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第57話 祠を壊しただけなのに

「どうだ、ローレシア。この祠に、何か感じることはないか」


「そうですね……とても強い魔力を感じます。大きな、禍々しい魔力が……」


「どういうことなの? この祭壇、祠? 何かの儀式に使う物ってこと?」


「俺が知ってる祠は、神を奉ってる物だと思うけど、あまり詳しくないんだよな」


 前世で祠ブームという、ネットミームが流行った記憶がある。

 こういう、得体の知れない祠がある場合、大抵よくない物を封印している話が多かった。

 つまり、この祠は神を奉る宗教的な物か、反対に危険な何かを封印している物だろう。


 そして極東風、昔の日本風の装飾。

 間違いなく、これはホラー作品に出てくる祠だろう。


「その祠から、何か魔法とか漏れ出てないか?」


「それは大丈夫みたいです。祠の中に魔力が封じ込められてるみたいですが、祠の外には漏れ出ていません」


「つまり、封印として完璧に機能しているというわけか」


 よくない魔力を封印している祠。

 これは十中八九、壊したら碌でもない事が起きるパターンだな。

 こういう時、壊した人間は呪われて死ぬっていうのが、ホラーだと鉄板だが……。


「よくないものなら、放っておいた方がいいよ。お宝じゃなくて残念。仕方ないの」


「そうね。せっかく珍しい物を見つけたけれど、怪しい雰囲気しかしないわ。ダーリン、この祠には触れないでおきましょう」


「私も賛成です。危険な予感がします。これを壊したら、とてつもないことが起きる予感が……」


 三人がそう言うなら、俺は従おう。

 別に自分から危険に飛び込むような、スリル求める性格じゃないからな。

 触らぬ神に祟りなしってやつだ。


「一応、どんな物か確認だけしておくか」


 祠の見た目とか、確認しておこう。

 もしかしたら、何か情報があるかもしれないからな。


「なんか彫ってあるな……これは、ドラゴンか?」


「ドラゴンを奉ってるのかしら」


「それか、ドラゴンを封印しているのかもしれません」


「なんだよ、ドラゴンか。それなら大したことないんじゃないか?」


「そうは言っても、ドラゴンは危険な魔物。村長さまが以前倒したグランド・ヴァイス・ドラゴンだって、Sランクの超危険魔物なの」


「普通のドラゴンでもAランク上位、ワイバーンでさえBランクの危険種です。無闇に触るのは危険だと思いますいよ?」


「それもそうだな。俺一人が対処出来ても、みんなを危険に巻き込むことになるからな。この祠はこのまま、洞窟に放置しておこう」


「それがいいわ。村のみんなにも、ここには近づかないように知らせておきましょう」


「うん。獣人は血気盛んな種族。ドラゴン相手に挑む馬鹿も、いるかもしれないの。うちの兄貴みたいに」


 フェリスの兄貴というと、元レジスタンスのリーダー、片翼のダンのことだ。

 あの冷静沈着な男が、ドラゴンに挑むなんて無茶をするようなタイプには見えないが……。


「昔は地元じゃ負け知らずで、調子に乗ってた。一人でワイバーンを狩って、ドラゴン狩りって自慢げに言ってたの。それで死の大地に来た時、グランド・ヴァイス・ドラゴンに単身で挑んで……」


「もしかして、あいつの翼が片方しかないのって……」


「そう。グランド・ヴァイス・ドラゴンに返り討ちにあった。それからは反省して、多少は頭を使うようになったけど……馬鹿兄貴は馬鹿なの」


 なるほど、そんな過去があったのか。

 しかし、俺でさえアリアスとの協力プレイで倒したドラゴンに、よくもまあ一人で挑んだものだ。

 普通、あれだけデカいドラゴンを見たら、まずは対策を練ろうとするものだと思うが……。


 昔のダンは、それほどやんちゃしてたのだろうか。


「だから、頭を使う戦士は好き。兄貴と違って、強いから。村長さまのことも、好きだよ」


「そりゃどうも。でも生憎、俺はそんなに頭はよくないからな」


 割とノリと勢いで行動する自覚はある。

 もちろん、自分の実力を把握した上での行動を取っているつもりだが。

 それでも、周りから見たらかなり破天荒に思われていることだろう。


「そうやって、自分を過大評価も過小評価もしないところ。真の強者の証拠だ。私は強い雄が好き。村長さまは強い雄。つまりそういうこと」


「な〜んか変な雰囲気になってないかしら、ダーリン」


「俺もそう思う。一体、どういう状況なんだよこれは」


「フェリスさんは表情に出づらいから、何を考えてるのか不思議ですね……」


 果たしてこれは、言葉通りに受け取っていいものだろうか。

 それとも、獣人流の強者への礼儀的なものなのか?

