第82話 浮気じゃないよ
商会のある場所まで戻ると、人だかりがあった。
めっちゃ人がいる……なんかあったのか?
もしかして、恐団とやらが暴れてるのかもしれない。
急ごう。アリアスとローレシアが心配だ。
「ちょっと! そのシャンプーっていう商品、わたくしにも売ってくださいまし!」
「わたくしはシャンプーリンスセットを百個買うわ! わたくしはエウロランド王国の貴族でしてよ!」
「この食材を店の食材として、定期的に入荷したいんじゃがどうかのう」
これは……もしかしてバザールの客なのか……?
それにしては、一箇所に大勢の人間が集まりすぎてるような……。
「ダーリン! ちょうどいいところに来たわね!」
「旦那様! 今大変なことになってるんです!」
「大変なこと?」
嫌な予感が当たったのか。
やはり恐団とかいうのが襲って来たのか。
「もうお客さんがいっぱいで大変なんだから! 捌ききれないわよ!」
「注文の桁数もおかしいですよぉ……。貴族の方や有名店の店主が大量注文していきますし」
「……ん?」
どうやら勘違いだったらしい。
ということは、この群衆は俺たちの客ということか。
「まさかこんなに人気が出るとは思わなかったな。予想以上だよ」
「呑気なこと言ってないで手伝って! 人手が足りないんだから!」
「商会の方たちだけでは回せなくて、私たちまで駆り出されちゃいました!」
おおう、まさかそんな事態になっているとは。
嬉しい悲鳴とでも言うべきか。前世の知識で作った商品が、こんなに反響を呼ぶとは。
「ほらダーリン、早く早く」
アリアスに手を引かれて、俺は商会の前へと進んでいく。
◆
「大変だったな……。こんなに働いたのは久しぶりだよ」
「もう疲れたわ……。早くお風呂に入って寝たいわ」
「私はお腹がぺこぺこです〜……」
二人ともかなり疲労が溜まってるみたいだ。
俺もそうだが、二人は客商売とかやったことないだろうし、大変だったろうな。
「よし! じゃあ俺が何か美味しいものを買ってくるよ。二人は先に風呂に入っててくれ」
俺は重い腰を上げて、外に出ようとした。
はて、何か忘れているような。
「あ! セラ!」
思い出した。先程まで店の手伝いをやらされて、すっかり忘れていた。
バザールが好調なのはいいことだが、それよりも重要なことがあったんだった。
「ダーリン? 今他の女の名前を呼ばなかった? 聞き間違いかしら、ねぇローレシア」
「おかしいですね。私たちがお店で忙しい思いをしてた時、旦那様はどこに行ってたのでしょうか」
「いや違うくて。そんな変な店に行ってたとかじゃないから」
「誰もそんなこと言ってないけど? 言い訳するあたり怪しいわね。語るに落ちたってやつかしら」
「図星なんですか? 浮気ですか。どんなんですか旦那様?」
ややこしい事態になったな。
女絡みの話なのが更にややこしい。
説明するのも大変そうだ。どこから説明したものか……。
とりあえず、美味しいご飯をいっぱい買ってきて、二人の機嫌をなおしてもらうことにしよう。




