29.一番の候補としてはカズの次に階級の高いクリスである-クリス、かぁ。それはなぁ-
全52話予定です
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「さてと、それで一つの懸念は解決したとして、これからの機体運用を見ていきたいと思います」
とカズが続ける。
――それも解決しないといけないんだよなぁ。
このまま[解散]としないのは今後の話があるからである。
ゼロゼロは実質的にパイロットが不在になった。まずの問題としてゼロゼロにパイロットを乗せるのか。
「私としては単独行動でもいいけど」
ゼロゼロだ。
確かに、現在のシステムでも動くことは出来る。それはカズとの間の[子供]が機体内に存在しているからである。ゼロフォーの時と同じく、子宮器官を作ればそれこそ[無人機]の出来上がりである。
――うーん。
カズは直ぐに[うん、そうだね]とは言わなかった。それは考えがあっての事である。
ゼロゼロは隊長機である。それは、サブプロセッサーだけで運用出来るとしても[ヒト]が不在のレイドライバーというのが果たしていいものかどうかという問題がある。
しかしながら、他にパイロットを据えるにしても、一体誰を選出するのかという別の問題が発生する。現在、それぞれのパイロットは、それぞれの機体のサブプロセッサーと随分良くやっている。それをイキナリ引きはがして[今から隊長機に乗れ]と言われてどれだけの人材がそれに耐えうるか。
一番の候補としてはカズの次に階級の高いクリスであるが。
――クリス、かぁ。それはなぁ。
まかりなりにも一度、僚機の被弾で悶えた人間を隊長機に据えるのはちょっと、というところなのだ。隊長機というのは、時に残酷なシチュエーションに遭遇する。それは味方を見捨てる場面や、行動不能になった味方機の自爆を執行するといった要素が入って来る。そんな過酷な任務に、言い方は悪いが味方一人の生き死にで身悶えて、挙句上気してしまうなどは論外なのだ。
ではトリシャか? それはない。何故なら彼女も同様の[そそう]をしてしまっているので不可である。
次に来るのはレイリアであるが、知っての通り、彼女の機体には姉というコアユニットが存在している。それにサブプロセッサーは自我がなくなったとはいえ彼女の弟である。そこから乗り換えろ、というのは流石に酷な話だ。第一、仮に乗り換えたとして、残された機体であるゼロワンの扱いはどうなるのか、という問題が発生する。
これはどのパイロットを連れて来ても起こり得る問題なのだ。パイロットというピースを一つ取れば、取ったところに穴が開く。その穴を埋めるのに別のピースを持ってきて、という無限ループに陥るのだ。
「ですが、所長は既にパイロットとしては……」
そう、レイドライバーは確かに乗り物ではあるものの、乗用車などの単なる移動手段ではない、戦闘機械なのだ。もしもカズが仮に偽パイロットとして乗ったとしても、それはとても大変なのは容易に想像がつく。レイドライバーの急制動や急加速といった、戦闘に必要な動作に対して乗っている人間の身体が追い付いていかないのだから。自分で操るのとは違う、連動の取れていない乗り物に乗っているのと変わりがないのだ。では自身が操縦するか? と聞かれれば、それは不適となる。理由は前述の通り、男性では[独特の間]の解消が行えない、行えていないからである。
では誰が、という思考ループに陥っているからこそハッキリとした答えが出せないでいるのである。
そんな中、
「ゼロゼロはサブプロセッサー単体で運用してみたらどうかな? もしも指揮系統を気にしているなら無線という手もある。それに、無線を使うなら操縦だって可能なハズ。仮に無線が使用できなくなったらその時はゼロゼロの独断で動かせばいい。仮にも敵側との交渉なら無線越しでも出来るでしょ?」
そう言ったのは、千歳だ。
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