10.[ここは?]-オレはこのまま……-
全52話予定です
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[ここは?]
カズは夢を見ていた。
帝国も、同盟連合も、共和国さえもない時代。自分はまだ学生の身である。夢というのは個人差があるが、大抵はそれか[夢]と感じないものである。もちろん覚めた時も覚えていなかったりもする、それほど淡いものなのだ。
自分はいつものように遅刻寸前で走っている、そんなシチュエーションだ。
――これは毎回思うけど慣れないよなぁ。
走りながらカズはそう思う。慣れないと彼がこぼすのは、目的地に着いてからの言い訳である。
[電車に乗り遅れました]は流石に学校から近いから使えないし[道端で困っている人がいたので]というのもちょっと嘘が丸見えである。ならばいっそ[寝過ごしました]と言えるのか、といえばそんな度胸があれば毎回苦労はしないのである。
そうこうしているうちに校舎の中へと滑り込む。階段を上り、目的の部屋まで行くと、そこには、
「遅いぞっ」
千歳が仁王立ちで廊下で待っていた。それに恵美も、吉岡、岩田や下山までいる。
「何だよー、間に合わなかったのかぁ」
そうこぼすカズに、
「なぁ、カズよ。千歳はこうやって毎朝学校に来ているのに何でお前はいつも遅刻ばかりなんだ?」
――岩田はいつも理性的だよなぁ。まぁ、そんな事を言えば遅刻する方が悪いんだけれどもね。
そんな事を考えながら、
「なんで起こしてくれなかったんだよー、チトセ……」
――ん? チトセ?
ふと我に返る。チトセという存在は、今はレイドライバーのコアユニットとしてそこにあるものだ。コアユニット用のスーツを着せられ、皮膚はすべて除去され、四肢の自由すらなくただそこにある存在。
オレは一体どうしてしまったんだ? そんな自問が頭をよぎる。そうだ、岩田は確か死んだはず、それに下山だって脚を失ったと聞く。誰に聞いたんだ? ……そう、吉岡だ。確かにあの時吉岡に電話して、事の次第を聞いて、それは残念だと話をして。
――じゃあ一体ここはどこだ?
カズがそう考えると、途端に周りの風景が消える。今まで笑っていた友人たち、それに千歳の姿もここにはない。今ここにあるのは、累々と横たわっている死人たちだ。その死人が自分の足を、手をつかんで離さないのである。
何でこんな事に。
そう思ってはみるものの、依然として状況は変わらない。
助けてくれ。
ついにそう思うようになるが、それでも助けは来ない。その代わり[お前は一体何人の命をその手に掛けたんだ?]という声が響く。耳を塞ごうにも手足を掴まれているので身動きが取れない。血の臭いがする。それも出血してしばらく経ったような感じだ。
――何故それを知っている? そんなに嗅ぎ慣れた臭いなのか?
自問は続くが肝心の自答が出てこない。千歳、襟坂さん、吉岡、岩田、下山と声にするが誰も返事をしない。
オレはこのまま……。
そこで目が覚めた。
全52話予定です




