第65話 駆け付けし戦士
「ありがとうアルトス。お主が来ていなければ、拙者はやられていた」
…アルトスの雰囲気が、人が違う。誰かがすり替わっているだけと言ってる訳じゃない。
何がどうあってここまで成長したのかは分からないが、初めて会った時とは比べ物にならない程に強くなっている。
「初めまして、カール神帝。両親たちが作った杖の神器を返させてもらう」
「アルビンから話は聞いているよ。神々の使徒....いや、一個人として自立した子よ。
お主の目的は分かったが、その細部に至るところは解っているのかね?」
“目的を果たしたその先“をカールは問うている。『目的を果たしたその後』が無ければ自滅行為に等しく、『ただそうしたいだけ』ではワガママな子供と同じだからだ。
「あなたたちの事は全然分かんないけど、私と神々は極厄災に勝って生きる為に今も準備している。そしてエヴァスマムと戦うにはどうしてもそれが必要なんだ。だから、返させてもらう」
アルビンの目的はカール神帝とアグラヴェイン、トリスタンと数人しか知りえていない。
同行したファルシオンがアルビンの記録やら痕跡を調べて真意を探っているが、それが知るのはこの戦争が終わった後なのは明白だ。
目的がどうあれ、世界の真相を知った上で『自分のできる事を成そう』とした意志と気概は本物で正しくもあるからこそ、アルビンをただ否定せずその細部を知ろうとしている。
「どうやらアルビンが思った以上に神々は寛容のようだな」
「寛容じゃない。曲りなりに向き合うようになれただけだ」
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「アルトス。君がボクの事をどう思っているのか、できれば教えてほしい」
ボクたち神々はエヴァスマムに対抗するためにアルトスを作った。エヴァスマムに対抗できる神器の力と、それらを繋げてより強大にするボクだった力を使えるのが異世界人とアルトスしかいなかったからだ。
「“父“と心からそう思えるのは二人だけ。それ以外はなんて思えばいいか....…よく分かんない」
『生みの親より育ての親』。故にアルトスにとってルガリア君が父でファルシオン君が叔父に見えて思っているのだろう。
やった事は責任転換の押し付けだからいくら弁明してもボクが毒親も同然なのは変わりない。それこそ、自身のコンプレックスを覆い隠したいが為に押し付けるプライドが高い者のように。
ルガリア君がボクたちを敵に回してでも怒って反対しなければ。神として、一個人として最低で取り返しのつかない大罪を犯していた。
ボクは贖罪としてアルクリドスと一心同体となったアルトスに稽古を付けながら向き合った。
時間の流れが極端に遅いから、大体10年くらいぶっ通しで続けたかな?
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「....そうか。この世界を救いたいなら、ワシからこの杖を奪い取って見せよ!」
髪と瞳が瑠璃色に染まって紺青色のオーラが強く輝き光る。アルトスを敵とみなし、全力で迎え撃つという以外にない。
「足は引っ張るんじゃないぞ。そうした場合はどうなっても知らんからな」
「ひっぱるつもりは毛頭ないよ。そっちこそ、ついてこれなくなったらどうなっても知らないぞ」
「面白い!」
アルトスから感じる“力″はカール神帝が持っている杖と大魔王が宿している力と同じ物だ。 幾度も何人もの猛者と対峙してきた。故に“どんなものか“は一目見ればある程度分かって、対峙すれば詳しくなる。
『神器』は会議で端的な説明を聞いてどんなものかは知っている。共通で担い手の力に身体能力などを底上げするそうだが、アルトスからはそれが一切感じない。
「いくよ、盾の神器!」
アルトスの左手に赤い宝玉がはめ込まれた銀色のラインが装飾された黄金に輝く盾が出現して杖の神器と衝突した。
そして衝突した直後に振動に威力“全て″がカール神帝に向かって逆流しもろに受けた。
