38.それは、ちょっと危険ではないかね-実は確かめたい事もあるのです-
全52話予定です
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カズの提案、それは分隊化の一環とも取れるものなのだが、
「旧トルコにレイドライバーを三体派兵します。これは今回の旧イエメン戦に出した三体でもあります」
無人機と、マリアーナである。カズは交渉する相手がいない、と判断したのか、それとも交渉するつもりが無いと判断したのか、あるいは無線で何とかなると判断したのか。
「実際、副官を現地に送る必要もないのかな、と考えます。指揮官機にあたるのは確かにまだ新人の域を脱しつつある人材ではありますが、非常に頼りになる相棒がいますので」
ゼロフォーを指揮官に当ててはどうか? と言っているのだ。確かにそれならば勝算は十分にある。
そして、
「ここからが肝心です。農村を挟んで二つ隣街にはグランビア市が広がっています。その先は言わずと知れたジュケーです。アルカテイル市の隣街である農村には武装兵らしき基地はありません。その結果から言うと敵はおそらくグランビア市にある軍事基地に展開しているものと考えられます。そこで」
こちらからちょっかいをかけようというのである。それもある程度情報を漏らした状態でちょっかいをかけようというのだ。
「それは、ちょっと危険ではないかね」
と当然意見が上がるのだが、
「実は確かめたい事もあるのです。それは」
敵の総数である。
確かに同盟連合よりレイドライバーの数は勝っていると推定される。だが相手はほとんどが戦闘経験が無い。ならば、旧トルコに予定通りにレイドライバーを派兵し、それを敢えて漏らしたうえでグランビアに侵攻する。すると、敵は旧トルコ侵攻を諦めるのか、それとも同程度のレイドライバーを割いてくるのか。
「もしも割いてくるのであれば、より具体的な敵の主力の総数が分かります。分かった段階である程度の戦闘は避けられないでしょうが、撤退すれば今後のレイドライバーの増産体制の具合が分かるか、と」
カズは[ガチでやり合うつもりはない]と言っているのだ。それは確かに同盟連合の軍としては知っておきたい情報でもある。
「勝算は?」
当然そう聞かれるが、
「撤退を前提に考えているのでそこそこあるか、と」
そう、これは交戦ではあるものの持続的な戦闘ではない。あくまで小手調べなのだ。
「航空機はどうするね?」
と来るので、
「先ほども申しましたが、私の私感ではありますが、レイドライバーの数は向こうが上と判断します。なので三八FIを連れて行きたく思っています」
実際、アルカテイル基地の近くに敵戦闘機がやって来てスクランブルを、というのは何度か経験がある。それは相手もこちらの戦力を知りたいのであろう。だからちょっかいをかけてくるのだ。
「もう一つ、この作戦には意味があります」
とカズが言うその内容、それはこちらに潜んでいる[モグラ]のあぶり出しである。同盟連合だってバカではない。怪しい人間はそれこそピックアップしている。その人間たちに日時をずらして指定して教え、その中の一つの日程通りに軍を動かしたら?
もしも即応するようであれば、その[モグラ]を一掃してしまえばいい。そしてまたの機会に同じ事を繰り返す。そうする事でこちらの練度も上がれば[モグラ退治]にも繋がる、という寸法だ。もちろん相手の練度も上げてしまうのは副二次的効果なのだが。
「如何でしょう?」
それは実際、具体的な案だともいえる。
事実、
「それで行こうか」
と了承されたのだから。
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