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有里佳 エッセイ

アンビリバボー

作者: 有里佳
掲載日:2026/08/02

      

        

       臨死体験、母を思い出したら現世へ戻りました。

 その頃、何もかも充実していました。

二十六歳になって間もない二月は、所属していた会の伝統の月でスケジュールを忙しくこなしていました。


 その日、都会一人暮らしアパートに帰宅したのはPM九時半過ぎ、お部屋の中で一日の終わりにするべきことを済ませて時計を見たら十一時、お布団を敷いて寝る時間です。

でも、この夜はよく冷えていつもと違い何気なく「少しだけ暖まろう」とガスストーブの前に座り、何も考えず赤々と燃える火を無心でほんの二分ほどながめたのです。

すぐに身体が温まって気持ちよくなって「少しだけ」とストーブの目の前に横になりました。

眠るつもりはなかったのに、知らず、そのまま眠ってしまいました。

後にも先にもストーブの前で横になって寝たのはこの時だけで、してはいけない事とわかっていたのに、油断でした。


 どれくらい時間が経ったのか、気がつくと、寝ている私の胸からスーと抜け出す白い私を見たのです。

下半身は薄れて見えない姿でゆっくり上昇しはじめ「もう逝くんだな」と思いました。

淋しくも悲しくも苦しくも無く、静かな気持ちでした。

ゆっくり二メートルほど上昇したところで目の前に、鏡に映る自分を見るように顔が見えたのです。

その顔はこれまでに見たことのない神々しく輝く美しい顔でした。

「なんて美しいの、私、こんなにきれいだったの」と感動しつつ上昇し六畳間東南角天井の下で止まり、ストーブの前に寝ている自分の姿を見おろしました。

何の未練もなく、次へ行かなくてはと、右を向いた時、故郷の母の顔が浮かびました。

「今逝ったらお母さんに心配かける」と思った瞬間私は寝ている私の体に飛び込んでいました。

その速さといったら、思ったと同時に飛び込んだのです。

あっという間もない瞬間的速さ、バリッ!!と心臓に破れるような大きな痛みが走り目を開きました。

ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッドッドッドッドドド……

心臓が身体をゆさぶるような音を立ててゆっくり動きはじめ、しだいに早くなり心音がなくなりました。

呼吸がしずらくて、のどがカラカラで水を飲もうと起きて立ち上がろうとしたら両足がくにゃくにゃで力が無く立てないのです。

両手で必死にはって三畳間のお台所へ行き、何とか蛇口をひねってコップの水を飲みました。

飲んで一息ついて落ち着いたので無意識に立ち上がったら元の足に戻って歩けるので、ストーブの熱気で暑く感じる六畳間に戻り窓を開け新鮮な空気に入れ替えました。

外の空気は冷たく寒いので閉め窓際の三面鏡をのぞいたら、血の毛の引いた白い顔をしていました。

「もしかして、今、死んでた?」

深く考えると怖くなりそうで時計を見たら午前二時を回っていました。

明日があるので寝なくては、とお布団敷いて寝てしまいました。


翌朝、起きて身支度しながら昨晩の事を思い出し、もしかして死んでた?

通勤電車の中でも、もしかしてと考えました。

もしかして心臓が止まり昇天したとして、でも死んだ時も私は私の心で母を思い戻って来られたけれど、母を思い出さなかったら、あのまま冥途へ進んでストーブの事故死扱いでニュースになっていたのかもしれません。









 

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― 新着の感想 ―
怖いですね。 ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル 一酸化炭素中毒とかでしょうか。 (´・ω・`) 夏も熱中症とかのリスクがあって、年中油断できないですよね。 (。ŏ﹏ŏ)
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