2話 交わる分岐点
「やっと帰ってきた」
討伐を終え魔法国家クラリスに戻ってきたユーリは、依頼の完了をするためにギルドに向かっていると何やら通りで揉めている冒険者パーティーがいた。
「なんで俺だけこんなに取り分が違うんだよ!」
そう言っていたのは歳は10~15歳位の薄汚れた服を着た少年だった。
そしてその周りを囲むように4人の中年冒険者がいる。
どうやら討伐報酬の分け前で揉めてるようだった。
「うるせえな!子供にはそんくらいあれば十分だろーが!」
「こんな金で生活できるわけねーだろ!パンすら買えねーじゃんか!」
「ガキが偉そうなこと言ってんじゃねー!!パーティー組んでるだけありがたく思え!!」
中年冒険者の1人がそう言うと少年の腹を思いっきり蹴り上げた。
その場で蹲り苦しそうに唸っている少年を見たユーリは、昔の自分と少年を重ねて無性に苛立ち舌打ちをして近づいて行く。
さらに少年に蹴りを入れようとする冒険者にユーリは肩をぶつけると、冒険者はバランスを崩してその場に倒れこんだ。
「痛てぇな!誰だコノ…ヤロー…」
俺の顔を見る中年冒険者の顔が見る見ると青くなるのをユーリは黙ってひたすら見下ろす。
耐えきれなくなったのか冒険者たちは悲鳴を上げ逃げていき、討伐の金が入った袋だけが残った。
ユーリはその袋を手に取り呆気に取られている少年に投げると慌ててキャッチした。
「助けたつもりかよ!!」
「知らねーよ。勝手に悲鳴上げて逃げたんだろーが」
「この金なんだよ」
「その金あいつらが置いてったんだよ。お前仲間だろ?」
「ちげーよ!!」
「そうか、じゃあ好きにしな」
そう言うとユーリは冒険者ギルドに向かって歩き始める。
一方その一部始終を見ていたパーティーがいた。
「なんか面白い人だったねーリータ!」
「そうだね」
「しかしお前が出ていくんじゃないかと冷や冷やしたよ」
「そうだよなー。リータはこういう場面ほっとかないもんな」
「リータ?ボーっとしてどうしたの?」
「ううん、何でもない」
「そんなことより、なんか飯食いに行こうぜ!!」
「そうだね、行こうか」
そう言いながらパーティーはその場を後にした。
ユーリはギルドに着き、受付に依頼を報告しに行く。
「ユーリさん、お疲れ様です。討伐の報告はこちらに届いてます」
相変わらずのぎこちない笑顔で対応してくれる受付嬢を見て心の中でご苦労様ですと唱える。
「ああ」
「それでは冒険者カードに記載しますのでカードをお預かりします」
冒険者カードを取り出すため、リュックを開ける。
リュックの中に俺の携帯食料のビスケットを食べてる奴がいた。
あまりの光景に一度リュック閉じ、深呼吸をし、再度開ける。
リュックの中でゴロゴロと転がりくつろいでいる奴がいた。
あまりの衝撃に言葉を失い口をパクパクしていると「あのー」と受付嬢が不安そうに声をかけてきたので思わず嘘くさい咳払いをしてリュックをとじる。
「申し訳ないが体調が悪いので依頼の完了手続きは明日でいいか?」
「は、はい…大丈夫です」
ユーリは物凄い勢いでその場をあとにした。