37.なるほど、旧トルコに旧ギリシャですか-これは非常に厄介な問題を孕んでいる-
全52話予定です
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「なるほど、旧トルコに旧ギリシャですか……。たしかにそこを押さえられると大動脈が完成しますね」
カズが言うのも無理はない。
現在は表立って[軍用です]と言って送れない物資が自国の領土になれば関係なく送れる。それこそ核弾頭だって輸送可能なのだ。そして、地中海から帝国領に直接軍事物資を運び入れるには二国のうちどちらかを手に入れる必要が出てくる。
では最初からそこを攻めればよかったのでは? と思うかも知れない。
だが、そこはこの辺りのパワーバランスが関係している。ここは旧NATO(北大西洋条約機構)のおひざ元である。そんな土地に帝国が武力侵攻を表立ってしたらどうなるか。
今でこそ三国に集約されてはいるものの、それ以前というのは各国が対立、または協定を結んでいた時代だ、そんな時代に現在の帝国と呼ばれる国々が攻め入れば、そこにあるのは[核のボタン]という流れになって来る。
これは非常に厄介な問題を孕んでいる。
一たびこのボタンが、ただの一回でも押されれば世界が終わるのだ。それだけは避けなければならない、それくらいの頭はどの国だって回っている。だから[敵国でも物資の往来を認めませんか]という話が出てきたのである。ボタンを押さない代わりにそこを通らせろ、という理論である。
もちろん同盟連合だって共和国だって[ええ、いいですよ、そうしましょう]と最初から言った訳ではない。散々と意見が対立、紛糾してからようやく[じゃあしょうがないから非軍事物資であれば]となったのである。
だから、敵国上を通る輸送物資はあくまでも原材料に限る、となってるのだ。逆を言えば戦車が一両でも通れば協定そのものが白紙に戻る。すると、アフリカ大陸に拠点を築いた帝国は一転して非常に困る、という話になって来るのである。
そこでこの、現在は同盟連合所属になっている二州のうち、どちらかを攻め落とせば? という案が出てくる。そうすれば帝国は地中海まで何の制限もなく武器を送れる。本国で作った武器をそのまま送れるのだ。逆もまた然りである。そして地中海を挟んだ対岸には帝国領がある。そしてその領土はジュケーまで繋がっているのである。つまり、ジュケー製のレイドライバーが大手を振って[大陸の国々]に渡るという話になる。
今現在は武器の製造はジュケーで行われており、本国は本国だけの平和を享受している。つまりは[材料は送るからあとはよろしく]というやつである。ここに本国の生産能力がプラスされれば、レイドライバーの部品だけでも本国に依頼して、なんてのも視野に入って来る。
――それだけは阻止しないとな。
それはカズでなくとも分かる話だ。だから両国には最新鋭の武装がなされているが……ここ最近の近代化武器といえば、レイドライバーであったり最新鋭機であったりするのだが、残念ながらそこまでの近代兵器は置かれていない。もちろん最新鋭機については配備の予定はあるものの、今直ぐではない。では今直ぐに配備されないのであれば、それこそ今のうちに、という案が帝国内から出てもおかしくないのである。
「近々戦闘が行われるとすればここが、第四弾の可能性として考えられるのは一番高いと思われるのだよ」
それは、裏を返せば[レイドライバーを派兵しろ]と言っているようなものである。
――いい加減、ちょっとじれて来たぞ。ここはひとつ、お偉いさん方のやり口に乗ってみようか。
「そこでご提案があるのですが」
カズはそう言って話を始めたのである。
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