ソレガ希望ノ街 #6 そろそろ動き出さないとね
静かな時間が流れた。花音の膝の上で、俺はしばらく目を閉じていた。彼女の指が優しく髪を梳き、温もりがじんわりと体に染み込んでいく。だが、安息の時間はそう長くは続かなかった。
「……そろそろ、行動しないとね」
花音がぽつりと呟いた。その声には、さっきまでの柔らかさとは違う、僅かに緊張を孕んだ色が混じっていた。
俺はゆっくりと体を起こし、彼女の顔を見上げる。そこには微笑みはなく、まるで覚悟を決めたかのような真剣な表情が浮かんでいた。
「街のことを、調べないと……」
「……ああ」
俺も同じことを考えていた。この街に何が起こっているのか。俺たちはどこに向かえばいいのか。何より、花音の傷を悪化させたあの黒い茨と、俺の夢に現れた影の化け物——それらの正体を突き止める必要があった。
「手がかりは……あるのか?」
花音は少し考え込むように目を伏せた。そして、ゆっくりと口を開く。
「この街には、"神様"がいるって話を聞いたことがある」
「あぁ。確か此処に来る前にそんな事言ってたな」
「伝承や記録が少ないから、詳しくは分からない。でも……もし本当にいるなら、何か知っているかもしれない。この街に何が起きているのか、どうすればこの状況を変えられるのか……」
確かに、その"神様"とやらが本当にいるのなら、話を聞く価値はある。しかし——
「その神様が、俺たちに協力してくれるとは限らない」
「うん、分かってる。でも、今は情報が少なすぎる。まずは手がかりを集めるしかないよ」
俺は頷いた。確かに、このまま闇雲に動くよりは、何かしらの情報を集めるべきだ。
「具体的に、どこを調べるつもりだ?」
花音は少し考え込んだ後、ゆっくりと答えた。
「……神社。まだ残っているか分からないけど、この街には古い神社があったはず。そこに何か痕跡が残っているかもしれない」
神社か。確かに、神様の手がかりを探すなら適した場所かもしれない。だが——
「無事に辿り着ける保証はないな……」
街の状態は異常だった。俺たちが今いる建物も崩れかけているし、黒い茨がどこに潜んでいるかも分からない。さっきの戦いで俺たちは満身創痍だ。慎重に動かないと、次は命を落とすかもしれない。
「でも、やるしかない。ここに留まっていても、何も変わらないから」
花音の声は静かだったが、そこには強い意志が感じられた。
「……分かった。じゃあ、まずは地図を探そう。神社の場所が分からなければ、探しようがない」
「うん。近くに町の案内図があったはずだから、そこを探してみよう」
俺たちは立ち上がり、傷ついた体に鞭を打ちながら、町の案内図の看板を目指すことにした。
この街に何が起こっているのか。俺たちはどこへ向かうべきなのか。
——答えを求めて、進むしかなかった。




