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第三十六話:冬の秘密

第三十六話

 永遠マシロにとって、新しく出来た家族は憧れであり、自慢の家族であり、邪魔な存在であった。

「マシロ、一緒にお風呂に入ろう?」

「え? やだよ」

「いいじゃん。別に」

「やだってばー……ああーっ」

 魔法が使えないマシロは、魔法の使える、しかもかなり優秀な部類に入る家族に対してあまりにも無力であった。

 束縛しながら浴室へ向かう途中、マシロはため息をつく。

「……はぁ、せめて女の子に戻ってよ。お風呂に入る時の約束だったじゃん」

「悪い悪い」

 トランスを解いた人物はにやりと笑う。身長が低くなり、胸には微かではあるが、ふくらみがあった。

「……姉さん、また進行してるんじゃないの?」

 肩まで伸ばされた髪の毛は周囲に漂う魔力に反応して淡く光った。

「気のせいだろ。おれはそんなにヤワじゃないよ」

 精霊化の進行で、光を浴びても影は出来なくなってしまっている。常に浮遊し、輪郭も稀にぼやける状態であった。

「ま、いずれ魔力になるのは間違いない。だがね、マシロ。もう準備は出来ているよ。これ以上、精霊化が進まなくていい方法を俺は見つけているし、実現することなんて容易いんだ」

「……本当?」

「本当だよ。俺に任せてくれればいい」

「その前に、わたしに魔法を使わせてよ。わたし、魔法が使いたい」

「ああ、そうだった。それもちゃんと準備してるから安心してくれ」

 それから一週間後、マシロは家族と共に学園にて、ある魔法を発動させる。

「姉さん、これ……どういうこと?」

「どういう事も何も、こういう事だよ」

 マシロの意識化の中にはもう一人、誰かが入っていた。

「あの肉体はもう使い物にならないからね。マシロの中に入るしか俺に残された道はなかったよ」

「わ、わたし魔法が使えないんだけど……」

「大丈夫。ほら、あそこで横たわっている精霊になったマシロを見て……あれなら、マシロは魔法使いだ。精霊となってしまった俺の肉体を元にして魔力が作りあげた最高の魔法使いさ。それに、俺と一体化したんだから充分、使えるよ。だがね、この世界の魔力は濃すぎる。どっかの馬鹿が魔力生成の魔法陣を作成したまま、管理を失ったんだ。無限に生成される魔法陣何かを何かが受け止めれば……終わりだ」

「う、うん」

 そんな時、教室後方の扉がノックされる。

「夢川冬治、ここにいるんでしょ? 魔力生成魔法陣の疑いがかけられてる。大人しくついてきて」

「ちっ、向日葵か……」

 舌打ちをし、マシロの体を動かし始める。

「姉さん……」

「大丈夫。俺が何とかして見せる」

 窓を突き破り、彼女は逃げ始めるのであった。その時、教室をちゃんと確認していればよかったのかもしれない。

 精霊とはまた別の、黒い魔法陣から作りあげられた人型のそれは、虚ろな目をして外へ出て行ったマシロを見つめているのであった。


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