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第三十四話:冬の色々

第三十四話

 向日葵ナツキと夢川冬治の出会いは学園入学時にさかのぼる。

「こんにちは。ここ、いいかな?」

「え? あ、うん」

 羽津魔法学園入学式、その頃より防衛魔法で名を馳せていた向日葵ナツキの元へ夢川冬治から近づいて行ったことがきっかけだった。

 一見すると実にさわやかな見た目なため(ここら辺は異世界からやってきた冬治とは格が違う)、既にナツキは騙されかけていたりする。

 これ自体も魔法が無ければできない事で、魔法の使えない冬治とは次元が違うのだ。

「やぁ、ここ、いいかな?」

「……イケメンだ」

「ん?」

「何でもない。あの、あんたは?」

「俺? 俺の名前は夢川冬治。今度ここの一年になったんだ」

 笑うだけで、きらりんエフェクトが出ていたと関係者は証言している。

「そうなんだ。あたしの名前は向日葵ナツキ。防衛魔法を得意としてる。夢川は?」

「やだな、冬治と呼んでくれよ。俺は平均的だよ」

 不思議な話で、その声を耳にするだけで気持ちが良くなると言う不思議なものだった。

「ふーん? 将来はどんな魔法使いになりたいの?」

「そうだね、未来を変える魔法使いかな」

「未来を変えるって……荒唐無稽過ぎでしょ。そもそも、そういう類の魔法や思想は禁止されてるし」

 魔力があれば、何でもできる……過去にそう言って世界をつくりかえようとした魔法使いが居たらしく、その際に酷い精霊化が起こったらしい。

 実力の伴わない魔法使いが似たような事を言っても鼻で笑われる程度であるが、実力を伴っていると計画し始める可能性があるのでそれだけで逮捕されるのだ。

 それだけ、魔法が便利で実現させるのが容易い事ともいえる。

「はは、冗談だよ。魔法は未来を変えてくれる……そう言うつもりだったんだ」

 目の前にいる冬治に対し、ナツキはちょっとだけ興味を持った。

「あのさ、あんたの魔法をちょっと見せてよ」

「ああ、いいよ」

 にこりとほほ笑み、冬治は立ち上がる。

「よく見ているといい」

「わかった」

 立ちあがり、学ランをはためかせる。もし、ナツキが魔力を見ることが出来たなら自身を包むピンク色の魔力が見えていた事だろう。

「……ちょろいもんだねぇ」

 ナツキから見えない場所で、冬治はほくそ笑みながら呪文を口にする。

「杖、使わないんだ?」

「え? ああ、必要ないからね」

 魔法陣を漂わせ、冬治は指を鳴らす。

「魔法って言うのはつまるところ、道具さ。わかるかい? 君は防衛魔法が得意と言ったね。でもさ、こんな平和なご時世に防衛魔法なんて必要だと思う?」

「……いや、あまり」

 ナツキが防衛魔法を使うときはもっぱら、他の女子生徒に対して痴漢をはたらく輩をブッ飛ばす時や他校の生徒と拳を交えるときだけなのだ。

 相手が防衛魔法だけならまだ良かっただろう。ナツキが闘ってきた相手は防衛魔法以外の幻覚魔法等を使用し、搦め手も多用する。

 防衛魔法のみで、勝利を掴み取ってきた彼女からすれば、それ以外に使用する用途は無かった。

 彼女自身、数少ない友達や両親から『防衛魔法は辞めて、他の魔法を使ったらどうか』と言われていたのである。

 しかし、なかなかそれは難しい話でもある。防衛魔法を通じて知り合った不良の中には器用なことが出来る奴はおらず、両親も『力こそが全て』というような防衛魔法一家だったりする。

 防衛魔法以外を学ぶため、羽津魔法学園へと入学したのである。

「ドラゴンを知っているだろう?」

「ドラゴン? 知ってるけど……それが?」

 確かに存在するのは確認されているが、余程の事が無い限り一般人がお目にかかることはそうない。

「最近、ドラゴンその他のモンスターに襲われるって話がある」

「うん?」

「幻影か、はたまた本物か……ともかく、人を襲う魔物は確かに存在してるんだ。この平和なご時世にね」

 人差し指をくるくると回しながら、冬治は続けるのであった。

「そう言ったものに対して、防衛魔法を使って助ける人達が居るんだ。そうだね、話だけでも聞いてみたらどうだい? 紹介してあげるよ」

「ちょっと、考えさせてほしい」

 その後、冬治の紹介によりナツキは防衛魔法を存分に使用し始める。

 そして、彼女の近くに冬治の姿が頻繁にみられるようになったと言う。

 それもまた、冬治が新しい女の子を見つける間だけだったが……。


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