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アークブレイヴ  作者: 暁辰巳
第5章 聖戦編
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第61話 正義

 法制総本部議裁室。神聖に整えられたその場所に一人の男がいた。

 アグラヴェイン・ロード。ゴレス神聖帝国の総裁で、装飾が施された窓から帝国を見ている。

 前法制代表だった彼にとってその部屋は戦場であり実家のような場所だった。


「…来たか」


 黄金に輝く武器を持った白金の鎧をまとった男が扉を開けて入って来た。

 ゴレス神聖帝国環境総代表。ランスソッド・クロスだ。


「やはりここにいましたね。アグラヴェイン」

「ここに来ると分かっていたぞ。ランスソッド」


 二人は同じシリウスの一員にして総司、そして友人同士である。


「私はゴレス神聖帝国の環境総代表として、“いち人間“として、ゴレス神聖帝国の裏(シリウス)を裏切り戦う道を選んだのは、

 ゴレス神聖帝国(この国)とこの世界を守りたいからです。これは“全て″の事を知った上で選んだ私の思想(おもい)であり信念(正義)

 私が選んだ道が間違いなのかもしれませんが、この世界を滅ぼすことが例え最善だとしても、そこに生きる人と世界という居場所を壊していい訳がありません」


 二人が対面した理由はただ一つ。お互いが選んだ道を提示し終えてから戦うからだ。

『正義の反対がもうひとつの正義』である以上、思想の対立はどうしても起こってしまう。


「相変わらず、お前はお前らしいままだな、ランスソッド。そんなお前はいつだって眩しくて羨ましいぞ」

「それは私も同じですよアグラヴェイン。いつだって中立で公平に仕事に取組み、ブレもしない貴方の姿がいつでも頼もしくて尊敬しています」


 微笑んでいたアグラヴェインの顔が急に威厳がかかった。



「私はアルビンがやろうとしていることは正しくあり、この世界の救済であると思っている」


 異論をランスソッドはいわず、アグラヴェインが言い終えるまでじっと静かに聞いている。


「近いうちに。存在する全てを滅ぼし尽くす超災厄『エヴァスマム』。それがもうすぐ復活する」


「…エヴァスマム」


「エヴァスマムは遥か大昔にこの世界が生み出してしまった大罪そのものだ。アルビンによれば、遥か昔のそのまた大昔に一人の巫女が確認したことから、この事は運命づけらえていたそうだ」



 聖族となってあちこちと場所を行ききしてきたランスソッドはこの世界の違和感が分かっていた。

 どこもかしこも異常はないが、どこか歪で不自然な所がややあったことはその目と身で確認している。

 そうと名付けられた識別名がその原因であることはアグラヴェインの顔を見て即座に分かった。



復活すれば(・・・・・)打つ手はないが、アルビンが生み出した怪物ならエヴァスマムを倒すことができる。

 無論、この世界は犠牲になってしまうが、「それを機にこの世界を終わらせる」。これが私がアルビンに賛同した理由だ」



 ゴレス神聖帝国の法制総として、総裁として様々な闇に触れ知ってきたアグラヴェインが至った結論。


 人類は生きる為(・・・・)に力を付け、知識を身に着け、文明を築き、文化を作ってここまで強く高大に発展してきた。

 だが“生物“であることに変わりない故争いや戦いはどうしても起こる。そして争いの土台が(・・・)知恵と権力のに変わり果て、その規模と闇を大きく変化させた。

 それによって貧困、競争、出生に拍車をかけて加速させてしまい全ての“根本“を様変わりさせてしまったのは否定も覆すこともできない。


 故にアグラヴェインのように多くの者が破滅への欲求(デスドルドー)に希望を抱いたり陥ってしまうのも無理はない。

 


