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デッドエンドラブコール  作者: 最灯七日
9/13

第9話 ふたりぼっちの真夜中大作戦

【前回のあらすじ】

オレの魂の価値はA5ランクの牛肉レベルだったようです

 夜十一時四十分。栗瀬くりせ高校の近くに二つの影。

 今夜はとてもとても明るい満月で、外灯の光と合わせれば互いの姿は割とくっきりと確認できるほどの明るさだった。

「いやー、まさか協力してくれるなんて夢にも思わなかったよ。何だかんだでミツグ君優しーい」

「うるせえよ! こっちだってお前の話が本当だなんて思わなかったんだからな」

 あれからユラコは病院に運ばれたままで意識は戻ったという報告は聞いていない。

 医師は原因が分からず困惑し、駆けつけたユラコの家族は青ざめていた。キリオが状況を必死で説明していたが、紫色の謎の物体に襲われたと言ったところで誰も信じるはずがなく、途方に暮れていた。

「悪霊獣がユラコさんの魂を消化するまで大体半日から一日とすると、ケリをつけるなら今夜中だね。プレッシャーだねえ」

「逆に言えば今夜そいつをどうにかすればユラコは助かるんだよな? ならやるしかないだろ」

 完全に他人事のように言うゼンゼンマンに、ミツグはぶっきらぼうな口調で返す。

「で、具体的にどうするんだよ。てかなんで学校なんだよ」

「そりゃキミがよく知っている建物の構造の方がいいと思ったからさ。この作戦はキミの頑張りにかかっているからね」

「何やらす気なんだよ?」

「ざっくり概要だけ言うとキミは悪霊獣に捕まらない程度に奴を引きつけて北棟の屋上まで誘導するのをやってもらう。屋上までたどり着けばワタシが仕掛けた対悪霊獣殲滅兵器が作動する」

「ちょっと待った!!」

 ミツグが大声を上げた。

「……ミツグ君、夜中なんだから大声出したら近所迷惑、っていうか見つかったら面倒なことになるんだけど」

「ぐっ……! じゃなくて、なんでオレそんな命がけな役割なんだよ。てっきりオレが化け物呼び出してお前がビームでとどめ刺して終わりじゃないのか? てかそういう作戦だと思ってたんだけど!?」

「それで済むなら苦労しないし、ワタシ一人でどうにかなるよ……」

 ゼンゼンマンの仮面に「YARE YARE」と表示される。本気で呆れているようだった。

「キミも悪霊獣を一瞬程度は見ただろ。あんな実体が不定型すぎる相手にビーム撃ったところで効かないよ。だからそのための兵器が必要なんだよ。ワタシはそれを屋上に仕掛けなきゃいけない。そしてキミは悪霊獣をそこへ誘導する。これ以上ない適材適所だよ」

「けどどう考えても、しくじったらオレが死ぬだろ!?」

「そりゃそうでしょ。あ、だからといってヤケを起こして悪霊獣とまともにやり合おうと思わないでよね。生身の人間がアレに勝つのは難しいってのはドロドロのドクロが出てきたゲームで分かったでしょ?」

 ミツグ自身にはその記憶は残っていないが、ゼンゼンマンに見せられた映像では企画倒れの大惨事になったゲームである。やり合う気すら起きない。

「詐欺じゃねえかこんなの」

「でもやらなかったらユラコさんは死ぬ。それにこのままキミが逃げたら犠牲者は増え続けるよ」

 それを言われるとミツグには反論する事が出来なくなる。

「……というか、デスゲームやってたあの謎の世界でやれば失敗してもオレが死ぬ事はないんじゃないか? ループさせれば元に戻るんだし」

「うん、賢いようでアホな意見だね。あの世界は『イフ空間』と呼ばれる仮想世界の一種でね、結局どこまで行っても仮想空間だから悪霊獣倒しても空間解除したら生き返っちゃって意味がないんだよ。結局現実で勝つ必要がある。だけど」

 ゼンゼンマンは自分を見上げているミツグにずいっと顔を近づける。

「一回だけ」

「は?」

「どれだけ負けても最後の一回だけ勝てばいいんだよ。勝つべき戦いにさえ勝てればそれ以外はどうでもいいんだ」




 日付が変わる十分前。ミツグとゼンゼンマンは校門の前まで移動した。当然のように校門は閉まったままである。

「まずは学校のセキュリティ、あと宿直とか人が残ってたら面倒なのでそれらをまるごとイフ空間へ避難させるよ。監視カメラとか警報装置とかに動かれるとワレワレが困るし」

 ゼンゼンマンがえいっとかけ声を一つ入れる。

「よーし、これで侵入しても大丈夫」

 見た感じ、学校の景色に変化はないようだったが、ゼンゼンマンの言うとおりなら本当の意味で無人の学校というわけである。

 次に、ゼンゼンマンはどこから取り出したのか運動靴をミツグに手渡した。

「サイズは合ってると思うからそれに履き替えて。作戦中はその靴でやってもらう」

「これは?」

「ゼンゼンマン特製の死神戦士・スーパーウルトラアルティメットソニックシューズさ。これを履くとアスリート並みのフィジカルを発揮する事が出来る。キミの生存率を大幅に上げる必須アイテムだ」

