第62話 三現主義
「さあさあ、もっと勢いよく強くぶつけて来るといい。君の力をもっと見せてくれ!」
「だったらこれはどう! ギラデレイク!」
紅色にギラギラと強くバシバシしている雷光を刃に乗せて放ったが、この攻撃も意図も容易く破壊されてしまった。
“空間“を介して私が放った攻撃だけを確実に攻撃しているみたいで、誰かに見られているようで気持ち悪い。しかも数百数千かの視線だから。
「流石はカール神帝と同じ“神器”の力だ。
だがそれは神器とは別の特別な力を持っているようだな」
「ヘルメス」とアンブロシウスがそう呼称した聖族の力によって戦えるのはアナのみ。
【統制・支配】権限を持つ主天使。これから逃れるには熾天使以上の“神性“。つまり神以上の存在性をしていなければいけない。アナはエレンと同じくただの人間だが、内にはシロウから貰った力を宿している故、アナだけはヘルメスの影響を受けない。
「ほうほう。程度の差しかないが、君の“強い“意思に反応して体力、気力、出力、魔力、覇気といったあらゆるものを底上げさせているようだな」
「それがどうしたの!」
私の攻撃をすべて躱し防ぎ、パンチをグッと掴まれて身動きが取れなくなった。
「どうやら気づいていないようだな。混じってあるその力にリミッターがかけられているのだよ」
「...リミッター?」
「考えたり試したことがないようだな。君が持つその力はあらゆるものを底上げする以上、際限ないのだよ。
まあ、その力が禁断そのものである以上、拘束を施しているのは妥当だがな」
「……」
リミッターが掛けられている事はギラ竜王から言及されたから覚えている。
曰く、危険過ぎて取り返しがつかないからだらしい。
「どれ程のものなの?」と内心疑問に思い続けていたけど、まさか禁断の力だったとはね。
「少なくとも無知ではないようだな。
君がこの世界の住人じゃないにしても、どうやってラディックスから力を得たかは分からぬが。まあ、そんな些細なことはどうでもいい。どの道解るからな」
「...ラディックス?」
「空の彼方の果てにある世界の最果てにあるひずみのことさ。この世界が誕生する時にできた例外そのもの
であり。『それに触れた者、祝福を受けた者は全知全能の力を得るか、全知全能の存在と化すか、あるいはその両方を得る』とその存在を知る者たちにはそう伝説になっている。
「エヴァスマム」とアルビンがそう名称した極厄災は失われた時間に要因となって起きたのだから」
要するに○月の◾︎◾︎のようなもののことか。
エヴァスマム.......シロウさんが言っていた厄災がそれって訳ね。
「他に聞きたい事はないかね?」
「.......そのえヴぁスマムって奴が厄災なら、ラディックスがどうなって起きたの!」
名前は分かったけど、肝心な部分。“具体的“なところが一切不明のままだ。
ラスボスだから今まで戦ってきた中で一番の強敵になるのは直感的に解っているけど、情報がなければ対処しようがないから。
負ければ異世界だけでなく、私が生まれ育った世界と他に存在する世界も全て滅ぼされてしまうから、負けられない。
「巫女が記した。或いは他者にそう記させた予言の石碑の内容がそのままの意味で起きた。
この世界。いや、この星に落ちた白い流星がエヴァスマムとなって破滅の元凶となった。
聖族となりその最上位である熾天使なったことでたどり着けた真相だ。無論、ラディックスを観測できるようになったが。それそのものがどういう構造になっているかはある程度解明はできたが、内部やその果てがどうなっているかは推測しながら調べ続けるしかできない」
「.......予言」
うろぼげだけど、ギラ竜王と始めて会った日に出されたあの石碑だと少なくとも分かる。
古代文字だし英語が苦手だけど、なぜか読み方を把握しててすんなり読めたから覚えているけど、あれに記されてた事はそういうことだったんだ。
「……アンタたちは怪物を生み出して、ラディックスを食わせようとしているの!?」
ここはどうしても聞かなければいけない。合っていてもいなくても、明確になるから。
「…少し違うとだけ言っておく。詳細は言わないようアルビンと誓約を結んでいるからな」
アンブロシウスはつい喋り過ぎる人だから、アルビンが釘を刺して対策していたみたい。
何をしようとしているかは分からないけど、どの道この人は倒さなきゃいけない。
「待たせてしまったな、アケノさん」
アンブロシウス目掛けた翡翠色をした風の斬撃が相殺されて部屋中に風が吹いた。
神器の手に持ち、そのオーラを全身から発するエレンさんの姿が私の目に映ってその光景に思わず見とれてしまった。




