表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッドエンドラブコール  作者: 最灯七日
6/13

第6話 皆様、試験の時間です

【前回のあらすじ】

鬼ごっこで転落死

 映像は、別のゲームに切り替わる。

 九人の生徒達は教室の席に足と胴をがっちり固定されていた。腕は肘から先は自由に動かせるようにはなっているが、そこだけ動かせてもどうにもならない。

 そして各机の上には分厚い冊子と筆記用具が一本。

「というわけで、デスゲームの内容は純粋な知力のみで戦う総合テストでーす! ルールはシンプルに机の上にある問題集に答えを書き込むだけ。制限時間は一時間!」

 教団上のゼンゼンマンが楽しそうに説明する。

「そんでもってデスゲーム(・・・・・)のルールだけど、こっちも至ってシンプル。一位とビリの人が死にまーす」

 あまりのシンプルさに逆に不気味さを覚える生徒達。すぐに「ふざけるな!」と言う声が上がるが、例のごとくビームで黙らされた。

「ちなみに同率一位でも同率ビリでもまとめて死ぬんで、全員生存は無理だからね。あと私語とカンニングは強制的に0点だよ。じゃ、はっじめー」

 すっとぼけたゼンゼンマンの声と共に有無を言わせず試験が始まった。

 内容は一般的な中高生の学力問題から雑学や時事問題、そして何故かアニメや小説のマニアックな問題までジャンルは様々だ。

 端から見ればデスゲームと呼ぶには恐ろしく地味である。

 だが、命がかかっている事には間違いない。一位を取ってもビリを取ってもダメというのならば、真剣にやっても手を抜きすぎてもまずいのである。

 ならば平均点を狙いたいのだが、他の皆がどういうスタンスでやっているのかが全く分からないため、平均点そのものが読めない。

 つまり完全に攻略法が分からないのである。

 だが何もしないわけにもいかず、九人の生徒達は取りあえず問題に取りかかるしかなかった。

 自分が何位になるのかも分からない。そもそも何問正解しているのかも分からない。

 人生どころか命がかかっている試験なんて、後にも先にも受ける事はないだろう。

 カリカリ、サラサラと筆記用具の音だけが流れている教室だったが、残り十分を切ったところでアクシデントが起こった。

 試験を受けている者の一人、ミツグが筆記用具を落としてしまったのである。床に落ちた筆記用具は無情にも転がっていき、拾おうにも拘束が邪魔をしてろくに動きが取れない。

 ミツグは必死でゼンゼンマンに筆記用具が落ちた事を身振りと目線でアピールするが、それらは全て無視された。気付いていないのではなく、完全に分かってた上での無視。

 時間はそのまま無情に過ぎていき、やがてタイムアップが告げられる。

「はーいそこまでー」

 ゼンゼンマンがささっと回答を書き込んだ冊子を回収し、いつの間にか教壇の上に設置された何やら怪しい大きな黒い箱に入れる。

 十秒も経たないうちに黒い箱から一枚の紙が吐き出される。どうやらそれは採点と順位を出してくれる装置のようだった。

「と言うわけで結果発表~。まあ最下位は決まったようなもんだよね。相岡あいおかミツグくんでした!」

 モニターの中のミツグの表情は理不尽に対する怒りといった感情を通り越して虚無だった。皆、彼が試験続行不可と分かった途端に最下位脱出を狙えたのだ。筆記用具を落とした時点で彼の運命は詰んでいた。

「そしてそして大注目の一位は!」

 そこで何故か流れる特撮物っぽい暑苦しいBGM。演出に真面目さを全く感じさせられない。

「第一位! 譲木ゆずき花梨かりんさん!」

 名前を呼ばれた譲木花梨がびくりと肩を震わせる。

「というわけで間に挟まれている他の皆さんはおめでとう。そしてトップとビリはさようなら」

 派手な返り血を浴びるゼンゼンマンの姿を最後に、画面は例のごとくプツリと暗転した。




 こちらのミツグはというと、モニター内のミツグとほぼ同じ表情のまま固まっていた。

 ゼンゼンマンがミツグの顔の前で手をふりふりさせながら「おーい、大丈夫かい?」と声をかけたところでようやく我に返ったミツグは「何だよこれ」とつぶやく。

「と言うかなんでまたオレが死んでるんだよ!」

「なるほど、いい質問だね」

「なるほどじゃねえよ! てかそもそも何なんだよこの茶番みたいなのは!」

「いやー、この辺になってくるとデスゲームのネタも尽きかけてきてさあ。色々考えるのも大変なんだよねー」

「マジで茶番じゃねえか!」

 思わず掴みかかろうとしたものの、ゼンゼンマンのビームを思い出して動きをピタリ止めるミツグ。どうでもいいが、このやりとりの繰り返しも十分に茶番であった。

「そもそも前の鬼ごっこみたいなやつって十六人中八人がゲームから抜けられるって言ってたのに、画面に映ってたの九人だったぞ」

「……そりゃ君が屋上から落ちるというヘマしたせいで無効試合になったから生存枠一人減ったんだよねえ」

 ゼンゼンマンの仮面にINVALIDと言う文字が表示される。

「ま、過去の事はひとまずおいといて次で最後のゲームだからもう少し頑張ろうよ」

「延々と自分が死ぬとこ見せつけて何がしたいんだよ。この悪趣味外道ピエロが」

「えー、グロいシーンは極力カットしてあげたんだから感謝してくれてもいいじゃん? 自分で言うのもなんだけどこんなネタに年齢制限とか付けるのもアホらしいし」

「すでにアホだろ!」

 吐き捨ててからそのまま不貞腐れるミツグ。

 ゼンゼンマンはそんなミツグを実に面白そうに眺めながら言った。


「最後のゲームが終わったら教えてあげるよ。ワタシの本当の目的、本題をね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