嘘偽リノ街 #11 安堵の時間
蒸し暑苦しい気分が悪くなる街中を足がくたびれる程歩き進んでいた。四季が判らない位凍えるような寒さや汗ばむような暑さのあるこの空間をひたすらに歩き続けていた。
雪が降っている訳でも無く太陽がギラギラと輝き続けている訳ではない。オレンジ色に輝く夕焼けのような太陽が背中でジリジリと街を照らし続けていた。ソレは大きく傾きもせず、沈むこともしないまま何時間も何日も同じ位置でずっと街を照らし続けていた。
気が付いたら家のベッドに横たわっていた。
落ち着こうとお茶を飲もうと沸かしたポットは蒸気を上げ続けていた。湿度が高くなる室内で除湿器の口がこちらを向き静かな音を鳴らし続けている。そしてここにきて当たり前だと思っていた事に疑問を感じた。
(…何で電気が通ってるんだ?)
あれだけ走り回った街中でどこも電気は通っていなかった。だから勝手に電機は使えない物だと思っていた。…全く癖とは恐ろしい物で無意識に家電のスイッチを付けている自分に驚嘆してしまった。通りで一人暮らしにしては今まで電気代が高かった訳だ。
そう思うと段々と気持ちは落ち着いて来た。
どうやら電気自体は動いている様だった。これが町全体なのか、それともこの家だけなのかは分からないが気持ちを落ち着かせる材料にはなったようだった。
(さて、お茶でも飲もうか)
寒い時期に飲む暖かいお茶はとても体に沁みる物だ。先ほどまでの動機が段々と静まっていくのを感じる。そしてさっき起こった事をゆっくりと思い返していた。
何も考えつかないままいつの間にかボーっとして時は過ぎていく。自分の選択は間違っていなかったか、合っていたのか?悩みながら暖かいお茶を口に含む。そこに玄関の扉を叩くノックの音が聞こえる。
コン コン コン
コン コン コン
普段音を立てない扉に少し息を飲む。 コクリと喉を流れる空気が耳に伝わる。
「誰です…か?」
焦ってドアノブを抑える。まともな人間が居ないはずのこの世界にドアノブを叩いて来るのは化け物かあるいは…。
ノックをする音は段々と大きくなっていく。段々と焦りを感じてきたが
「私だ、花音だ。」