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34.マタルという人間は単純ではない-例のタバコがバレているのかも知れない-

全52話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 特に警戒しなければならないのは同盟連合の方だという。それは片方の敵個体に三体とも撃破された、というのだ。そしてその地に潜ませていた[モグラ]が送って来たのが、敵の人型の全景だった。それは同盟連合のもので間違いないという話だ。


「で、だ。我々としてはもちろん二国間で何か協定が結ばれた、という話ではないとは分かってはいるものの、一時的にでも共闘し、あまつさえあっさりと撃破されたのが同盟連合なのが気になっていてね。ならば少し[モグラ]でも、という話になったのだよ」


 ――なるほど、稼業でなんとかしろ、と。でもこれはチャンスじゃあないか?


 二重スパイというやつである。それなら意図的に情報を流す事だって出来る。


 だが、その事実だけを見て喜ぶほどマタルという人間は単純ではない。同時に自分に嫌疑がかけられているとも思っているのだ。


 前述の話ではないが、二国間同士で戦闘が起き、人型にある程度の損害が出たのは事実である。だが、そこで[何故、共和国の人型がそこの場面で襲うのがバレたのか]という話が持ち上がるはずだ。


 当然、内部調査もしているのであろう。もしかしたら例のタバコがバレているのかも知れない。タバコにタバコを被せてきた、それは[事情は知ってますよ]という意志表示では? 疑い始めればキリがない。


 それでもマタルは平静を装った。それには、今吸っているタバコの手助けが無かったとは言いがたいのだが。


 だが、マタルが生業としているのが元々エルミダスに近いというのも事実である。この地は元々同盟連合のものだったのが帝国の領土になり、そこへ電撃的に現れた同盟連合の人型がかの地を取り戻した、といういきさつがある。


 そして近隣の同盟連合の土地で仕事をしていたのが、マタルだ。となれば白羽の矢が立っても不思議ではないのもまた事実。


「まさか護衛でも付ける、とか言わないよな? 流石に動きにくいんだが」


 と次の手を打ってみる。すると、


「もちろん、きみのやり方にケチを付けたりはしないよ。あくまで情報が欲しい、それだけなのだからね」


 主任はそう言うと、火のついたタバコでマタルを指さして少しニヤつく。


 ――これは……自分の正体がバレてるのも視野に入れないとな。


 とマタルに思わせる程には相手の表情というのは雄弁に物語るのである。


「で、具体的にはいつから動けば?」


 の問いに対して、


「明日にでも経ってくれればいい。準備も必要だろう、活動の為の金は渡す。自由に使ってくれ。ただし」


「結果を持ち帰れ、だろ? 分かってる」


 その結果というのはある程度の信ぴょう性がないといけない話だ。そんな話を持って来られるのか、また持って来られたとしてその時が自分の最期になるのではないか、そんな気がしていた。


 ――まぁ、な。それもまた人生さ。


 諦めとも取れるその言動、それは生に執着が無いのか、それとも達観しているのか。もしかしたら楽観視しているのか。


 どちらにせよ、マタルは自分の雇い主に事情を説明しないとな、と思っていたのだ。


 その雇い主は、今はアルカテイル基地にいるはずである。


 ――直接会うのは、なぁ。


 そんな事を考えていた。


全52話予定です


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