 翌日筋肉痛になるけど、とゼンゼンマンが小声でつぶやいた気がするが、ミツグは聞かなかった事にした。

「それからこの手袋。利き手に装着して。これもゼンゼンマン特製の」

「名前がダサい予感しかしないから説明だけしろ」

「……つれないなー。その手袋は触れただけでありとあらゆる鍵を強制解錠する事が出来る代物さ。校内を自由自在に逃げるためのマストアイテムさ」

 どこぞの秘密道具みたいでうさんくさいと思いつつも、ミツグは渋々と渡された装備を身につける。

「で、ここから作戦の話だからしっかり聞いてよね。ワタシはこれから屋上に対悪霊獣兵器を設置しにいくけど、作業完了まで十分かかる。なのでキミは悪霊獣を十分間捕まらないように逃げつつ、また相手に逃げられないように十分間引きつけなければならない。悪霊獣は実体化している内にどんどん力が弱まっていくからね。その弱ったところをワタシが兵器でどーんととどめを刺せばミッション完了さ」

「……十分間逃げ続けろって今初めて言ったぞ……」

「あっれー? そうだっけ。うん、じゃあ十分間逃げてから屋上に来てね。あ、一応時間分かるようにタイマーも渡しとくよ」

 あまりの雑な作戦内容に不安しかない。

 とにもかくにもミツグのやる事は十分間走り続けるだけというシンプルなものだが、捕まって喰われたらアウトという危険なものである。

 しかも自分は全てのゲームで死んだ、死に愛されやすい魂の持ち主らしい。このパターンに沿うと確実に死ぬし、作戦は失敗する。

「ちょっとちょっとミツグ君、そんなガチガチな青い顔されると成功するものも成功しなくなっちゃうでしょ! キミが死なないために特製アイテム色々出してるんだからさ! こういう時漫画の主人公は使命感に燃えて「よっしゃー! やってやるぜ!」ってなるじゃない!?」

 ゼンゼンマンの仮面に「Relax」と表示される。人を茶化すようなそのノリにミツグは深いため息をついた。

「そもそもこいつは漫画じゃねえ」

「うん、漫画じゃなくて小説だったね」

「メタくさいのはやめろ」

 ミツグの暗い表情が変わらないのを見て、ゼンゼンマンは「あ、そっか。不安を和らげればいいんだ」と言い出したので、ミツグは慌てて止めた。

「お前が何かやろうとすると逆にロクな事にならなさそうだからやめろ」

「えー、お前じゃなくてそろそろゼンゼンマンって名前で呼んでほしいなー。ワレワレは作戦を共にする仲間だよ?」

 仮面に「Weare buddy」と文字が出るが、ミツグは多分buddyの意味は分かってない。

「うっせえわ、ゼンゼンゼンマンが」

「そんなぶきっちょな笑い方をめがけてやってくるような物じゃないんだけどなー、ワタシの名は」

 ま、言い返す元気が出たならいいか。と付け足すゼンゼンマンに、ミツグはもう何も突っ込まない事にした。どうあがいても結局こいつのペースに乗ってしまう。

「じゃ、校門開けたら最後にこの首輪付けて」

 今度は白い金属のような物で出来た首輪を渡される。デスゲームでも似たようなものをはめられた事を考えると嫌な気分だが、従うしか選択肢は無さそうだった。

「終わったら、手袋を付けてない方の手で首輪に付いてるスイッチを押して」

 スイッチなんかあったか? と思いながら手探ると指が大きな突起にぶつかった。どうやら首に装着すると現れるスイッチなのらしい。

 言われるままにそれを押すと、妙に身体が熱くなっていくのを感じる。

「え? これ何だよ?」

「悪霊獣の好みそうなミツグ君の魂の匂いを何十倍にも増幅させる装置さ」

「……つまり?」

「悪霊獣に見つかりやすくするためのものだよ。悪霊獣はかなり知能が低いからね。極上の餌を見つければそれ以外のことがどうでもよくなってくるくらいに食欲まっしぐらになってくれるさ。あ、ほら、後ろ後ろ」

 ゼンゼンマンがミツグの後方を指さすと、十数メートル離れた先の景色が歪み、そこからドロリとしたものが流れ出す。

 そしてみるみるうちにそいつは胴部が丸く膨らみ、にょろにょろとした四本足が生え、ドロドロとしている大きな口が開いて舌がだらしなく伸び、口の上にはメガホンのような形をした目なのか耳なのかよく分からないものが左右対称に生えていた。

「よーし、実体化成功! このままの形を十分間維持させて校内中を逃げ回ってねー! 大丈夫、ワタシがゲームで出したドクロほど強くもなければ速くもなければ賢くもないから特製アイテムを駆使すればどうにかなる! じゃ、またあとで!」

 好き勝手言いながら、ゼンゼンマンは姿を消した。

 後に残されたのはミツグと、実体化した悪霊獣のみ。


「うそだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

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