ようこそ、呪われた街へ#1 プロローグ
-序章- 異変
街の図書館は今日も静寂に包まれている。幾万と本棚に敷き詰められている無数の書籍の中から自分好みの本を探し出すのは砂漠の中から指輪を見つけ出すのと等しい程に困難だ。
好きな本を見つける方法は初めにタイトルで魅入るか否か。本棚にある無限にある数の本を右手の人差し指で右方向になぞりタイトルだけを見ていく。そして一目で魅入ってしまったタイトルを見つけた。その本を手に取り窓際の席に静かに席に座りコーヒを片手に両耳にヘッドフォンを被り、本の世界へ入り込んだ。ヘッドフォンからは音楽は流さない。外界からの雑音を塞ぐため、些細な物音すら不快感を覚えてしまうからだ。そして僕は静かに物語に足を踏み入れて行った。
読み終わった本をそっと机の上に置いた。気が付くと時刻は既に19時を回っているようだった。あたりを見渡すと自分以外の客は残っておらず図書館は閉館時間を迎えるところだった。立ち上がり本を返しに本棚へ向かった。読み終わった物語の余韻に浸りながらぽっかり空いてる隙間に本を返し図書館を後にした時だった。外の入り口のベンチに見た感じ自分より年下の女の子がベンチに座っていた。まだ2月で肌寒い時期に黒髪ロングで白いワンピースを着た彼女は足元を見つめていた。何処か彼女は悲しそうな顔をしていたが恥ずかしく声をかける事が出来ない僕は知らないフリをして帰宅した。
その日の夜どうしても白いワンピースの少女の事が頭から離れなかった。時刻は0時を回っていた。
(そろそろご飯を買いに行こう)
夜型の生活を送っている自分は夜中にコンビニへ毎日のように通っていた。彼女の事が少し心配だった事もあり帰りに図書館に寄る事にした。
深夜1時、自分の不安は的中していた。彼女はベンチに寝座っていた。
自分の住んでいる所は中途半端な田舎で最近ようやくコンビニが増えてきた。もちろん夜中に警察は見回りしていない。彼女に声をかける事にした。
「こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
彼女は気づいていない様だ。
肩を揺さぶって起こそうとも考えたが最近は触れるだけでセクハラと訴えられてしまう世の中だ。どうしようとあたふたしていると彼女は目を覚ました。
「お、おはよう。お家に帰らないと親御さんが心配するよ?」
見た目は中学生、そんな子がこんな時間に外に居るのは何か家庭的な事情でもあるのだろうか。
「 ・ ・ ・ 」
彼女から冷たい視線を感じる。何かしてしまったかな?と考えているとふと違和感に襲われる。
(…足が透けてる。)
白いワンピースの彼女は足が透けていた。向けていた冷たい視線は不安ではなく悪意を感じる視線だった。
彼女が黒い笑みを浮かべると急な頭痛に頭を抱え込んだ。
それはとても苦しく・痛く・吐きそうな頭痛だった。彼女の静かな笑い声を最後に僕は意識を失った。