第70話 ミレニロスの恐ろしさ
深海の底を超えてマントル近くまで貫いた天の息吹によって、海は荒れ。少々強めの雨が降り、緑色の煙がしばしの間包み続けた。
ドラゴニスは反動を一切負っておらず冷静に周囲を警戒して下をジーっと静観している。
10分の2か3程度の出力で放出した。直撃したことは直視できたが、“怪物″である以上安心できない。できれば迷惑を起こさない半分近くの出力で放ちたかったが、奴が何故あのとき強くなったのかが分からない以上できなかった。
“怪物”とは恐ろしくて不気味だからこそ恐怖するのだ。
つまり″終った″と実感しない限り安心できない。
「なんだ!? 全身が震える実感は……)
天そのものたる息吹は直撃したことは目と風を通して確認した。多少ダメージを与えれたようだが、ミレニロスはピンピンしていて、即座に再生せずにただじーっとしている。
一応『対聖族』用のブレスで放ったが、ミレニロスの″不死身性″は聖族や神のものではなく、私でも感じ取れないものだと解った。
“あれ“は、そう。超厄災と同じ域の。
「――っっ! 私が即座に感じた正体はこれか!? 少し噴き出ただけでこんな強大さにこの損害.......。
さっきまではただの準備運動に過ぎなかったのか!」
ボロボロだったミレニロスの全身が、魂の全てが粒子になって分解され、新たな姿となったと同時に発生し、即座に「―!これはまずいっ!!」と危険を察知して全速で距離をとって避難したため被害を受けずに済んだ。
私は“天神″。故に【風】を通して状況を把握することができ、一瞬感じたものでミレニロスをある程度分かった。
(あの白い領域がある以上ミレニロスに攻撃は通らないどころか近づけない。私にできることはただ一つ……)
全速前進で少しでも早く飛翔して後方に退いていく。ミレニロスの白いものの範囲がどこまであって、どれ程の時間で拡大されていくのかが解らない以上少しでも多く距離を取るしかないからだ。
「 」
更に巨大となり、金色に輝く人型をした全身。虹色に光る丸い球体がはめ込まれた純白の六翼を広げた、仮面のみたいな形をした口だけ開く銀色の顔。
異形のバケモノから、怪獣の手足をした女神の姿をした姿に変化していた。一目見れば「神々しい女神さま.......」と崇拝してしまう程に。
そしてミレニロスを中心に展開されている白一色の世界、【パーフェクト・ゼロ】。何であれまるごと全て漂白し無に帰す絶対領域。ミレニロスの能力そのものが具現化されていて、触れれば即座に完全消滅させられる。
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「流石はアルビン君が生み出した怪物だ。その日がどうなるかを楽しみに待っていたけど、ボクの予想以上の出来じゃあ、ないか!」
アナたちがいる三次元を超えてシロウがいる四次元にまで影響がでていてシロウはそれに対処している。身が危険なのもあるが、第一に今自分が倒れれば抑え込んでいるものが解き放たれてしまうからだ。
「上手くいけば″アレ″を片付けられそうだけど。やはり明確な心無きものは津波の如く、ただ何もかも壊し尽くす暴挙と化すか……」
アルビン君の解決策は『異世界を犠牲にエヴァスマムを倒す』こと。その場合相打ちとなって異世界が滅ぶだけでなく、多少の余波で近くの世界とかに被害を及ぼす。無限の存在する数多の世界の内の″一つ″がなくなってほんの少し巻き添えになっただけで「だからどうした?」ってしかない。
端的に言うと『バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ!』で起こる最小限の被害だけど、当然ボクは生まれ育ったこのせかいが好きだから当然プランを打って抵抗した。
「できればボクも手を貸したいところだけど、これはアルビン君が出したテストだ。君が生み出した極限とボクたちの希望。どっちが強いか、この眼で見届けるよ」
嵐のようにせまる純白の災禍を、白金に輝く神々しい槍に金棒の形をした漆黒の大剣を手にとって薙ぎ払いながらそう言った。
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「いくぜ、ファルシオン!」
「ええ、兄さん!」
【防守の理】の白銀の光と【神秘の理】の黄金の光。二つの力が螺旋し、パーフェクト・ゼロと激突する。あらゆるものから全て守り抜く力と神秘の力を秘めもたらす力がお互いに協力し合うことで対抗している。
お互いに五分五分で、押したり引いたりがおこなわれている。
「更に強大になったミレニロスを止めれるのはお主たちしかいない。あの白い力に」
ルガリアとファルシオンの二人にそう伝えたのは海神ミダチ。水を司り叡智に長けた女神だ。海水を通して状況を探っていた。故にドラゴニスについで事態を把握している。
パーフェクト・ゼロによって端末となっていた海水が漂白され危うく自身おも消されかけたが、間一髪に切ったおかげで無事でいたんだ。
「やはりアイツの白い力はただのオーラでしかないようだな」
「できれば力をぶつけている間は何もできないでいてほしかったよ」
二人はミレニロスの攻撃を躱している。こちらの領域に異世界は何度受けてもすぐに修復するため心配は不要だが、一発当たれば即死な為避ける以外にないからだ。
異世界が安定しているのはシロウが裏でカバーしているからで、元々エヴァスマムと戦う前提な為既に頑丈に施されていてほぼ十中八九、『対ミレニロス』用に組み直したか書き換えたからだと思う。
何であれ自分の身だけ心配して戦えればいいから焦らずに済む。オレとファルシオンは元聖族だが、神であれ焦れば時間の問題だし元も子もないからな。
「私たちの領域が!!」
「落ち着けファルシオン! 少し乱れてバランスが崩れただけだ。気をしっかりもて!」
「だがそれには一つ問題がある。それは、お主たちの息が合っていなければいけない」
ルガリアとファルシオンは兄弟で同じ【光】の神だが、一つだけ大きな″わだかまり″がある。それが原因の一つとなって領域の強度が弱めている。
原因は『兄へのコンプレックスと恐怖心』。命からがらのめ戦いを前にして『恐怖』『緊張』『焦り』『劣等感』がファルシオンの精神を追い詰めていて、精神的な余裕がなくなってきている。
誰しもが″追い詰められた時″本性や本音が露わになり、それを前にして安定できる者はごくわずかしかいない。
「避けろファルシオン!」
「ーっ!!」
ファルシオン目掛けて剣の形をした白い光が放射され、ルガリアは強く訴えながら急いで向かっている。
ファルシオンはそれに気づいたが怖気づいて回避も防御も間に合わず、腰抜けたまま攻撃を見ている。
出力を何割か放出して盾にすれば何とか避けられることは可能だが、“数秒”と猶予の中で「やられる!」と硬直してるゆえ咄嗟に行動することができない。
「……あ、」
ファルシオンの目の前に映ったのは、白金に輝く盾を左手に付けた一人の少年の姿。ミレニロスの能力を遮断し、直撃を受けて全然受ダメージをけていない。
「どうしてここに来た。アルトス!」
領域
自分を周りとした“一帯”範囲内を自分の世界そのものに上書きする。つまりその強者の“縄張り”そのものであり、領域内はその主である者にとって最適にできあがっている。
・最初は“怪物”として私が脳焼かれたあるラスボスをモデルとしたイメージだったんですが、どうもぱっとせず、イメージを変更して一回書き直しました。




