14.折り入ってお話があります-そのメリットは?-
全52話予定です
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カズやその関係者にとって幸いだったのは、カズが倒れた事は知られてしまっていたが、それ以降の話が漏れていないという点である。先々に恵美の躰で千歳が現れた時に動揺は出ると思うが、それよりも先ずはその前に上との許可を取りつけなれればならないのだ。
起き上がれるようになったカズは早速、アルカテイル基地に連絡をして司令に繋いでもらって、開口一番、
「ゼロゼロの機体をこちらに送ってもらえませんか?」
とだけ伝えた。もちろん[何故?]と尋ねられたが、
「すみません、今はまだお話しできない内容なのです」
と謝った。これが普通の将校なら[何を上官に対して]と言っているところだろう。だが、アルカテイル基地司令とカズは長い付き合いだし、互いに信頼しているといっていい。
「あとで、すべてが終わったあとで話してくれるかな?」
そう言われた時は、
「もちろんです。すべてお話します」
と返したものだ。
次に、ゼロゼロの機体を待っている間に所長室で[向こう側]との回線を開いた。この回線はいわゆるホットラインである。そこには常時、最低でも意思決定できるだけの人数がいて、同盟連合という国を動かしているのだ。
「そちらから連絡とは、レイドライバーの増産は現在進行しているが、何か問題でも?」
と返って来たので、
「折り入ってお話があります」
カズはそう切り出して今までの経緯を説明した。自分はこれ以上ゼロゼロに乗るべきでない事も。当然だがそこでコアユニットの廃棄、という選択肢が出てくる。
そこで、
「当面は襟坂博士として働いてもらい、クスリで抑えられなくなったあとはサブプロセッサーになってもらうというのはどうでしょうか?」
と問うたのだ。
今までの同盟連合であれば[何を一介の中佐風情が]と言われそうだが、今は違う。カズは文字通り無くてはならない存在になっている。そのカズをして[どうだろうか]と言っているのだ。それは簡単に[ダメです]とはならないのである。
現に、
「そのメリットは?」
と返してくるので、
「研究の継続です。それに、ご存じの通り、このコアユニットの元になっている人物は、先代の所長であり、優れた研究者であります。何より私の半身ともいえる存在でもあります。裏切りや情報流出は皆無といっていい、それは私が保証します。そしてアイザックさんと一緒になって、私が留守中の陣頭指揮に当たってもらえれば、研究もまだまだ前に進める余地が残されているか、と」
と言って返す。
向こうの声は少しミュートになったが、直ぐに、
「きみがそこまで言うんだ、問題はなかろうよ。それに第一世代はもう既にほとんどが改修を受けている。そこで今更コアユニットの廃棄を唱えてみても不毛なだけだ。それなら形上だけでも[人間の研究者]が増えるのは、それも勝手の分かる優秀な研究者が増えるのは好ましい事だ。その線でやりたまえ。その後のきみが乗っていた機体運用もそちらに一任するよ。ただし、分かっていると思うが、同盟連合にとって最善を尽くしてくれたまえよ」
それはあっさりと許可が降りたのである。
「ありがとうございます、と感謝を。これからも邁進してまいります」
そう付け加えて、話は終了した。
と同時にアイザックと恵美を所長室に入れる。
「どうなりましたか?」
と尋ねられたので、
「助けられましたよ。これが今までの私だったら相手を納得させられたかどうか。でも今は、今はそれだけの発言権が出来た、という事になるのでしょうね」
と答えたその言葉に、
「私たちはいつでも貴方たちを支えていきますよ」
そう返されたのである。
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