17.二人の間の[子供]といったところかな-きみに次も生きて帰ってきて欲しいからさ-
全52話予定です
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「そう、マリアーナとゼロフォーの、いわゆる二人の間の[子供]といったところかな。正確に言えば内臓の一器官だから[子供の部品]と言ったほうが通りがいいか。どう、軽蔑したかな?」
カズはそこまで言うと、反論がないのを確認してから、
「でもね、こんな部品が現在のレイドライバーにはそこらかしこに配置されているんだ。きみとゼロフォーが互いにシームレスに意思疎通を取ったり、二人がレイドライバーの操縦をスムーズに、確実に行えるのはこの[部品]のお陰なんだ。これが今、きみたちが抱えている秘密なんだよ」
とカズは言った。
――何故?
「何故わたくしにそのような重要な秘密を教えてくださいますの?」
当然の疑問と言える。
それに対して、
「それはね、きみに次も生きて帰ってきて欲しいからさ。もっと非人道的な事も行っているのは事実としてある。だから、かな。せめて人であるきみたちパイロットには無事に帰ってきて欲しいんだ。そしてそれはオレたちという人間がかけた呪いでもあるのかも知れない」
カズはそう言って、マリアーナに、
「非人道的な実験の結果がきみたちという存在なんだ。そしてきみたちの人権は既にない。オレたちの言う通りの事をしなければならないのは知っての通りだ。その事については恨んでくれていい……といってもそうは出来ないのも知ってる。だけどね、そんなきみたちだけどみんなオレにとっては大切な仲間なんだ」
この人の言っている言葉のとこまでが真実なのかはマリアーナには分かりかねた。だが、少なくとも彼女はカズに付き従うと既に心に決めている。
だから、
「もちろんですの。わたくしは次も生きて帰ってきます、たとえそれが腕を失っても、脚を失っても、必ず」
それだけは言える。カズの元に帰ってきたい、そう想っている自分がいるのだ。
「そして、それはサブプロセッサーにだって言える話なんだよ、ゼロフォー?」
カズがそう問うと、
「はい、マスター。任務を完遂して帰還する事が第一条件なのは重々承知しております。その節は大変な失態を犯してしまい、申し訳ありませんでした」
機体から声が聞こえる。中に乗っているゼロフォーだ。
そして、
「マリア、貴方にはとても辛い思いをさせてしまった。それをまずは御免なさいと謝らせてください。そして、その上でもしもまたコンビを組んでくれるのであれば、是非ともお願いしたいのですが」
その声は、どこか気持ちの晴れたというべきなのか、やっと言い出せたというべきなのか、いつものゼロフォーの口調と違って聞こえた。彼女にしてみれば旧エストニア戦からずっと引きずっていたのだろう、それが回復したマリアーナ本人を目の前にしてようやく口に出来たのだから。
――そんな風に考えていたんですのね。
マリアーナは少し意外に感じていた。それはゼロフォーという存在をよく理解していなかったというのもある。ゼロフォーは常に冷静でリスクの切り落としが簡単に出来る、マリアーナはそう考えていた。
だからだろう、ゼロフォーから出た[御免なさい]という言葉が意外だったのである。
――ならわたくしがいえる言葉は。
「ゼロフォー、わたくしこそあなたに謝らなければなりませんの。それは助けてばかりいてもらって、肝心のところは抜けていた、そんなわたくしに付き合ってもらったのに……」
とまで出た言葉を、
「それは違います、マリア。あれは私のせいです。全周警戒を怠っていたのはパイロットに責があるのかも知れませんが、それをサポートしなかったのは私の責任なのですから」
と返される。
「でもっ」
と食い下がるが、
「まぁ、二人とも。ゼロフォーはマリアに謝ることが出来たんだ。そしてマリアはそれを気にしていないというのが今の発言から聞いてとれる。そうすれば互いが互いに許し合った、と捉えていいんじゃあないかな」
とカズが割って入る。
事実、そういう話の流れなのだから。
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