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今回は胸糞悪い展開となっております。

ご注意ください。

「まったく……汚い血だ」


 ミリアの腹を貫いていた光の槍が引き抜かれる。

 それと同時にミリアは苦悶の表情を浮かべながらその場に倒れ伏した。

 しかしさらに追い打ちをかけるようにミリアを貫いた人物は倒れたミリアの頭を踏みつけた。


「残念でした~。ちょっとでも希望を抱いた人間を絶望のどん底に叩き落とす! いいねぇ、楽しすぎるねぇ!」


 ケラケラと笑うその男は純白の礼服に身を包み、背中には【大天使長】であるラオンより巨大な二翼が生えている。

 白銀の髪と人間離れした美貌から、隔絶した気配を纏っていた。


「てめぇえええええええええ! その足をどけろおおおおおおおおおおおお!」


 激昂したセオルドが両手に持つ【デッドイーグル】で乱射しながら駆け出すが、取り乱したことにより大きな隙を見せたセオルドにラオンは強烈な蹴りを叩き込んだ。


「無様だな、人間」

「がへぁ!?」


 全身が悲鳴をあげ、何本かの骨が折れる音が辺りに響き渡った。

 吹き飛び、無残な姿で地面を転がるセオルドを、ラオンはさらに蹴り上げて追撃した。


「フン」

「ガハッ!?」


 またさらにセオルドの骨が折れ、内臓の潰れる音が聞こえる。

 空中に浮かび上がったセオルドの体に、ラオンは残虐な笑みを浮かべてすさまじい殴打を繰り出した。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえええええええええ!」

「……! ……!」


 身動きの取れないセオルドに、ラオンが光の槍を使えば一瞬で勝負は終わっていた。

 だが、ラオンの体に傷を付けた怒りは収まっておらず、たっぷりと痛めつけ、嬲り殺しにする気で殴っていた。

 もはや折れていない骨はなく、ボロ雑巾のようにその場に転がるセオルド。

 それでもミリアがやられたことに対する怒りは消えておらず、その怒りだけで意識をつなぎ留めていた。


「ひゅー……ひゅー……」

「わお、驚きだ。あんだけやられてまだ睨みつけるだけの元気があるなんてねぇ!」

「……申し訳ありません、レスト様。少々羽目を外しすぎてしまいました。直ちに処理いたします」


 息を整えたラオンは、レストと呼んだ男に恭しく礼をしてそう告げると、レストは首を振る。


「いや、別にいいよ。それに、もうちょっと待って。今から面白いことするから」


 レストは地に倒れ伏し、セオルド同様に虫の息であるミリアの髪を掴み上げると、そのまま引き摺ってセオルドの目の前まで持ってきた。


「やあ! 元気かい? うんうん、とても元気そうだ。それにしても痛そうだねぇ~。このゴミも君も」

「ァ……! ッ……!」


 視線だけで人が殺せそうなほど、セオルドはレストを睨みつける。

 だが、レストはそれが心地いいと言わんばかりに笑みを深めた。


「くふふ……あははははは! 脆弱! 脆い脆い! 脆いねぇ、人間の体って! この星限定とはいえ、そんな人間の体と同じように僕たちまで脆弱だなんて――――不愉快なんだよ」


 高笑いしていたかと思えば、レストは急に表情を変化させミリアを地面に叩き付けると顔面を何度も踏み始めた。


「何で! 僕らが! テメェらゴミと! 同じ肉体構成にされなきゃなんねぇんだよ! ああ!?」

「ッ!」


 何度も何度も何度も何度も。

 執拗に、執念深く、レストはミリアの頭をセオルドの目の前で踏み続けた。

 ミリアの綺麗な顔は醜く歪み、もはや元の面影はない。

 そんな光景を目の当たりにして、セオルドは両目から血の涙を流しそうになりながら必死に腕をのばそうとする。


「ぅ……ぁ……!」

「知ってるか? テメェらゴミ同然の人間がどうして崇高なる僕たちと相手できているか。それはこの星とそれを覆う宇宙のおかげなんだよ! かつて世界を、宇宙を――――神々を生み出したすべての始まりであり、その神々を裏切った偽神が最初に創り上げた星と宇宙だ。そいつは神でありながら愚かにも人間の味方をしやがった! だからこの星は主である他の神々でも壊せねぇし、周囲の宇宙を弄ることさえできねぇ。なら直接地上に降りて殺せばいいと思ったら僕たちもテメェら人間どもと同じ肉体構成に強制変換されるようなルールをこの星に施しやがった。それを知らず人間どもの力だと勘違いしやがって……この鬱陶しい抑制さえなければテメェらなんざ一瞬で消滅させられるんだよ!」


 レストが激昂しながら語る内容は意識がほぼないセオルドにはよく分からなかった。


「おら、どうした? 何か反応したら? このゴミ、テメェの大切なモノなんだろ? 奪い返してみろよ。出来るもんならなぁ!」


 事実、セオルドにミリアを奪い返すだけの力は残されていない。

 それどころか、セオルドが万全の状態であったとしても勝てる見込みはなかった。

 何故ならば、目の前のレストこそ【能天使パワー】であり、街全体を覆う【神聖結界】を張った本人であった。

 セオルドの目の前でミリアを甚振り続けるレストに、ラオンが静かに告げる。


「レスト様。そろそろ他の討滅者たちの掃除も終了しそうです」

「あっそ。そこそこ時間かかったねぇ。まあいいや。じゃあこの二人もサクッと殺しちゃおうか」


 レストはもはや目の前のミリアとセオルドに興味はなく、すぐにでも殺そうとしたところで何かを思いついたように動きを止めた。


「……あ、このゴミは一応女か。それならまだ使い道があるなぁ。僕は嫌だけど、中には人間を陵辱するのが好きな変わった天使もいるし、それがダメならオークやゴブリンの苗床にするのもいいよね~。使えるモノは使わないと! 最悪魔物の餌にもできるしこの考え最高じゃない?」


 無邪気に笑いながら告げるその内容は本来笑いながら口にするようなものではない。

 するとラオンが無感情に告げる。


「そのお考えはとても愉快ですが、天使たちが持ち運ぶのを嫌がるでしょう」

「あー、それもそうだねぇ。じゃ、殺そ」


 あっさり考えを変えたレストは、ミリアをセオルドがよく見えるように地面に転がすと空中に大量の光の槍を浮かべた。


「よ~く見ててねぇ! 人間が僕の光の槍で串刺しになるところなんて滅多に見られないんだからさ!」

「ぁ……! あぅ……ぁ……!」


 骨は折れ、神経は切り裂かれ、動かすことのできない体で必死にミリアに近寄ろうとするセオルド。

 無様に転がるセオルドを見て、レストは笑みを深めて――――。


「はい、さよ~なら~」


 宙に浮かぶ光の槍が降り注ごうとしたその瞬間――――【神聖結界】が消し飛んだ。


「なっ!?」

「――――どういうことだい?」


 空を見て、驚愕の表情を浮かべるラオンと不愉快そうに顔を歪めるレスト。

 途切れる寸前の意識の中でセオルドも消し飛んだ【神聖結界】を見て――――。


「助けに来たぞ」


 聞き慣れた声が聞こえた直後、セオルドの意識はそこで途切れた。

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