「――っ! そうですか、その神器はそういうものですか……」
アルクリドスは地神がアルトスの為だけに全身全霊を注いで力と願いを込めて一撃一撃に打って作ったもの。アルトスとは魂としての兄弟でもあり一心同体ある。故に他の神器と違って明確な意志を持っていて影から支えて守り、アルトスが死ねばアルクリドスも死ぬ。
そしてシロウの細工によって、大きさを自在に変えれるようになって、“受けた攻撃“全てを防いで跳ね返す特性を持っている。
「その盾のことは大体理解しました。そう簡単に墓穴は掘り落とさせませんよ」
衝撃で杖から手が離れて後ろへ倒れる状態になったのにもかかわらず、大水を起こして防がれて杖の神器が再びカール神帝の手に戻った。
“受け止めたもの″を跳ね返す特性であっても、押しが強く大量に押し寄せるものを跳ね返しても容易ではなく、跳ね返したとしても大した痛手にもならないからこそ、大水を起こしたのだ。
「灼炎身撃!」
「波身槍剣刃」
青く綺麗な水の刃を真っ赤に燃え上がる灼熱の手が掴んでバチバチし合う。【火】は水に触れただけで消えるのは全員が知っているが、それは火がただ弱いだけで強ければ天敵であろうと押し潰されることはない。
故にベリアルの“炎“は一切衰えることなくその威力を余裕で保ち続けていて、勢いが上がったり下がったりを繰り返している。
「今だ! 突っ込め!」
神器同士の力がぶつかって弓と杖の神器がし合っており、赤と青のオーラの衝撃波が発生していた。
当たればを焼かれ、魔力による直撃をくらって致命傷を負う程に危険な状態だ。
「いくよ。相棒!」
アルトスの髪が金色に染まって黄金のオーラが眩しい輝きを発している。他の神器とアナのものとは違って、使用者の身体や力を底上げすることはできない。だがアルクリドスと一つに化したことで身体の頑丈性と耐久性がアルクリドスと同じになって、オーラがバリアとなって二重に守られている
これは『アルトスを守って共に戦って支え合って欲しい』とガイアスがそう想いを込めて染み込ませて作られて反映されている。御守り程度の物として本人はそう作ったが、鬼に金棒に仕上がってできている。
「――あと少し!」
杖の神器に目掛けて手を伸ばす。ベリアルが介して魔力操作を妨害している為反撃することはできない。
「ーうお? ありがとうアルクリドス」
カール神帝がもう一人いて攻撃を放ったのだ。
アルクリドスが奇襲に気づいて力の流れを攻撃の方へ向けて変えたおかげで無事に済んだ。例えもろに受けたとしても魔力を多く消費するだけだが、すぐに対応できたおかげでそれほど失わずに済んだ。
「…水分身だな」
「さっき洪水を起こしたときにその何割かの水を念のために隠しておきました。
貴方に邪魔されてもっと多くの魔力を操ることはできませんが、有ればそれで充分です」
ベリアルはガルナから鬼人族秘伝の『化身術』を教わった為『魔力』などの異能の力に“干渉”して操作することができる。
刃先からとはいえ触れればよく、杖の神器を介してカール神帝を妨害していた。
カール神帝がどれ程の技量を持っているかはわからんが、少なくともオレと同等なのはわかった。
故に邪魔するのが精一杯だった。
「水分身は、拙者たちが受け持つ。其方たちは自分がすべき事に集中してくれ!」
虹の輝きと一体となったつるぎが銀色のオーラそのものになった杖と激突して衝撃が蓄積されていく。
究極斬刀剣。初代剣聖ケンジ・ムラマサが編み出した最強の剣技。
そして銀色のオーラは光と闇を一つにした究極の覇気。いわば最強同士のぶつかり合いでかすっただけで即死する。
「...致し方ありません。開放します!」
真っ青な光が強く輝いて金色の羽を持つ六枚の翼が出現した。
「....それが真の姿か!」
「...ええ」
翼が出現しただけで容姿には全然変化はない。それもそのはず、外見という名の“枷“を掛けただけで力と存在性を抑えて人間に扮していたから。
人から聖族に変化するシリウスと違って、カール神帝は元に至るところまで聖族にしている。




