36.またあとで話をしよう-これからの話をしないと-
全52話予定です
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カズもゼロゼロが改装を受けている間、何もしていない訳ではない。もちろん千歳との積もる話もあるが、それどころでもないというのが本音なのだ。
たから、
「またあとで話をしよう」
と言って千歳の病室をあとにしたカズは所長室へと向かっていた。
――これからの話をしないと。
その中にはゼロゼロの運用方法も入っているのだが、それよりも、である。
「どうしたね」
と返って来る。そう、相手は同盟連合の意思決定機関だ。
カズは今までの話をかいつまんで話して、ゼロゼロの運用は試験的に行う旨を話したあと、
「それで、今後の展開なのですが」
と続けた。カズが心配しているのは第四弾の所在である。それは帝国が仕掛ける、というのももちろんあるが、同盟連合から仕掛けるのだって可能性としてはあるのだから。
「あぁ、それか。あれからどうも帝国は周囲に置く人間を統制し始めたようでな」
それによると[モグラ]の何人かは左遷されたという話だ。即刻処刑しなかったのは意図があるのか、それとも単なる気まぐれなのか。どちらにせよ情報が取りずらくなっているのは確かなようである。
だが、
「そんな中で、どうも旧トルコか旧ギリシャあたりがきな臭くなりそうだ、という情報は得ている。具体的な期日などは分かっていないがね」
確かにその二州なら可能性はある。どちらもアフリカ大陸へのルートになっているからである。
――――――――
西暦ニ〇四九年、世界情勢は大きく三つの勢力に集約されていた。国土では陸上の約半分を占有する帝国、と呼ばれる勢力と、同じく三五パーセントを占める同盟連合、残りの十五パーセントが共和国である。
そしてこの三国は何処とも協力関係を結んだりしていないし、何処とも停戦、終戦をしてはいない、つまりは世界大戦状態にあるのである。
それでも国境線が引かれた現在では、軍同士がにらみ合ってはいるものの、その最前線では敵兵同士でタバコや酒のやり取りか行われていたり、といった状態が成り立ってい。。だが、この三国を形成し、なおかつ内戦を抑え、一定の国境線が引かれるまでという時間は、各国は持てるリソースを費やしてきたのだ。
さて、いざ三国になったところで今度は国内を立て直す必要が出てきた。
だから三国は、戦争状態は継続しつつも国内の立て直しに全力を傾けたのだ。
そんな中に引かれたのが、現在の三国間の、予定調和になりつつある戦闘状態に一石を投じる弓矢である。
同盟連合の、日本奪還作戦はそれ程に世界中に衝撃を与えたのだ。
どの国も復興道半ば、というところなのだが、内戦が比較的少なかった同盟連合、さらにはその先端技術であるレイドライバーの存在。
当然、どの国も欲しい兵器であろう。その威力はレイリアたち第一世代で既に実証されている。だから帝国も実用化まで何とかこぎつけたのだ。
――――――――
そこで現在の三国の関係、というものが出てくる。それは[対象になっていない交易、輸送の類は互いに阻害しないし、臨検も行わない]というものである。これには帝国の力が大きく関わっていた。帝国は、自分たちの[本国]である大陸を主戦場にしたくなかった。と同時に大陸から兵器の輸送というのをしたくなかったのである。
ではどうするか。
これは、帝国が呼びかけて実現にこぎつけたのだが、要は[非軍事物資であれば敵国の上を通らせろ]という事である。戦時になれば補給線を断つというのは戦略的に非常に重要になってくる。だが、戦闘区域以外では他国の車両、船舶、航空機が[非軍事物資]を持って往来するのを見逃そう、というのである。
この協定のお陰で帝国は自国の大半を占める[本国]の外で戦闘行為を行うことが出来るようになったのだ。そこで目を付けたのがアフリカ大陸、という訳である。
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