表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この街で待ってる  作者: 宮下おとぎ
この街で待ってる #ソレガ希望ノ街
32/40

ソレガ希望ノ街 #3 お願い…助けて。


 隣で白いワンピースを着た少女が浮遊しながら前に進んでいる。この珍妙な現象に段々と慣れてきた頃、ようやく建物の様なものが見えてきた。いくつもトンネルを超え、橋を渡り、草木をかぎ分けやっとの思いでたどり着いたその町は閑散とし、荒廃していた。そして疑問を抱えた。確か自分たちは隣町に向かっているはずだった。街には着いたが全くそこは見覚えのない街で自分が知っている街とは全くの別物だった。

 先程まで居た田舎町とは全く違い、建物も高くお店も山ほどある都会の様な場所でぱっと見廃れてはいるが、店前ショーケースに映るマネキンに飾られた服や映画館のポスターを見るとつい最近の流行りの物だと見てわかる。何年も昔に廃れたゴーストタウン感を醸し出しているが、すべての物が今現在、リアルを表している様だ。


 静まり返っているのに街そのものに異様な存在を感じる。ひび割れ、間から雑草が生えたアスファルトは表面が削れ粉々しくなっていて歩くと足跡がくっきりと残った。数メートル先でビル風が粉塵を巻き上げる、その情景が何処か切なく感じていた。花音は何も気にしていない様子で街の奥へと足を進めていた。何処か不思議そうに、人差し指を唇の下に当て、何かを考え込むように歩いていた。


 「花音、どうしたんだ?」


 「土地という場所には神が宿るものだ。例外は無く、私達が居た街だってそうだ。私が神様だったから。ーーーそれなのに」


 花音は自分の周りに”真紅のベルト”を展開させた。花音の周りを取り囲み四方八方何処にでも攻撃が出来る様に臨戦態勢モードに入っているようだった。何かに警戒している花音のそばに駆け寄ったその時だった。


 「下がれ!」


 今まで見たこと無い様な権幕で花音が叫んだ。その瞬間黒い何かが地面から突き出し、花音の腕を貫通した。

 

 血のように鮮やかな悲鳴が夜の静寂を切り裂いた。


 「いやだ――助けて!」


 彼女の声は途切れ途切れに、次第にかすれていく。鋭い痛みが体を支配し、冷たい汗が背中を伝う。何かが彼女の手に、足に、容赦なく食い込む感触があった。それは牙――硬く、冷たく、そして残酷だった。


 「やめて…お願い…」震える声は、もはや誰にも届かない。


 力なく地面に崩れ落ち、視界は霞む。痛みと恐怖が、彼女の意識を濁らせていく中、ただ感じるのは、生命そのものが引き裂かれていくような感覚だった。


 目の前の光景が信じられなかった。

 花音が――いや、あの神様が、地に膝をつき、苦しげに息を荒げている。神聖さをまとったその存在が、血を流し、痛みに顔を歪めているなんて。


「嘘だ…」思わず声が漏れる。胸の奥がじわりと冷たくなるのを感じた。私は不死身だと信じていた。不滅の存在で、誰にも傷つけられないと信じて疑わなかった。


 だが今、”神の力”そのものが崩れ落ちていく音が聞こえる。あの絶対的だと思っていた存在が、今はただの一人の“弱さ”を持つ者に見える。混乱、恐怖、そして何か言葉にできない喪失感が、心の中で渦を巻く。


 「何で、こんなことに…?」自分に問いかけても答えは出ない。ただ一つわかるのは、目の前の光景が現実であり、それが私の中の何かを取り返しのつかない形で変えてしまったということだけだった。


 

 「お願い…助けて…」


 弱々しく声を出しこちらに手を伸ばす彼女が目の前に倒れていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