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第三十話:獰猛なる和平の魔物

第三十話

 ナツキが一人で警察やら病院やら向かっている間、俺はハルカと行動を共にしていたおっさんの所へ行っていた。

 ちなみに、入手経路は親友からである。あれからそのおっさんと知り合いになったらしく、防衛魔法の手ほどきを受けてるとか何とか。

「こんにちは」

「弟子からの呼び出しかと思ったら夢川冬治君か」

 いつの間にか、親友は師匠と弟子の関係になっていたらしい。

「ええ、この前は後をつけるような真似をしてすみません」

「気にしないでいいよ。向日葵君の事が心配だったんだろう?」

「ま、少しは」

「安心していい。私は女の子に興味はないからな」

 怖気がした。親友、お前はもしかして……。

「冗談さ」

「心底安心しましたよ」

 ここにいるのは危険だな。

「それで、私に何か用かな? 向日葵君の好きな男子のタイプなんかはちょっとわからないぞ」

 てっきりごつごつの体育会系と思ったらジョークから入るのが好きらしい。

 俺としてはすぱっと入って、ぱぱっと話を終えるのが好きだったりする。

「実は以前、ドラゴンに襲われているところをナツキに助けてもらった事があるんです」

「それで?」

「どうやってあいつはドラゴンを見つけたのかと……ドラゴンが出てきて十分は経っていませんでしたからね。偶然近くにいたとしても、かなりいいタイミングで助けてくれました」

「ふむ……それは偶然ではないな。魔法の中には探知というものがあって一定を超える魔力を感知出来るんだよ」

「ほぉー」

「そうだなぁ。数ヶ月前、住宅街からドラゴンが出た事がある。その時からかな、かなり魔力の振れ幅が安定していない。場所によっては爆発的な魔力が物体を精霊化させているんだよ。持論だがね、精霊化を経て……モンスターになっているのではないかと思ってる」

 ナツキは人間がトランスをして、そのままモンスターになっていると思っていたからな。やはり、同組織でも考えの違いは出てくるようだ。

「一つ質問していいですか」

「何だい」

「ドラゴンに襲われた時、ドラゴンは火も何も噴かなかったんですよ。俺の世界では……あ、実際にはいませんよ? ゲームや、映画、創作上ではよく火を噴くんです。何故、噴かないのかわかりますか」

 ここにこだわるのもおかしな話かもしれない。しかし、こっちに来てゲームや文献なんかを見ると火を噴いている描写は沢山あった。

「そうだな、本物はきちんと火を吐く」

「本物?」

「ややこしくなるから良く聞いてほしい。トランスを使っていたとしたら単純にトランスの魔法を維持するのが精いっぱいになり、攻撃方法は限られてくるんだ。物理的な物か、近くの物を壊して潰すか程度だろうね。だから、ドラゴンやらその他のモンスターが現れたとしても離れて闘えば問題はない」

「へぇ」

「それに自分より大きいものへのトランスの維持は非常に難しい、逃げ続けていれば助かる。もっとも、本物のドラゴンの場合はその限りじゃあ無いがね。他に何かあるかい?」

「あ、いえ、特には……」

「なんだ、もっと聞きたい事があるのかと思ったけれどこの程度でいいのかい?」

「ええ。ありがとうございました」

 それから特に話すことはなく、俺はおっさんと別れて公園へと向かう。ナツキと落ち合う約束はとりつけてある。

「ったく、うまくいかないもんだな」

 足元に転がっていた小石を蹴っ飛ばすと、公園にたむろする平和の象徴である鳥にあたってしまった。

「あ、やべ……」

 こっちの世界のハトは超危険であることを思い出した。群れると、烏なんかを魔法で焼き鳥にするぐらいやばい存在である。

「くるっぽー」

 ハトは驚いて……一旦上空へと舞い上がる。

 そのまま逃げてくれるかな……そんな期待が胸をふくらました。

「くるっぽおっ」

 ただ、それも数秒。今度は急降下して魔法陣を前に展開してきたのだ。

「嘘だろ?」

 魔法陣は消えて、今度は火の球が降り注ぐ。

「マジかよっ」

 慌てて頭から茂みの中へと飛び込んだ。先ほどまで俺が居た場所に、着弾跡が残る。

「ったく、こっちの世界のハトは平和じゃないんだな……ハトにやられたなんて噂が広まったら元の世界の連中から笑われちまう」

 しかし、ハトを傷つけるのは胸が痛む……というわけでもないが、連中、鳥獣愛護法で守られているんだったか? だとしても、さっきのあれを喰らっていたら洒落にならなかったので、あれだ、正当防衛だとおまわりさんに言っておこう。

「ちっ、ハト公が……最悪、刺し違えてでも倒してやる」

 適当な木の枝を拾って、構える。

「くるっぽーっ」

 ハトは再び魔法陣を展開……今度は氷のつぶてが降ってくる。それを避けても、今度は雷やら風やら水やら飛んでくる。

「うわっち! ……ほーんと、多彩な奴だな」

 それらを全て避け、低空飛行してきたハトへ木の棒を振り落とす。

「せりゃっ」

 すれ違う瞬間、ハトが笑った気がした。しかも、大爆笑などではなく、嘲笑っぽかった。

「っぽっぽー」

 馬鹿にしたかのように華麗によけ、ハトは今再び飛びあがった。

「くそっ」

 そして、ハトは魔法陣を展開する。しかし、今度のそれはこれまでと違うようだった。

「五重?」

 五つ、魔法陣が出てきて一直線へと並ぶ。それはハトが近づくまでに一つへ重なった。

『……!』

「なんだ、ありゃあっ」

 どでかい魔法でも飛んでくるのかと思えば、そうじゃなかった。

 おそらく、いや、絶対にどんな世界のハト図鑑にも載っていないだろうハトだ。言うなれば、犬図鑑にプレーリードックが載っているような感じだ。

 結論から言おう。ハトは違う何かに変身していた。

 あれは……映画やゲームでしか見た事のない……グリフォン?