「...アグラヴェイン。あなたの理想には少なからず同感です」


 ランスソッドは喋りながら突斬槍剣(アロンダイト)を抜いた。

 アグラヴェインは依然としたままランスソッドをただ真っ直ぐ見たまま話を聞いている。


「……私も、自分が思っている以上にこの世界に対して絶望や失望を抱いているところもありますが、それに近く或いはそれ以上にこの世界で好きで、生きたいと。そう思うのです。

 …なので。あなたとは相いれません」


 突斬槍剣の剣先をアグラヴェインに向けてそう宣言した。

 本来なら高らかにそう言わなきゃいけないしそうしたかった。

 


「....そうか。強くていい覚悟と信念を持ったな、ランスソッド。

 ......できれば、お前とは戦いたくなかったよ」


「....私も同じです。.......あなたと一緒にこの先も平和を守り築いていきたかったです」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「.......これか」



 環境総の『資料保管部屋』にたどり着いて手当たり次第に資料を探り続けてようやく見つけた。

 エレンさんのお父さん失踪の真相を明かす為にここまで来たんだ。


 ランスソッドさんを慕う人たちのおかげで心置きなく調べられる。

 けど、それにも限界があるしこれを終わらせて本題となる場所へ急がなきゃ行けないからゆっくりする間はない。


「見つけたよ、エレンさん。あなたのお父さんについての資料」


 私がシリウスと戦っていた最中に横から介入してきて再開した。

 シロウさんがエレンさんを助けてくれたらしい。

 どうしてそう分かったのかいささか疑問だけど、あの人の言ったことは本当だった。

 

 エレンさん話によると、ムサシさんはシロウさんによって『神帝の間』へ転送され(おくられ)たそうだから、カール・ゴレス神帝と戦っている。

 だからさっさと用事を済ませてムサシさんに加勢しに行かなきゃいけない。


「...五月八日。バイス・ムンド行方不明の被害届けが提出され、環境総の部員の総力をもって捜査されたが、得られたのは手がかりだけの情報だけだった」


 五月七日にエレンさんのお父さんは突然姿を消して、四年もかけて捜査と調査に力を加え続けて行い続けたそうだけど、情報しか得られなかった為区切りつけたらしい。

 調査と捜査は今も引き続き行い続けてるそうだけど、一向に手掛かりが得られなかったからか近況報告の文しか加筆されていない。


 

