16.これが新しい機体ですか?-これ、は?-
全52話予定です
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カズたちが整備ドックに行くと、そこには機体のハッチを開けた状態のレイドライバーがいた。マリアーナがよく見れば若干スリムに見えた、というか野暮ったさが減ってよりヒト型に近づいた感じ、と言えるのかもしれない。
「これが新しい機体ですか?」
――少しスリムに見えるのは気のせいですの?
そうカズに尋ねると、
「そう、きみやきみたちが乗っていた機体のよりは少しは違って見えるでしょ? と言ってもこれもまだまだ途上なんだ。この機体はゼロファイブやゼロシックスと同型機になる。搭乗予定が無かった機体を、急遽実戦配備した、というところかな。だから」
カズはそう言うとコックピットまでマリアーナを連れて来てそれを見せる。
それは大体三十センチ四方の形をしているユニット、と呼んだ方がいいのだろうか。金属製の箱に収められてパイロットシートに取り付けられている。
「これ、は?」
――以前にはこんな箱ありませんでしたの。それにここはコックピットのはず。
当然疑問に思うだろう。そんなものは自分の機体には存在しなかった。少なくとも自分の見える範囲には。それがシートに取り付けられているのだから確かにマリアーナでなくとも驚くというものだ。
「これはね、サブプロセッサーが単独で動くのに必要な器官なんだ。そう、機関じゃあない、器官なんだよ」
と語る。
「えっ、そんな重要なものを」
――わたくしのような一介のパイロットが見てもいいんですの?
それを敢えてカズが見せたのは、何故なのかはマリアーナには分からない。想像しようと考えればいくらでも可能だし、マリアーナにとってプラス思考に振ることも出来れば、マイナス思考に考えるのだって出来る。正直、この情報を持て余していた。
マリアーナのそんな困惑した風を見て取ったのだろう、
「きみが乗らない時は、きみの代わりにこれを乗せてゼロフォーは戦地に赴くんだ。行ってみればパイロットの代わりというべきかな。中身が知りたいかい?」
――知りたい。
ここまで来て[いいえ]という選択肢は、無かった。マリアーナの中にある知的好奇心がそう囁くのである。それがたとえどんな形であったとしても、聞いてみたいと思ってしまったのである。それはカズが[知りたいか?]と尋ねている、というのもある。
マリアーナは少しずつ、着実にカズへと傾倒していっているのだ。もちろんカズはマスターでありその存在は絶対なものだ。実際、マスターの命令があれば、たとえ肉親を殺す事になっても涙を流しながら引き金を引くだろう。
だが、マリアーナには少しの自覚がある。それは他人に対して害をなすような事を、このマスターならしないであろう、というものだ。カズは、スリーツーが自分の肉親だと教えてくれた。ではスリーツーに銃口を向けるシチュエーションはあるのか? と言われれば、多分それはないだろうと予想がつく。たとえそうするにしても、マリアーナには引き金を引かせないはずだ、と思う。
その[思う]はカズへの想いであり、その中には希望的観測が多分に入っているとも自覚してはいるが、それでもカズならそんな真似はしないだろう、そう考えるのである。
そんな心の中の葛藤が見えている訳ではないだろうが、知りたいという眼光は気が付かれたのだろう、
「これはね、子宮なんだ。それもゼロフォー単独のではなく、きみとゼロフォーの遺伝子を使っている」
と聞かされた今も[何て事を]とは思わないのである。
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