ようこそ、呪われた街へ#7 ようこそ、呪われた街へ
彼女は言った。
この世界はコインの裏側の世界だと。
「何故、誰も居ないんだ?」
単純な疑問を彼女に問いかけた。彼女はこの世界に詳しそうだったから。
僕の知りたい事全部知ってそうだった。この世界の事も、電話の事も、人が居ない事も。
「居ない訳じゃないよ?君が見えてないだけさ」
言っている言葉の意味が理解できないまま彼女の話は続いた。
「この世界は人間の裏の顔達が棲む世界なの。人を憎むような心や気持ちが念みたいになってこの街で生活してるんだ。」
「俺には何も見えないんだが。」
「それは君はそもそも私と同じでこの世界の人間じゃないからだと思うよ。」
「俺たちは帰れるのか?」
「帰れないかな、だってもうあっちの世界に“代わり”が行ってしまったから」
「代わり?それってもしかして…」
「ご名答。君が想像している通りだよ。」
もし俺が想像している通りなら、“代わり”はもともとこの世界に居た裏の自分の事だろう。
人を恨むような心や憎悪しか持たない自分が元の世界に行ってしまったという事は…。
背筋がゾッとした。今すぐにでも帰らないと表の世界で大変なことになってしまうはずだ。
「僕は君にこの世界に連れてこられたと思ったんだけど違うのかな?」
「私がこっちの世界に居るって事は裏の私はあっちに居るって事だから。多分君はあっちの世界にる私の瘴気にやられてこの世界に来ちゃったんじゃないかな。」
「この世界からはもうどうやっても出られないのか。」
「うん、この世界は...この街は呪われてるから。」
怒りたい気持ちもある。泣きたい気持ちもある。でも理不尽に彼女にそれをぶつけるのは違うと思った。彼女にぶつけたってなにも解決しない。何も進まない。この先どうすればいいのか。
背中をジリジリと炙る不気味な太陽だけが。答えを知っていると思った。