第58話 元暗黒騎士はリヴァイアサンを狙う
「祠の封印が解けた……」
どうしてかは分からないが、どうやら俺の魔力が吸われたことで、祠の封印が解けてしまったらしい。
これは俺のせいじゃない。そう言いたいところだが、言い訳をするより前に、異変は起きたのだった。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
洞窟の外から、激しい轟音が聞こえてきた。
「外で何か起きたみたいだわ!」
「洞窟の中は危険です! 逃げましょう!」
「崩落しそう。早くここから出よう、村長さま」
「只事じゃなさそうだ。みんな、俺につかまれ!」
三人を抱えて、俺は猛ダッシュで洞窟から抜け出した。
俺達が出るのと同時、洞窟は跡形もなく崩れてしまった。
「もう少し逃げ出すのが遅れてたら、生き埋めだったな……」
「ダーリン、今物凄く早かったけれど、咄嗟に変なとこ触ってなかった?」
「わ、私もお尻の辺りを触られてたような気がするのですが……」
「胸、揉まれた。村長さま、どさくさに紛れて変態さん?」
「言ってる場合か! みんなが危険な時に、そんなことしてる暇はない!」
なんか、最近女性陣から俺に対する評価がスケベという物に変わっている気がする。
誠に遺憾である。俺はラッキースケベは好きだが、自分からやる勇気などない。
俺はもっと、二人きりの時に雰囲気を重視してだな……。
「あ……旦那様、あれを見てください! 山の方角です!」
「山? 山に何が……え?」
ローレシアが指差す方には、巨大な山がある。
いや、正確にはあった。なぜならそこは、山ではなくなっていたのだ。
「隕石でも落ちたのか……? 山が抉れているぞ……」
「それだけじゃないわよ、ダーリン! あの山のところに、巨大な魔力を感じるわ! 魔王なんか比じゃないくらい、とてつもない魔力の塊よ!」
「見ただけで分かるの。あれは間違いなく、ドラゴンの類なの。魔力の巨大さが目に見えて違う……まるで自然災害のような、荒れ狂った魔力なの」
やはりフェリスは魔力を目で見ることが出来るらしい。
俺達は第六感とでも言うのか、何となく魔力を肌で感じ取るのが普通だ。
魔力を目で見るというのは、かなりのレア能力だろう。
「フェリス、グランド・ヴァイス・ドラゴンと比べて、やばそうか?」
「比べものにならないよ。単純な魔力量なら、十倍は超えてるの……災害級、Sランクを超えてるの」
「つまり、よっぽどやばいドラゴンの眠りを覚ましてしまったみたいだな……」
もう一度言うが、これは俺、悪くないんじゃないか?
祠に触れただけで、封印が解かれるなんて、罠じゃん。
罠に嵌められた俺を、加害者と言えるのだろうか。
いや、言い訳はよそう。今は状況確認が大事だ。
「三人は村に帰って、みんなに知らせてほしい。あと、飛空挺で出ている村民には、念和魔法で連絡をしておいて欲しい」
「念和魔法なら、私が使えるわ。とりあえず、村人全員に家から出ないでって通信は送っておいたから」
「助かるよアリアス。予期せぬ事態が起きた時は、慌てず騒がず動かないのが鉄則だからな。まずは、俺が調査に行ってくる」
この異変を起こした一端を担っているのは俺だ。
ならせめて、村長として最初に現場の確認に行くべきだろう。
「私達も行きます! 旦那様だけ、危険な目にあわせるわけにはいきません!」
「危なそうだったら、すぐ帰ってくるさ。ちょっと見てくるだけだ。やばそうだったら家に帰るよ」
「それ、大雨で森の様子が心配な老エルフが、そのまま事故で死んじゃうパターンに似てるわよ……」
奇遇だな。俺も自分で言ってて、台風の時に畑の様子を見に行く人の気分って、こんな感じなのかなって思った。
つまり、この状況はとてつもないフラグになっているのだ。
「祠を壊した罰当たりは、大体死ぬパターンが多いが、もしかして俺もその定石にはまっちまったかな」
今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
一刻も早く、山の方を観に行かないと。
◆◆◆
山の頂上まで登って、そこから見た景色は非現実的な光景だった。
山が抉れていた。
そして、湖が生まれていたのだ。
それだけじゃない。湖の中央には、巨大なドラゴンが佇んでいる。
細長い水色のドラゴン、前世の知識で見たリヴァイアサンそっくりだ。
どことなく、極東の雰囲気を感じるので、水龍リヴァイアサンとでも名付けよう。
「……………………」
祠の封印が解けて、山にクレーターが出来た。
そしてそこに湖が出来て、水龍リヴァイアサンがいる。
これは偶然とは思えない。
間違いなく、祠が壊れた影響だろう。
「あれが封印されていたドラゴン……水の災害を司る龍ってところか?」
地形を変えて、辺り一面を水に変えるドラゴンだ。
フェリスの言うように、単純な魔力量なら魔王を越える力があるのだろう。
だが俺は、水龍リヴァイアサンのことよりも、この湖の方が気になっていた。
「この湖、水路を繋げて村の近くまで川を引いたら、村のインフラに使えそうじゃないか? あわよくば塩も、手に入るかもしれないじゃないか! これは利用価値がありそうだな!」
今日のところは様子見だが、次の目標が決まった。
村のインフラのため、そして塩のために。
あの水龍リヴァイアサンを狩る。
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