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15.ゴメンゴメン-少しだけわたくしにあなたのお時間を分けてくださいまし-

全52話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 意識が戻ったカズにはまだまだやるべき懸案が残っている。倒れる前に待っていた、ゼロフォーとマリアーナの再会である。


「ゴメンゴメン」


 カズはマリアーナが収容されている部屋へと入る。この数日間、マリアーナは目隠しと後ろ手に枷をしたままの生活を余儀なくされていた。それは、研究所が彼女の事を被検体扱いと考えているからである。


 この扱いは決して変わるものではない。彼女の場合はまだパイロットだから幾分いいが、サブプロセッサーに至っては完全に[生きたモノ]扱いなのだ。


 拘束は、今回の場合もやはり解かれなかったし、トイレも付き添いがいて自分の力だけではできず、食事も流動食と、やはり被検体のような扱いをされていたのだ。正確に言えば被検体より若干マシと言ったところか。


「この扱いは仕方ない事なんだ。いくらパイロットとはいえ、研究所からしてみれば被検体に変わりはないからね。まぁ、オレが許可を出せば別なんだろうけど、それはそれで色々な弊害が、ね」


 カズとしてはフォローのつもりだったのだろうが、


「い、いえ、マスターの御心のままに」


 ――あなた様のされる事なら何でも受け入れますの。


 マリアーナはまんざらではないようだ。


 そこにはカズへの想いというものが間違いなく存在する。極端な言い方をすれば[カズになら何をされてもいい]と、そんな風に思っているのである。それは、今までカズとマリアーナが積み上げてきた関係、そのベースにあるものは言うまでもなく[調律]なのである。


 そしてカズはマリアーナの姉妹についても情報を提供した。


 この事が更に関係を強化する結果につながった。もちろん自分だけ特別扱いされている、等とは考えていないが、それでも貴重な情報を教えてくれた、その事実だけは紛れもない。それを教えて貰ったマリアーナはやはりどこかで深い感謝を抱いているのである。


 だが不思議とそこに姉が被検体にされた、という嫌悪感は存在しなかった。まずは姉だけでも生きていて、もしかしたらいずれ話が出来る、それだけで嬉しかったのである。


「この数日、マスターはお仕事でしたの?」


 と聞かれるが、


「うん、ちょっと立て込んでいてね。レイドライバーの運用がこれから変わるかもしれない、という話なんだ。きみには……教えてもいいか、実は」


 そう言うとカズは、簡略化して今までの経緯を話した。そう、自分が機体に正規のパイロットとしては乗れなくなったという話である。他の、千歳が絡んでいる部分は省略した。それは教えなくともいい話であるし、出来れば内密にしたい話でもあるからだ。


「そ、そうでしたの。それは」


 それ以上は言葉が出ない。マリアーナはカズのその言葉にどう返したらいいのかが分からなかったのだ。


[それは大変でしたね]が一番近いのだろうが、限られた情報の中では[どう大変だったか]までは分からない。かといってそれ以上は聞いても教えて貰えないのも理解できる。


 だから、


「では、部隊長は誰になりますの?」


 と聞き方を変えたのだ。その問いに、


「うーん、それも今現在は検討中、かな。時が来たらみんな集めて伝えるよ。それより、ゼロフォーと会うんでしょ?」


 と返されてしまう。それでもカズの話題からは離れることが出来たのだから良しとしないといけない。あのままズルズルと聞いてしまっていては、聞かれた本人も大変だろう。


 なので、


「そうでした、先ずは彼女に会わないと」


 マリアーナはカズに腕を巻き付ける。嫌がられるかと思ったが、そんな節は見当たらない。ちゃんと腕を絡ませてくれた。


 ――少しでいいのです。少しだけわたくしにあなたのお時間を分けてくださいまし。


 もしかしたらマリアーナがカズに抱いている気持ち、人はそれを[恋心]と呼ぶのかも知れない。だが、当のマリアーナにはそれが分からないでいた。


全52話予定です


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