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第二十五話:お礼を

第二十五話

 デートスポットが載っている雑誌を適当にとって、立ち読みを開始。今日はハルカをごまかして先に帰らせてもらったのだ。

 どっきりは探られちゃならんのである。

 いつだったかなぁ、友達が俺にしかけてくれるサプライズパーティーを偶然知ってしまった。ネタのわかった仕込み程、面白いものはないね……それなりに楽しめたけどさ。

「ふむ……」

「や、どうしたんだい?」

 立ち読みを開始して数十分後、親友が顔をのぞかせてきた。

「何だ、親友か」

「何だとは酷いな。誰かデートでも誘うのか」

「まぁな」

「まさか、また魅了の魔法を使って女子を……」

「おい、目が恐いぞ。俺は魔法使えないの忘れてないか?」

 そう言うとぺろっと舌を出す。やれやれ、この世界の連中は本当に冬治が好きなんだな。

「あと、勘違いするな。デートと言うより、これはいつもお世話になっているハルカへの恩返しだ」

 俺がそう言うと途端ににやけた顔になった。

「なんだ、そりゃよかった。二兎追う者は撃ちたくなる性格なんだ。いやー、よかったよ。友達に魔法を使うなんておれには出来ないから」

 意外と物騒なことを言う奴だ。

「魅了の魔法って良く聞くけどさ、そんなほいほいと使えるのかね」

 デートスポットの雑誌にも魅了の魔法のかかった石だとか、場所だとか掲載されている。魅了の魔法自体はそれこそ、うん百万円だと記載されている。

「ま、そりゃあね。だって異性がイチコロだからさ。ハーレムも目じゃない」

「へぇ、本当に使えれば凄いんだな」

「ああ、そうさ。この世界の冬治なんて一年、二年、三年……同時ってのはさすがに無かったみたいだけれど日替わりで女の子が変わっていたし。放課後や昼休み保健室の常連だったからなぁ」

 すげぇな、異世界の俺。一体何をしてたんだろうか。

「そんなに女の子に飢えてたのかねぇ……学園の女子生徒だけか?」

「いんやぁ、下は……伏せておくけど、上は六十ぐらいまでいってたみたいだよ」

 どんだけ女好きなんだよ、この世界の俺。

 まるで繁殖期の兎張りだなぁ……そう思って親友を見ると眉をひそめている。

「ま、おれとしては冬治が何かを企んでいたように思えるんだ」

「企む?」

 日本列島ハーレム化計画?

「ううん、どうも冬治と付き合った事がある女子生徒は魔法を体内に残されてるみたいだね……あ、いやらしい意味じゃない。それが何なのか、よくわからないけど、かなりの魔法使いだった生徒は冬治と付き合った後、軒並み平凡まで能力が落ちたらしい」

「ふむ」

「ま、そういうのもあって恨まれているんだろうね。女の子と付き合えば付き合う程、冬治の魔法の腕は上昇してたから」

 なるほど、それはそれで恨まれているのが何と無く理解できた。理解できたからと言って、納得はしていないからな? 本当、今だって後ろ姿を見たらつい魔法を消しかけたくなったと言ってぶっ放してくる奴がいるんだ。

 本当、教師の中にもそう言う人が居るから困る。

「それで、ハルカちゃんとデートに行くんだろう?」

「デートじゃないって」

 何の脈絡もない言葉に俺はため息をつく。

「男と女が二人で出掛けるのは……」

「それは調査って言うんだよ」

「誰が言ったのさ」

「ハルカだよ」

「何だ、初デートってわけじゃないのかぁ」

 何でそう、残念そうにするのだろうか。

「一緒に住んでいるんだから二人で出掛けるなんて普通だ」

「ああ、そうだったねぇ……」

 にやにやしながらこっちを見る親友に俺はグーを作る。

「おー、怖い怖い。じゃあ、これは要らないかな」

「これ?」

 そういって学生鞄から中々素晴らしい本を取りだした。

「ふっふっふ、『や~らπ』の今月号さ! ハルカちゃんと仲良くしているのなら必要ないだろう?」

「貸してくれ」

「え、いいのかな? ハルカちゃんに見つかったら凄い事になるんじゃないの?」

「ばれなきゃいいんだよ。それに、ばれても親友が偽装の魔法をかけてれば困らない」

 防衛魔法を習っている親友だが、幻覚魔法もある程度いけるのだ。なので、堂々と持っていてもばれない。

「でも、後ろにいるけど?」

 その言葉に俺は固まってしまった。

 嫌な汗が、首を伝う。

「じょ、冗談だろう?」

「確認してみればいいんじゃないかな? 腕組んで、こっちを見ているけど?」

 動きづらい首を動かして、徐々に、本当にゆっくりと右斜め後方を確認する。

「奇遇だね、冬治さん」

 これが幻覚魔法なら万々歳だった。

「ハルカ、ちょっと一発殴ってくれないか?」

 おそらく、目の前にいるハルカは親友が作り出した幻覚魔法。いつの間に、こんな魔法を使えるようになったのか不思議だ。

「マッハパンチ!」

「へぐっ」

 幻覚がパンチしてくるなんてあり得ないし、この痛みは本物だった。

「本当、男ってどうしてそう言う本が好きなんだろ。わざわざえっちな本を物色するために先に帰るなんて嘘までついてさ」

 親友は何故だか魔法陣をエロ本に展開していた。後で聞いたら燃やされそうだったからと答えた。

「本当だよねぇ。あ、でもさ、今回は大目に見てあげてほしいんだ」

「え、嫌だよ」

 何でその粛清が決定事項みたいな表情で言うのでしょか。爽やかマックスな顔が憎々しいぜ。

「いやいや、ハルカちゃん。実はね、冬治はハルカちゃんといくデートスポットを物色してたんだよ」

「え、そうなの?」

 驚いたような顔を見る。くそ、デートじゃないと言っているのに。

 観念しろよという親友の視線にため息をつく。

「……まぁ、二人で何処かに行こうと思ってな。かといって、ここらの土地はまだよくわかっていないし、遊ぶ場所も知らん。つーわけで、雑誌で情報を得ようとしたんだ」

「あ、そうなんだ……それで、場所は決まった?」

「まぁな」

 今年一回目の花火大会に誘う事にした。他に思いつかなかったのが大きい。

「そっか、そうなんだぁ……」

「何でにやにやしてるんだよ」

 さっきは烈火のごとく怒っていたのに変な娘さんである。

「冬治さん、帰ろう」

「あ、おい……」

 俺はまだ親友から借りてないのに!

 視線を親友の方へ向けるとこれまたニヤニヤしていた。くっそ、一発殴りたい程のにやにやっぷりだ。

「今度、貸してやるよ」

「あ、そうか。悪いな」

「なーに、いいってことよ」

 そう言っているような気がして俺は安堵のため息を心の中で温めたのだった。

 後日、借りた本が灰になった時はとても申し訳ない気持ちになったがね。


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