 大きさ、約五メートルのそれは公園へと着地。

 地響きなんてしなかった。威嚇することなく、かといって俺を睨むことなくグリフォンは大地を蹴ってくる。

 自分の方が圧倒的に強いと言う事を理解したうえでの、何でもない突進攻撃。巨体で押しつぶす……そこに魔法は必要ない。

「無理無理無理無理っ」

 木の枝をグリフォンに投げつけてあっさり退却。あんなハトに勝てるはずもない。というか、あれはハトじゃない。

『……!』

「ぐへっ」

 背後からの突進をよけようとして、翼をぶつけられた。たったそれだけで、真正面に迫るアスファルトの壁に全身で体当たり。

 例えを出すならば、ある三流小説家がバイトの際に宙に吊るされた一トンの砂袋を振り子運動させて辺り、五メートル吹き飛んだ後に頭を強く打って気絶したぐらいの威力である。

 幸か不幸か、俺は気絶しなかったが……。

「ぐぬぬ……」

 鼻血を垂らしながら何とか立ちあがる事が出来た。グリフォンは空へ飛びあがり、大きな口をこちらへと開けていた。

 くそ、食われる……。

 率直な感想がそれだった。

「冬治っ」

『……! ……!』

 しかし、グリフォンはどこからか飛んできた魔法で撃ち落とされた。翼がちぎれ、首がもげ……小さなハトになって飛んでいった。

「ナツ、キ……今のはマジで、助かったわ……」

 口の中にたまった鉄分を吐きだし、歯が一本取れていた事に気付いた。生まれたての小鹿のように立ちあがろうとするが、ふらついた。

「と、冬治っ……」

 ナツキに支えられ、ようやく立ち上がる事が出来た。きっと、試合終了数秒前のボクサーはこんな感じなのだろう。

「何でそんなに泣きそうなんだよ」

「だって、血だらけじゃないっ」

 あんな化け物に襲われて歯が一本折れた程度なら安いもんだ。

「……お前だってさ、一歩間違えれば血まみれなんだぜ?」

「わかってる」

 べそをかいているナツキの頭に手を置いて、軽く撫でる。

「だったら、別に俺が血まみれになっても問題ないだろ?」

 俺の胸に顔を押し当て、涙を拭いている。其処で気がついた。

「……やべぇ、こりゃあ……あばらもやばいようだ」

 嫌な汗が頬を伝う……抱きしめようとして辞めたもんだから、ナツキが顔を挙げた。

「ぐすっ……冬治?」

「だ、大丈夫だよ。ナツキが助けてくれたおかげでぴんぴんしてる。ところで、モンスター出現に一つ要素が加わったな。ハトかもしれない」

 其処らにたむろしているハトが、全部トランスをしてきたら……防ぐどころか、人間はハトに負けるだろう。

 近くのハトへ視線を向け、ナツキは目を真っ赤にしていた。

「どうだろ、調べてみないとわからない。ただ、あたしが知っている話じゃ、野生のハトが魔法を使うなんて聞いた事が無いよ。人が飼っていると魔法を覚えるのは聞いた事があるけど……」

「そうかい、じゃあ、俺も探すのを手伝うかな」

「駄目っ! 今度やったら間違いなく、死んじゃう!」

 泣きじゃくるナツキのおでこに一発デコピンをしてやった。

「そりゃそうだろ。こんな非日常的な話に巻き込まれてるんだからな。ナツキが助けてくれないで一体だれが助けてくれるんだ。俺は、お前の事を信頼している。だけどな、お前が泣いてくれているように俺もお前が血だらけになっている姿なんて見ていられない」

 急激に恥ずかしくなってきたので、鼻の頭を軽く掻く。

「なんっつーか。ナツキに守ってばっかじゃ駄目だな。俺は、お前の事を守れる男になりたいんだ。俺、ナツキの事が好きっぽいからな」

「えぐっ……冬治―っ」

「ぬほおおおおおおおっ」

 俺は、紳士さ。

 例え、泣き叫びたい程の痛みを与えられたとしても……。

 例え、全身の毛孔からやヴぁいぐらいの汗を流しても……。

 心の中だけで叫んで、気絶するぐらいの紳士なのさ。

「冬治? ねぇ、ちょっとどうしたの……冬治? え、まさか……冬治っ、冬治っ……いやああああああっ」

 公園でナツキの絶叫が聞こえる。

 違うんです。ナツキさん。

 お前が考えているような展開になっていないんです。


やったね、皆のおかげで第三十話突破……はい、あとがきを始めます。カラスが頭いいってのはよく知られていますが、ハトも結構頭が良かったりします。田舎の人は今一つピンと来ないかもしれませんが(雨月は田舎者ですが)、都会の人の中にはカラスよりハトが嫌いという人もいたりします。ハトの話はこの程度にして、今後のお話をば。そうですね、特に考えていませんが今のところナツキ編、アキホ編、マシロ編以外はバッドエンドになりそうな臭いがぷんぷんしてますね……ん? 今回、冬治は一体どんな終わり方を迎えるのか、元の世界に戻るのか戻らないのか、リスタートの投稿をそろそろ再開しようか、などなど、忙しくなりそうですね。力(文章力)が、力(文章力)がほしい! いま雨月に必要な物は力(金)です。力(金)さえあればきっと面白い小説も書けると思います。ま、冗談はこのぐらいにして真面目な話、リスタートに盛り込む際の魔法使いはかなり話を変更する予定です。それではまた次回お会いしましょう。

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