【三視点】カプ厨たちの立ち位置
『カプ厨』というモノをご存じだろうか。
ポケモンの黄色いネズミのような単語だが、決してあんな愛され概念ではない。
正式名称と語源は諸説あれど、カップリングする 厨 房 。超解釈すると、自分の妄想の中で、キャラクター同士を恋愛関係にさせたがる人のこと。
何故前置きにしたのかといえば、そう、この僕はそんなカプ厨だったりする。
そんな痛い奴の僕が、今どうしてもカップリングを成立させたい一組が、教室後方窓際で机をくっ付けて教科書とノートパソコンを見せあっていた。
ちなみに今は授業中。
黒板に教科書の重要な点を書き示して、パソコンには参考資料を提示させた。
僕は冷静に淡々と授業を進めているように見えてるかもしれないが、実は内心は後方の二人に釘付けだったりする。教科書を確認するふりをしたり、ノートパソコンに参考資料を提示したりするフリをして、彼らを視界の隅に常においておけないかを試行錯誤だ。
こんなことなら教室にカメラ設置の提案をシトクベキダッタ。録画したデータとか持ち出したらクビなんだろうな、まぁカメラないからならないけど。
教科書を忘れたとか最高のシチュエーションじゃなかろうか、一つの教科書を見せ合うとか転校生でしかない展開と思い込んでいた。あーダメだキュンキュンする。
年甲斐にもなく、心臓が飛び出しそうな位に動悸が激しい。
彼は学年でもトップクラスの成績優秀者で他の先生からも他生徒からの評判もよく信頼も厚い。
ただ生徒会や部活などはしておらず、幾つかのバイトをしてた。週に1回くらいと社会勉強と称してはいるが、教員はこのまま進学しないのではという声もあり、そういう意味では問題児である。
彼女は学年でも問題行動を起こしていると有名だ。一番なのは、喫煙の噂と複数人との恋愛関係がある……という噂だろう。まぁ、成績は中の下に位置して遅刻欠席する典型的な問題児といえば、そうだろう。
わかっているとは思うが僕は教師だ。
白墨の圧が強いのか、センセイは今日よく同じ色でも違う白墨をよく使っている。力の加減で折れたりするのだ。
どうせ、後ろの二人の様子をどうにか眺めれないかを試していることだろう。私はこっそりため息をついた。まったく40手前の独身が何をテン上げしてるんだろうか。
漫画に出てきそうな丸いぶ厚いレンズの眼鏡の位置を人差し指でもどすと、後方の二人の様子をちらりと見た。
その1人の、幼馴染と眼が合うと、彼女は太陽みたいな笑顔を私にむけてはにかんだ。
うん、尊い。そして可愛い。
彼女は所謂ギャルと呼ばれる人種で、陽キャと呼ばれる属性で、今はただただ恋する乙女だったりする。ちなみに私は全て真逆の人間。
数か月ぶりに学校で話しかけられ、「今日電話して良い?」と小学生の頃のようなお願いをされて思わず了承してしまった。
モジモジとする彼女をその場で急かすと、どうやら好きな人が出来たらしい。
衝撃だった。
モテ属性も持ち合わせる彼女は今まで何度も告白はされた回数はあるが、自分から告白したことがないそうで、どうすればいいか分からないので困っているとのこと。聞けば、とりあえず情報収集と称してとりあえず彼と親しそうな友人たちに片っ端から彼のことを聞き回っているらしい。
その『とりあえず情報収集』はやめておけ、と幼馴染の誼で諭した。
諭されて不思議そうな声が携帯から聞こえてきたときは、天然か?天然物なのか?と聞き返したくなったが、まぁ、昔と変わらずなトコロで少し安心してしまう。
遊び女と噂されている彼女だが、実はそんなことはない。昔から一直線な性格で、コレと決めたらそこに突き進んでいくのだ。ギャル風の見た目も可愛いと推したアイドルがいたらしく、そこに寄せていった結果だ。
振った相手から遊び女と噂を流されようとも気にせずに明るい彼女は、私からすれば眩し過ぎる存在。邪な考えが浮かばなかったと言えば嘘になる。
まぁ、意中の名前を告げられた時は、本当に驚いた。
彼女の気になる彼とはある日、幾つかの好きな作家が一致していて、盛り上がったことがあった。それを誰かから言われて、幼馴染ならと電話をしてきたのだ。
どんな馴れ初めなのか気になったが、何も言わずに惚気話を丁寧に聞いてあげ、「勉強を教えてもらえ」と助言を送る。
勉強が好きではない彼女は戸惑っていた。
いや、学生の身分なら誰でも戸惑うとは思う。けれど、考えてみても欲しい。
級友たちにカタブツと陰口を言われくらい真面目で優等生な彼と仲良くなりたいなら、勉強を教えてと言ったのが、ここでの最適解、有効手じゃなかろうか。
放課後に机同士をくっ付けて教えを乞う。それがギャルとクソ真面目くん、うん、絵面としては良い。そんな助言に眼を輝かせて感謝を言う幼馴染。
うん、まぶしい。
百戦錬磨のアドバイスと言われ彼女の背を押したが、私の情報源は少女漫画だ。
授業中の保健室というのは、結構暇だ。まぁ、何らかの事情で教室に行けいない生徒がいれば避難所と化すのだけれど、今年度はまったく平穏だ。
幾つかの書類の処理をしながら私は、思いを馳せていた。それは先日、恋愛相談を受けたことについてだ。
とある学年の学年首位の男子生徒だ。一応、名前は伏せておこう。
学年首位を維持し続ける優等生と称させる彼だが、相貌失認つまり失顔症だ。と言っても本人は年の割にしっかりしており、持病とも自分の中である程度折り合いもついている。
ただ持病をカミングアウトをしてないので、入学した時から彼の学生生活をサポートしてきた。とある月一の面談(相談やケア・事前予防なのだがほとんどは雑談で終わる)で顔を真っ赤にしながら「好きな人が出来たかもしれない」と言われときは、流石に驚いた。
「よかったね、おめでとう」と祝うと彼は、戸惑う様子でどうすればいいか解らないようだった。
最近、勉強を教えてくれと言ってきた同級生に接してるうちに「何か」の感情を抱くようになったそうだ。元々、病気のせいか自己肯定感が低く、感情が希薄傾向にあったので少し安心した。
とりあえず今まで通りに接してみたらと助言をする。
戸惑いながらも、顔が判らないことに苛立ちながら、必死に普段を取り戻そうとしていた。
実は、彼の想い人からも軽く相談を受けたが、同性に相談しなさいと助言をした。両片想いに内心小躍りしたくなったが、二人ともから相談は、己の業としてフェアじゃない気がした。
「若いねぇ」と呟いて、ゴンドラの唄の歌詞を思い浮かべ、仕事に戻った。




