24.あたしはこれからどうなるんだろうか-麻酔? 致死毒ではない?-
全52話予定です
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話はほんの数刻戻る。
チトセはストレッチャーで運ばれる感覚に襲われていた。事前に事態を知ろうにもゼロゼロは不在のまま、しばらく[待機]していたのだ。
[待機]それ自体はチトセにとって苦痛ではない。研究の仕方や実験方法などを考えたり、物思いにふける時間に当てればいいだけの話なのだから。その辺りは他の被検体とはちょっと違うといっていい。心が頑丈に出来ている、というべきなのか、柔軟性がある、というべきなのか。
自分が移動している感覚はあったものの、それがどこなのか分からず、挙句四肢の取り付け部位から外されてストレッチャーに乗せられたのだ。
――あたしはこれからどうなるんだろうか。
チトセは今までカズやゼロゼロがしてきた事はほとんど知らない。戦績は流石に知っているが、それ以外の、例えば日本で自分が待機していた時にカズたちに何があったのか、とか、恵美は今どうしているのかとか言った話はまるで知らないのである。ゼロゼロが恵美である事さえ知らないのだ。
確かにサブプロセッサーからのアクションはリンクシステムを通じて伝わって来る。だが、それは漠然としたものであり、ハッキリとしたものに関しては行動の命令だったりというのが主なのだ。
あれから、あの事故からずっとコアユニットのスーツを着ているので、流石にやけどの感覚はもう治り切っている。だが涙腺を切除されていて、瞼は閉じられないように器具が付けられており、眼球に直接モニターが付けられて、寝るときも目を開けたままだ。
耳は、というとカナル型の抜群の密閉性があるイヤホンが、表皮と接触する部分にはコアユニット用のスーツの素材が使われて密閉されている。
唯一ともいえる開口部である口は、閉じられないように器具が取り付けられており、直接管を胃へ通して水分補給や食事をさせているのだ。
そして今はいずれも接続部から取り外されているので、自発呼吸くらいしか出来る事はないし、情報として入って来る五感もすべて遮断されているのである。
そんな状態でストレッチャーに乗せられていずこへか向かっているのだ。
――もしかしたら、処分が決まったのかも知れない。
それはチトセでなくともまずそう考えるだろう。それは、第一世代型が被弾もしていないのにコアユニットを外すというのはまずありえないからだ。コアユニット、それこそが第一世代の最大の秘密だったのだから。
しかし、とも思う。
コアユニットを[廃棄]するのであれば簡単だ、薬剤でも何でも使ってサッサと始末してしまえばいいだけなのだから。そんな手段を取らずに、レイドライバーから取り外されていずこへか連れて行かれている、この状況に違和感を感じたのだ。
――カズが何某かの指示を出したのは間違いない。でもそれがどんな指示なのか。んー、情報が欲しいなぁ。
誰だってそう思うはず。だが、この躰だ、それは贅沢というものである。
しばらくストレッチャーの振動に身を任せていたが、それも終点に着いたのだろう、急に意識が遠のく感覚に見舞われた。
――麻酔? 致死毒ではない?
混乱しているが、それもものの数十秒持ったかどうか。
気が付けば、
「あれっ、あたしは一体……」
と発したその声に違和感を感じていた。
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