嘘偽リノ街 #13 神様の願い事
『こっちにおいで、話をしよう』
チカチカと薄暗い場所で点灯を繰り返す肉の灯篭が血だまり池とその先を照らしていた。見覚えのある鳥居の前で立っている僕はソレに声を掛けられていた。
朦朧とする意識の中、手招きをする黒い影がコチラを向いている。黒光りするその瞳に無意識に体が吸い込まれていくような感覚に堕ちていた。
それはもう戻れなくなるような、深い海の底へと導かれるような渦潮の中に気分だ。
「—--------ッ」
声が出せない。無意識に喉の奥に言葉が詰まる。息が出来るのに呼吸が出来ないような。水の中で話しているような、そんな不思議な感覚だ。
(話をしようなんて言ったのはそっちじゃないか。)
『口で話さなくても考えれば私に聞こえるよ。ここは私の世界だから』
(・・・・・・・)
『実は君が私の前から逃げ出すことは分かっていた。でもどうしても会わないといけない事情があったんんだ。許して欲しい。』
(貴方は、誰なんですか?僕と同じ名前は偶然ですか?)
多分これは夢の中だろう。実際に対面した時の威圧感や恐れを感じない。声も出せないし相手の姿もしっかりと視認は出来ないが恐怖を一切感じないのだ。
『その話、今そんなに大事かい?それよりも今は時間が無くて、君に伝えないといけない事があるんだ。』
少し焦り口調で僕に伝えようとしていた。タイムリミットが近づいている事が僕にも分かった。勝手な解釈だけど、これはきっと僕の夢の中だ。先程花音の隣で意識が落ちたのを自覚しているからだ。寝てしまってからどの位の時間が過ぎてしまっているのだろう。花音はもう起きて居るだろうか。全く今は関係ないのにそんなくだらない事ばかりを考えてしまう。
『伝えてもいいか?』
(そうだった。彼に思考が伝わるのをすっかり忘れていた。)
『…この世界を君に終わらせてほしい。』




