ソレガ希望ノ街 #7 神社へ
俺たちは慎重に崩れかけた建物を抜け出し、荒れ果てた街の中へと足を踏み出した。陽はすでに傾きかけており、赤黒い空が不気味な影を街全体に落としている。風が吹き抜けるたびに、瓦礫の間からかすかな呻き声のような音が響く。
「この先に、案内図があったはず……」
花音が前を歩きながら、周囲を警戒するように目を細めた。かつては賑わっていたであろう商店街の残骸を通り抜け、俺たちは目的の場所へと急いだ。
やがて、ボロボロになった案内板が視界に入った。金属製の枠は錆びつき、地図の表面は泥や血のようなもので汚れている。それでも、かろうじて街の構造は読み取れた。
「……あった。神社、ここだ」
花音が指差した先には、街の北部に位置する神社のマークが描かれていた。しかし——
「この道、まともに通れるかどうか分からないな……」
俺は険しい表情で地図を見つめた。神社へと続く道は黒いインクのようなもので塗りつぶされ、まるでそこに何かが潜んでいるかのようだった。
「……でも、他に手がかりがある場所もないし、行くしかない」
花音は決意したように言った。その目には揺るぎない覚悟が宿っている。
「分かった。できるだけ慎重に進もう」
俺たちは地図を確認し、慎重に北へ向かうことにした。
道中、廃墟と化した建物の間を縫うように進みながら、俺たちは注意深く周囲を見回していた。奇妙なことに、さっきまでの黒い茨はほとんど見当たらない。だが、それがむしろ不気味だった。まるで何かが俺たちを待ち構えているかのような、そんな不安が胸をよぎる。
「……何かの気配がする」
花音が足を止め、小さな声で警告する。俺も息を潜めて耳を澄ませた。遠くで、何かが蠢く音がする。
——ゴトリ。
建物の影から、何かが崩れるような音がした。
「誰か……いるのか?」
俺が小声で問いかけたその瞬間——
黒い影が、一気にこちらへと飛び出してきた。
「っ!」
反射的に身を引いた俺の目の前を、黒い霧のようなものがかすめる。それはまるで、人の形をした"何か"だった。だが、顔はなく、身体は揺らめき、まるで不安定な存在のようだった。
「……アレ、夢の中で見たやつと……」
思わず呟いた俺に、花音が鋭く言った。
「考えるのは後! 今は——逃げる!」
俺たちは振り返り、全力で駆け出した。影の化け物は異様な速度で追いかけてくる。道の途中にある瓦礫や壊れた看板を跳び越えながら、俺たちは神社へと続く道を目指した。
息が切れる。体が悲鳴を上げる。だが、振り返る暇はない。
そして——
目の前に、朱塗りの鳥居が現れた。
「……あった!」
神社はまだ存在していた。しかし、その姿は以前とは違う。社殿の屋根は崩れかけ、周囲には黒い茨が絡みついている。異様な空気が満ちていた。
だが、それでも俺たちは足を止めなかった。
——何かが、ここにいる。
それが神なのか、それとも——別の"何か"なのか。
俺たちは、その答えを求めて、神社の境内へと駆け込んだ。




