に考えていたらなんともまぁ、一人はもう終わりまで目前。これ、ちょろいんじゃないのと思うのもほんのちょっとの間だけ。何せ、面子は決まっていてもあらすじなんて全然考えてないんですもの。神様なんていないけれど、どうか一日を倍に伸ばしてください。そうすれば、作者がせっせと駄文を書けますから。

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