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 荒野を走る車と、それを追いかける一つの影。

 影は純白の翼を持ち、頭上には光り輝く環が浮かんでいる。

 その姿はまるで、天使そのものだった。


「クソッ! 【天使】がこんな場所に出るなんて聞いてねぇぞ!」

「文句は後にしろ! とにかく逃げるんだよ!」

「【討滅院】に連絡は!?」

「もうしてるよ!」


 車を運転している人間は、必死の形相で天使から逃げ続ける。

 そんな逃走車を天使は嘲笑った。


「ふふふ……あはははは! 無様、無様ね! 人間なんて、所詮我らが創造主たる神々の玩具に過ぎないのよ! さあ、もっと逃げなさい! 私にその無様な姿を見せるのよ!」


 人形のように整った顔を醜く歪め、天使は嗤う。

 天使の周囲が歪んだかと思うとそこから光の弾がいくつも発射され、地面を抉っていった。

 しばらく追いかけっこを続けていると、不意に車の目の前に一人の青年が現れた。

 その青年は奇妙ないで立ちで、白銀の鎧と漆黒のマントを羽織っていた。


「! おい、人間だぞ!」

「はあ!? 何でこんな場所に!? 車は!?」

「いや、近くには見当たらねぇが……」


 青年の出現に、運転者たちは必死に逃げながらそんな話をしている。


「助けられるか!?」

「無理だろ! 俺たちで精いっぱいだ!」

「でも見殺しになんて……!」


 何とかして青年を救おうと模索するが、背後から追いかけてくる天使がそれを許さない。


「あら? あらあらあら? もう一匹虫がやって来たようねぇ? いいわ、一緒に殺してあげる!」


 天使は両腕を広げると、上空に大きな光球が出現した。


「おいおい、嘘だろ……」

「【天使】クラスでこのレベルって……」


 車内の人間が天使の行動に絶望の表情を浮かべ、もうダメだと思った……そのときだった。


「させねぇよ!」

「なっ!?」


 突然、天使の生み出した光球が何かに撃ち抜かれた。

 天使は自分の技が未然に防がれたことで驚きと怒りで周囲を見渡すと、新たな車が一台、天使に向かって走っていた。

 新たな車に乗っている人物の一人が上半身を窓から乗り出し、狙撃銃を構えている。

 逃げ続けていた車の中で、その車を見た瞬間歓声が上がった。


「よっしゃあ! 【討滅者】が来たぞ!」

「これで助かる……!」


 新たにやって来た車は天使に追いつくと、天井に先ほど狙撃銃を構えていた人物がのぼっていた。

 逆立った赤色の髪に、意志の強そうな金色の瞳。

 頬に十字傷がある精悍な顔立ちの青年で、どこかの学生服のようなものの胸元に銅色のプレートが付けられていた。

 その青年を見て、天使は忌々し気に言う。


「クッ……【討滅者】か……!」

「連絡を受けて救援に来たんだよ。ま、運がなかったと諦めな」


 精悍な青年は先ほどまで構えていた大型の狙撃銃を光の粒子に変えて手首のブレスレットに収納させると、続いて二丁の拳銃を出現させた。

 その拳銃は黒を基調とした大型の拳銃で、スライド部分に鷲が刻印されていた。


「たかが人間の分際で……調子に乗るな……!」


 天使は周囲に光球をいくつも浮かべては精悍な青年を狙うが、そのすべてを青年は正確に銃で撃ちぬく。


「クソクソクソクソクソ! 何で当たらないのよ……!」

「残念だが、終いだ。ついばめ――――【デッドイーグル】!」


 青年がそう叫んだ瞬間、青年の手元にある二丁の拳銃が共鳴するように光り出した。


「『デッドウィング』!」


 青年の拳銃から、弾が嵐のように飛んでいく。

 それは拳銃の連射速度を軽く超えていた。

 撃ち出される弾の一つ一つがまるで羽のようで、天使を穿ち、切り裂いていった。


「ぎゃあああああああああああああっ!」


 天使は周囲の光球ごと撃ち抜かれ、そして最後は無残に消えていった。

 天使が消えたのを確認すると、青年は撃つのをやめる。

 青年が撃つのをやめた瞬間、両手の拳銃からプシューという音と共に、煙が噴出した。


「お疲れさん、また頼むぜ」


 拳銃に労わるように声をかけると、先ほどの大型の狙撃銃のように光の粒子に変え、ブレスレットに収納した。


「ミリア! 終わったぜ!」

「ちょっと、お兄ちゃん! もっと早く終わらせられなかったワケ!? こっちは天使の攻撃を避けるので必死だったんだけど!?」

「わ、悪い……次から気を付けるぜ……」


 青年は自身の乗る車を運転していた少女に声をかけると、ばつが悪そうにしながら席に戻った。

 運転席では腰まで伸びた赤い髪と、気の強そうな瞳が印象的な少女が不機嫌そうに車を運転していた。

 青年と同じような学生服を着ており、胸元には青色のプレートが付けられている。


「それで? 連絡してきた一般人はどこ?」

「ああ、向こうにいるぞ。……ん? おかしいな……あそこに一人、別の人間がいる」

「は?」


 少女は青年の言葉に一瞬呆けた表情を浮かべると、すぐに青年が指さす方に視線を向けた。

 するとそこには、先ほど逃げていた車の人たちが見つけた、鎧姿の変わった格好の青年が立っていた。

 よく見ると、助けた車もその青年の方向に向かっている。


「……取りあえず俺たちも向かおう」

「分かったわ」


 青年の指示に従い、少女は鎧姿の青年のところまで移動する。

 青年たちが到着すると同時に、先ほど助けた車もちょうど到着した。


「おい、こんなところで何してる?」


 精悍な青年が車から降りて、鎧姿の青年に声をかけると――――。


「――――腹が、減った……」

「は?」


 鎧姿の青年はその場に倒れるのだった。

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