ようこそ、呪われた街へ#4 ポケットの中の恐怖
息を切らして走ったせいか額から汗が流れ出る。
気が付けばこの異変が起こった街中を何往復かして家の前に居た。
結局何もこの状況を打破するキッカケは見つからなかった。
とりあえず汗を拭こうとポケットの中からハンカチを取り出そうとする
その時“何か”が指先に当たる。
スマートフォン
(なんだ、これがあれば誰か人に連絡が繋がるじゃないか)
自分が読むジャンルの小説ではこういった状況では電波が立たないのがセオリーだが、ラッキーな事に電波は繋がっている。
普段引きこもりの自分に気軽に連絡できる友達は居ないが、両親になら気軽に電話が掛けられる。
連絡帳から“母親”の項目を選択肢で電話を掛ける
トゥルルル… トゥルルル… トゥルルル… ガチャ
「もしもし、蓮、元気?」
その声は紛れもなく母親の声だった。
数時間の不安のせいか、涙がこみ上げそうだった。
「お母さん!俺の声、聞こえてる?」
鼻水を啜る音が混じった声で母親に声をかける。
嬉しかった。もう二度と人と話せないと思ってたから。 嬉しさが込み上げて何もしゃべれなくなる
前に今の自分の現状を伝えようとした。
「母さん、俺、自分の今の状況を掴めてなくて」
「ちょっとまってね、今テレビで面白いニュースが放送されてるの」
違う、今はそんなことどうでもいい俺の話を聞いてほしい
そんな気持ちを伝えようとしたが耳元に当たっているスマホの向こう側から聞こえた言葉
「昨日ね、蓮が死んだって!」
…?
「お母さん悲しいわ、蓮が死んじゃったなんて、もう会えないなんて」
「でもしょうがないわねぇ、死んじゃったならしょうがないわね、もう会えないワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネワネネネネネネネネネネネネネネ」
プツッ、ツー、ツー、 突然 電話が切れた。
理解が出来なかった。訳が分からなかった。
電話越しに聞こえたのは母親の声。間違いない。嬉しさから込み上げていた涙はもう止まっていた。
『通話終了』の画面を残したまま、手からすり抜けたスマートフォンは地面に落ちていた。