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第十話:皆が大好きな冬治君

第十話

 平和な毎日を過ごす事が出来る現代社会、それらがあるのは過去色々な争いを抑えてきてくれた人達のおかげなのである。

 しかして、人間というものはいくら平和になろうとある程度争ってしまうような生物なのだ。競争社会であるのは致し方のない話。勝者が出れば、敗北したものが出るのは当然の話なのである。

 哲学チックな事を考える俺の姿、とてもぼろぼろである。背中なんて男の雄姿じゃなくて、けが人のそれだ。

「つまり、今こうやって追いかけられている俺はそれだけ負ける確率が一番高いのだ。うむ」

 防衛魔法の授業にて、俺は女子生徒の怒りを買っているらしい。とりあえず、俺のせいではなく、この世界のおれの所為だ。

 そういった事情で狙われているのだ。

 ぶっちゃけいって、俺に似た俺以外の人間なのだからとばっちりをうけているも同然なのだ。

 面倒な事、この上ない。どれだけ恨まれているのかは知らないけども、裂傷とか底のない落とし穴だとか、踏んだらリアルに爆発する魔法も仕掛けられているなんて人が死ぬって。

 屋内での戦闘を想定したものだとかふざけた事を抜かしていたが……こんな平和なご時世に他者を攻撃する魔法なんて必要ないだろう、そう俺は叫びたい。まぁ、防衛魔法だからいいんですと返ってきそうだけどさ。

 行きすぎた防衛は、防衛ではない……例えるのなら、『あいつらやばそうだから先に滅ぼすべ。やられる前に、やってやらぁ』……こんな感じである。

「大丈夫?」

「ああ、何とか」

 それでも尚、防衛魔法学科の連中から逃げられているのは、俺がまだちゃんと人間の形をしていられるのは向日葵ナツキが助けてくれているからだ。

 屋上まで防衛魔法の雨あられを二人で受けながら逃げてきたのである。

「まさか男子生徒からも襲われるなんてね。気付いてた?」

「そうなのか。全く気付いていなかった。女子から逃げるのに必死だったからな」

 先生公認でやっていいとなると、女子の目の色が違っていた。先生も、何やら『これは冬治君が悪いんだからね』という女の表情になっていた。

 本当、この世界の俺は何をしていたのだろうか。

「男子連中にも何かしたの?」

「いいや、身に覚えが無いね。こっちの冬治がやらかしたんだろう」

「そっか、それならいいんだ」

 そこで疑問が浮かんだ。

「ナツキは何かされなかったのか?」

 俺の質問に対し、ナツキは粗野な杖を握りしめて唇を噛んでいる。

 悔しさをにじませて、鼻が赤くなってきた。

 これは相当聞いてはいけない事を聞いてしまったようだ。

 そういえばハルカがこっちの冬治と何かあったてきな話をしていたではないか。

「すまん、変なことを聞いてさ」

「ううん、あんたが悪いわけじゃないから」

「でもさ、何かされてもこうやって姿かたちが似た奴を助けてくれるんだからナツキもいい奴なんだな。ドラゴンの時も助けてもらったし、こりゃ足を向けて眠れないな。フレンドリーに話しかけてくれるし、魔法抜きにしたっていい友達に巡り合えたもんだよ。おまけに元気で、可愛いしな。よかったよかった」

 そう言うと顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

「か、からかわないでよ」

「嘘じゃないから安心して照れとけよ……さて、そろそろ終わりの時間かね」

 時計を確認し、この一方的ないじめショーの終わりを認識する事が出来た。

「校舎に戻ろうぜ。屋上は確かルールで駄目だと規定されてたもんな」

「う、うん」

 屋上に出たらその時点で失格である。どの道、魔法が使えない……使い方がわからない俺としてはどうしようもない話なのだが。

 集合場所である教室へ戻ると、他の生徒達が俺達を待っていた。

「え、嘘……」

「何であの二人が仲良く戻ってきてるの?」

 そして、俺たち二人が戻ってきた事に対して凄く驚いているようだった。おかしいな、俺の後ろをナツキが追うようにして来ていたのだから一緒に戻ってきても変ではないだろう。

 戸惑う俺に対し、ナツキはそのまま何も言わず顔色一つ変えないで席に着いた。

「はい、皆さんお疲れ様。防衛魔法合戦はどうでしたか?」

 どうみても合戦じゃない。猫多数に対し、鼠一匹のいたぶり劇だ。

 先生、生徒の無事を見て心底残念そうな表情をしないでくださいっ。

「またやりたいです」

 ナツキの一言でクラスがさらに静まりかえった。

「一体、何があったんだい」

「いや、俺に聞かれてもだな……」

 何か本当に起こったのだろうと言う顔をして、親友が何の事だかさっぱりだった。俺としてはまたこうやって悪意を持った連中が追いかけてくるのは御免こうむりたい。

「まぁ、君と向日葵ナツキは浅からぬ因縁があるからね。彼女としても色々とあるんだろうよ」

「……そうか」

 あの表情を俺は忘れないだろう。俺がもし、この世界にもう少し早く来ていたら……そうだな、ナツキがあんな表情をしなくてもいいようにしてやれた……かもしれないな。

「ああ、そうだよ」

 先生が話している最中、親友は俺に話しかけてくる。

「なにせ、君と彼女は……へぶもわっ」

「すみません、暴発しました」

 杖を親友へ堂々と向けて魔法をぶっ放したナツキは怒っているようだ。

「ぐふぅ……口は災いのもとだぜぇ」

「……まぁ、何だ。親友の事を思って続きを聞くの、やめとくよ」

「ありがとう……」

 俺を初めて助けてくれたとき、ドラゴンから救ってくれた魔法の縮小版を喰らった親友はそれから五分後にはけろっとしていた。

 やっぱり、魔法使いの世界に住む人間は、魔法に対しての耐性も高いのだろうか。


みなさんのおかげで十話突破。これも読者がいるおかげです、ありがとうございます、ありがとうございます。人気者って羨ましいと同時に、やはり嫉みの対象でもあるのでしょう。アンチがつくのは当然でございます。一度でいいから羨望のまなざしで見られたいものでございます。まぁ、よく後ろ指を指されるので問題ないのでしょう。うん、うん。人間、普通が一番いいなと最近思いました。いや、本当に。誤字、脱字、その他ありましたらメッセージ等で教えていただければ幸いです。なお、この小説は毎日投稿ではございませんのであしからず。

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