嘘偽リノ街 #7 僕の生き方
僕は人に興味が無かった。
興味が無い、それは好きでも嫌いでも無い。無関心なのだ。
他人に対して無関心のまま20年近くが経つと、何事にも他人に対して憤りを感じなくなる。他人の身勝手で、理不尽に自分の幸せが刈り取られたとしても、僕は憤りを感じない。相手を憎む気持ちが芽生えてこない。
今回も同じだ、花音の身勝手でこの世界に連れてこられたとしても、僕は何も感じていない。彼女に怒りをぶつける気も、責任を問う様な事もしない。 いつも通りに空に浮いてる浮雲の様に自分は流されている。
あれから何時間経っていただろうか、彼女の涙は止まっていた。
「僕は、別に、気にしてないから。」
泣き止んだ彼女に咄嗟に掛けた言葉がそれだった。
この状況で“気にしないで”という言葉は余計に彼女を傷つけてしまうのではないか、
「どうして、そんな事が言えるの?」
彼女の目にはまた、涙が滲んでいた。これが当然の反応だ。
「ごめん、泣かないで。僕がこんな性格だから、怒れないんだ。」
先程まで泣いていた彼女は不思議そうな形相でこちらを見ていた。何処か不安そうな目をして真っ直ぐと僕を見つめて一言だけ放った。
「君は、つまらない生き方をしてきたんだね。」
こんな侮辱的な言葉を見た目年下の女の子に言われれば普通であれば多少なり憤りを感じるだろう。だがしかし、僕は何も感じなかった。僕は何も口にする事は無かったが、彼女はもう僕に興味を持って居ないかのように畦道を一人進んでいた。
僕はつまらない生き方をしてきたのか?
生きることに意味を考えて生きた事は一度も無い。 どうせ短い人生、生きる意味を考えていく内にいつか朽ち果てる。だから考えない。
それが、“つまらない”の意味なのか。
「ねぇ。早くついて来てよ。」
この先に何が待っているかのワクワクより、彼女の態度が気になって仕方なかった。