18.それで本当に良いんでしょうか?-改めて感謝致しますの、マスター。-
全52話予定です
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「それで本当に良いんでしょうか?」
二人から同時にそんな言葉を聞かされたカズは、
「息もぴったりだ。やっぱりマリアのサブプロセッサーはゼロフォーでなくっちゃならない。しばらくは一緒に組んでもらうよ。でもね、ゼロフォーはそれ以外にもこなさなければならないものがあるんだ」
という言葉で察したのであろう。
「私の持っている技術と経験、ですか?」
ゼロフォーが直ぐに反応する。
「そう、技術と経験。それは非常に重要な要素でもある。もちろん、それを手取り足取り教えたからといって誰しもがみなゼロフォーのように振舞える訳じゃあない。それでもきみが持つ情報を少しでも共有できれば、これは同盟連合にとっては非常に強力な武器になる、そう思うんだよ」
――確かに、ゼロフォーはとても優秀な、わたくしにはもったいないほどの存在ですの。
事実そうなのであろうというのは、改めてカズから説明されなくともマリアーナには分かっている。それについて引け目が無いか? と問われれば、正直自分の機体に乗せておくのがいい事なのかは分からない。
――ですが。
カズがそれを良し、と言っているのだ。そしてカズは何かを考えている。だから[それ以外にもこなさなければならないものがある]と言っているのだ。それは、多分技術指導だったりするのだろう。
「ではゼロフォーは時々お出かけをするんですの?」
あえてそんな質問をしてみる。その答えは、
「そう、とも言えるし、違う、とも言えるかな」
と返って来た。
そして、
「前までは情報の共有に、脳みそに直接書き込むという手法を取っていたんだけど、技術革新があってね。情報は吸い出したら外部装置にためておけるようになったんだ。そして外部装置を参照すれば」
「いつでも情報が取り出せる、と」
珍しくゼロフォーが言葉を続ける。
「そう、だから従来の[アップデート]は廃止だ。その代わり、情報の吸い出しは引き続き行うけどね」
既にその情報はゼロフォーは持っているはずだ。何故なら彼女の搭載されているこの機体は補充されてここまでやって来た機体という話だ。外部装置とやらももう搭載されているのだろう。当然ながらゼロフォーはその存在を知っているはずである。だが、敢えて発言したのはマリアーナを思っての事なのかも知れない。
自分たちは知っているが、マリアーナは知らないはずだからである。
「だけど、ゼロフォーは時々駆り出されたりもする。それは実技指導というやつだよ。例えば戦闘機の訓練とかね」
それなら知っている。事実、日本奪還作戦の際にゼロフォーは一対十二なんていうとんでもない状況をかいくぐったのだから。
「まぁ、でも二人がまたこうやって組める、ってのが一番かな」
カズはそう言って話をまとめる。あとの作業は整備士の領分だ。カズは[じゃあよろしく]と伝えてその場をあとにした。
――改めて感謝致しますの、マスター。
マリアーナはカズの去った方向に目を向けてそう心の中でつぶやいた。
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