 強い雄に従う習性があるとか? よく分からんな。


「聖女様の話を聞いてると、この祠の中には、きっと凄い強いドラゴンが封印されてるんだろうね。でも、村長さまならそんなドラゴンでさえ倒せちゃう。違う?」


「それは、戦ってみるまでは分からないさ。ドラゴンといっても、個体によって特性が違うからな。封印されてるってことは、余程の能力があるに違いない。そんな状況で勝てると断言するほど、俺は自信過剰じゃない」


「なるほど、それもそう。確かにそれは言えてるね」


 どうやら、フェリスは俺の強いところを見たいらしい。

 獣人の性がそうさせるのか、それともフェリス個人の興味本位なのか。

 どっちにしろ、そんなことのために、わざわざ危険そうな祠に触れることはしないけど。


「村長さまの強さをこの目で見たかったけど、残念。今回は諦めて、また別の機会を探ろう。しゅん……」


「そういえばフェリスは、俺が戦ってるところを見た事が無いのか?」


「うん。グランド・ヴァイス・ドラゴンの時は既に倒されてた。ユグドラ王都の戦いは、飛空挺でレジスタンスの応援に行ってたの。四天王と戦ったっていうのも、後から聞いた話。魔王と戦って、一方的に倒したなんて、私も見てみたかったの」


「そんな大物と戦う機会なんて、今後訪れないと思うけどな。残念だけど諦めてくれ。これからは村作りを本格的にやっていくんだ。戦う暇なんて、たぶん無いだろう」


 正直、戦闘が無いなら無いで体が鈍ってしまう。

 たまに魔物を狩る程度はやっておかないと、実践経験を忘れてしまいそうだ。

 その時はフェリスも連れて行こうか。そうすれば、俺が戦っているところを見れるだろう。


 もっとも、魔物相手に戦う姿で満足してくれるかは、甚だ疑問だけど。


「じゃあ、祠を元の場所に戻して帰りましょう。なんだかここ、嫌な空気が漂ってるんです……」


「嫌な空気? ローレシア、詳しく教えてくれ」


「ええと、どう言えばいいんでしょうか? 魔王の時に感じた空気と似ているような……魔族特有の魔力でしょうか。いえ、それとも少し違いますね……」


「もしかして、魔族とか魔王の案件だったりするのか? この祠」


「でも、魔王の神話の中にドラゴンなんて出て来なかったわよ。魔王軍と亜人連合の戦いの話だったもの。ドラゴンなんて、それよりももっと前、エルフの長老も生まれてない頃の伝説とかじゃないと出てこないわよ」


 ん?


「アリアス、その伝説とやらを詳しく教えて」


「え? そんなこと言われても、私も詳しくないわ。はるか昔、太古の時代にドラゴンは神聖視されてた時代があって、竜神が治める国があったとか、知恵あるドラゴンがいたとか、そんな御伽話よ」


「へぇ、そんな時代があったんだな。知恵あるドラゴンか。そんなヤツがいたら、あの食肉用ドラゴンと違って、少しは歯応えのある戦いが出来たのかもな」


「死の大地の支配者、グランド・ヴァイス・ドラゴンを食糧扱い。流石村長さま、黒の剣なだけはあるの」


 それは褒め言葉なのだろうか。

 イマイチ黒の剣って異名が、褒め言葉なのか実感出来ない。

 亜人達に尊敬されてるのは、確かなんだろうけど……。


 まぁ、今の俺は黒の剣じゃなくて、一介の村長だ。

 そんな古い肩書なんて捨てて、村の運営に精を出すのが今の人生なのだ。


「じゃあ、祠を元の場所に置いて……ん?」


 ゴト、と嫌な音が聞こえた気がした。

 気のせいだったのかもしれない。

 だが、不思議と嫌な予感がする。


「どうしたの、ダーリン」


「いや、祠を元の場所に置いたんだけど、なんか変な音がしたんだ……なんだ?」


「あ、あの〜……旦那様? 祠の戸が開いてませんか……?」


「護符みたいなものが、破れてるように見えるんだけど……ダーリン、何かした?」


「いや、俺は何もしてない……はず。観音開きの戸にも、触れてすらいないぞ」


 少なくとも、祠の底を持ち上げて、元の場所にゆっくり置いたはずだ。

 その間、俺は別の箇所に触ったりなどしていない。

 戸に護符が貼ってあったのも、今気付いたくらいだ。


 その護符が、真っ二つに破れている。

 そして、観音開きが綺麗に開いていた。


「私、見たの。村長さまの魔力が、その祠に吸われていくのを」


「フェリスは魔力の流れが見えるのか? もしかしてダンと同じ、魔力を見通す目を持ってるのか!」


「だいたいそんな感じ。村長さまは何もしてないの。何かしてたのは、祠の方。そいつが村長さまの魔力を吸って、一人でに戸が開いた」


 つまり、要するに俺の魔力のせいで封印が解けた。

 そういうことだな?


 なるほど、これはまた分かりやすい。

 俺また何かやっちゃったみたいです。

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