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この街で待ってる  作者: 宮下おとぎ
この街で待ってる #ソレガ希望ノ街
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ソレガ希望ノ街 #4 黒い茨


 額から頬につたう雫、それにすら気が付かないほど面前の光景から意識が離れなかった。地を這いこちらに手を伸ばす少女、助けを懇願する少女に手を差し伸べられない自身の無力さを感じる。これは今に限ったことじゃない。今までだって戦闘中に惨い姿になる彼女を見てきた。だがそのたびに彼女は戦況を巻き返し余裕ぶった顔で僕に微笑んできた。(きっと今回もそうだ、大丈夫。きっとここから人間離れした神秘的な力を使ってこの状況を覆していつもみたいに余裕ぶった顔をするんだ。)そう思っていても未だに彼女がこちらに向けるのは苦悶の表情だけだった。


 助けを求める彼女の瞳からは段々と光が失われていく。「いやだ――助けて!」この言葉を最後に彼女は一言も話さなくなった、小さく悶えるだけで彼女自慢の帯は自由に動くことを辞め地べたにペタリと吸い付くように力なく落ちていた。地面から突き出た茨のような棘はジリジリと彼女の体にめり込まれていく。次第に穴は広がり体からは絶え間なく赤い鮮血がドバドバと溢れ出ていた。


 花音の体は黒く捻じれた茨に貫かれ、地面から突き出した棘が肌を裂いていた。不死身であるはずなのに、その顔は青ざめ、瞳は虚ろに揺らいでいる。


 「くそっ……!」


 俺は息を呑みながらも、彼女に駆け寄った。茨の棘がまるで生きているかのようにうねり、俺が触れようとするとさらに深く彼女の体を締め上げる。


 「大丈夫か!」


 返事はない。細い唇が何かを呟いた気がしたが、血の気の失せた顔がひどく弱々しく見えた。不死身のはずなのに——それなのに、まるで命が消えかけているみたいに。


 迷っている時間はない。俺は歯を食いしばり、彼女の体を支えながら強引に茨を引き裂いた。手のひらに鋭い棘が突き刺さり、じわりと血が滲む。だが、それ以上に彼女の方が酷い。鮮血が零れ落ちる体を抱きかかえた瞬間、彼女が微かに身じろいだ。


 「……っ」


 くぐもった声が漏れた。意識はある。まだ、間に合う——!


 俺は彼女を抱き上げ、一気に駆け出した。背後では、茨が未だに不気味に蠢いている。追いかけてくるつもりなのか、それとも新たな獲物を待っているのか。


 「しっかりしろ……!」


 腕の中で、彼女の体が小さく震える。血塗れのまま、それでも彼女の指が微かに俺の服を掴んだ。


 そのかすかな力を感じながら、俺はただひたすらに走った。


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