ソレガ希望ノ街 #1 赤帯の花音
「もう無理、歩けない」
電車の走らない寂れた線路を歩く中、先に音を上げていたのは花音の方だった。フラフラになりながら道を歩く少し危なげない彼女に肩を貸そうとするが全力で拒否される。手を貸そうおとするも腕を振り払われ睨め付けてくる。それほど僕は頼りないのだろうか、それとも役不足なのだろうか。
「そんなに疲れてるなら、肩ぐらい貸すって」
「いやだ」
「そんな子供みたいに拗ねるなよ、じゃあ、ちょっと休憩する?」
線路以外の整備がされていない草木で荒れた道の真ん中で休憩を提案した。湿った線路の上に座れとまでは言わないが立ったままでも休憩は必要だ。あれ程に強い力を持っている少女にも関わらず普通の少女の面もある所に何処か落ち着きを感じる。
彼女は体にまかれた赤い帯を解いたかと思うとそれは自らが自我を持ったかのように動き出し、形を変え椅子の様な形になったかと思うと花音はそれに腰を掛けた。少女一人の体重を帯だけで支えている状況が不思議で口を開けて見ていた。段々とその形は奥側に伸びていきリクライニングシートのような形になり花音は寝そべってしまった。
「あの…花音さん?」
「休憩を提案したのはお前の方だろう?」
「そうなんですけど、そのくつろぎ方は予想外といいますか、何というかツッコミを入れたくなるというか便利ですね、その赤い帯」
彼女は人差し指を空に振ったかと思うと帯で生き物を作って遊び始めた。ウサギか、カメか、赤い帯でできたその動物の様なものは真っ赤が故に少し不気味だったが、それでも花音は楽しそうだった。
「上手だろう、何に見える?」
「ウサギかな、もしくは亀?」
「猫なんだけど…どう見ても」
彼女は少し不機嫌そうな表情を浮かべた、何か話題を変えないとこのままでは空気が気まずくなってしまうような気がした。とりあえずずっと不思議だったのはその帯だ。形状変化も伸縮も自由自在、それを操り敵を倒すその姿は美しくも気高く、そして可憐だった。
「花音が使ってるその帯みたいなやつって何?」
「これか、便利だぞこれは。」
彼女が腕を振り上げた途端、帯は無数にも分裂し空高くへと上がると急降下し僕の面前まで鋭く伸びた。柔らかくもなく、硬くもなく、まるで刀が新体操のリボンのようにしなりを持った武器の様だ。
「これは私の体の一部、守れもすれば敵を貫くこともできる。
ーーー真紅のベルト≪ブラッティーバンド≫」
あまりのネーミングセンスの無さに驚嘆したことは当分秘密にしておこうと思った。