「バイス君はこの国の裏を知ってしまったから急いで出て行ったのだよ。彼はある事で患者を()てしまった事で真実を知ってしまったからな」


「....だれっ!?」


「うわ出た!」と一言聞いただけでそう思わせる声だったから明らかに「やばい!」と焦りと緊張が一斉に湧き上がった。

 拍手の音と共に声の主はゆっくりと私たちの目の前まで進んで姿を現した。


「お初にお目にかかる。私はウィリアム・アンブロシウス。

 ゴレス神聖帝国武力総の武器兵器開発の主任にして、ゴレス神聖帝国の影であるシリウスの頭脳にして一員だ」


 メガネをかけた白い服を着た明らかに“ヤバい”顔をした男の人が突如姿を現した。

 動画で見た何かのアニメのキャラをほうくつさせる顔で、一眼見ただけで不気味な印象とほんの恐怖を抱いてしまった。


「おまえが....お前が父さんを殺したのか!」


「いいや、私は殺してはいない。確かに暗殺命令は出ていたが、その時私は研究に夢中になって楽しんでいたさ」


「…何の研究をおこなっていたんだ!」


「『怪物』を生み出す為の研究だ。どうしても早急に怪物この世に誕生させたい奴がいてな。

 ソイツの望みを叶える為、私はこの二千年間ずっとその研究に明け暮れていたのさ」


 怪物の誕生を望むのはアルビンしかいない。

 この人はアルビンの目的を果たすの為の重要な存在として重宝されてきたんだ。

 てっきり『ケテル』の能力(ちから)で怪物を生み出そうとしていると思っていたけど、どうやら少し違うみたい。


「答えて! エレンさんを殺したのは誰なの!」


「そんな事は覚えていない。アルビンなら知っているだろうが、今彼はお取込み中だから会いたくても会えない。だがバイス君が追われてからどのような末路は覚えている。

 バイス・ムンドは優秀な腕をした医者でな、この私でさえ覚える程のにね。

 事の発端は、バイス君が実験として失敗した被検体160の治療を依頼して見事それを治したのさ。完璧にね。

 だが患者が良くなって我々が引き取った後おかしいと感じたバイス君は我々を調べたのさ」



 シリウスのガレス。未熟ながらもパロミデスに次いで努力家だった彼女は毎日欠かさない努力の末尋常じゃない強さを手に入れたことが認められてシリウスになることを認められた。

 だが彼女はシリウスの中で唯一聖族の血に拒否反応を起こして適応症に負ってしまい、バイスによって治療された。


「数年にわたってシリウスから逃げ続けてついに捕まり、バイス君は私の試作実験によって醜い怪物もどきとなってしまったのさ」



「醜い怪物もどき?....... ――じゃあ、あの敵はっ!」


 『醜い敵』と言われて真っ先に思いついてそれ以外に考えられないのは二つしかない。

 異世界で最初に私が倒した魔物。シャンバラに教団が襲撃したときに猪突猛進に攻めて来た怪物。

 そのどちらか、或いは両方が、エレンさんの……!!


「.......そうやって。多くの人と魔族を弄んできたのか! おまえはあぁ!」

 

「何を言っている。

 君らが着ているその服に身につけた知識に暮らしも、武器に魔法に、命も、全て“犠牲”の積み重ねの上に培ったものじゃあないか!

 君たちからしたら。私と私が言った事がおぞましく、汚くて醜くて認めたくないのだろう。

 だが『進化』とは何かの犠牲によって成り立っているのさ。無論君たちの…いいや、我々が手にした現在(いま)の生活も、全て!」


「ふざけるんじゃあねえええっ!!」



 激情に呑まれたエレンさんがトゥゲスリクを放つ。まるでエレンさんの激怒を表すかのように、放たれた魔法の威力がいつもより強くて激しい。



「ほうほう。光と闇の混合魔法か。

 原始にして最強である元素同士なだけあって確かに威力も存在自体も凄まじくて強烈だな」



 銀色に放射される魔法を突き壊してアンブロシウスはその姿を現した。

 純白に輝いて綺麗な翼が六本。聖族としての、熾天使(セラフィム)の姿だ。

 片手で受け止めたみたいだけど、再生が間に合っていない。


「簡単にくたばってしまっちまったらこっちが困るんだよっ!! お前には骨と魂の髄から髄まで痛めつけないと気が済まねえ!」


「そうか。なら君の怒りを…いや、君の全てを私にぶつけて来るといい。いくらでも受けて立とう」


「上等だこの野郎ぅ! その聖族がなにかしったこっちゃねえぇ! 」



(すぐに私をエレンさん目掛けて投げてください! 早く!)


「トゥゲスリ―!」


「『権理座領(フルコージョン:)実行(ドミヌス)』」


「―なにっ!?」



 右手を前に出してアンブロシウスがそう唱えると放とうとしていた魔法が魔力となって分解された。



「…ほう。この姿(・・・)となった私を見て咄嗟にそう対処したのは正解だ」



 剣の神器がエレンに触れた瞬間に緑色の風が吹き荒れてエレンを包み込んだ。

 アンブロシウスを中心とした範囲内はに力が抑えられて無力化される。だが熾天使以上の“存在″姓を持つ者。即ち神なら彼の支配を受けない。

 だが、アンブロシウスの存在性は神に等しい。よって、剣の神器とマナを持ってしても五分五分にしか抑えられない。


「―そこっ!」


「おっと。 君の事もちゃんと忘れていないとも。さーて、どんなものを君は見せてくれるのかな?」  

・フルコージョン:ドミヌス

主天使ドミニオン)が持つ統括権限。発動者の思い通りに制限をかけたり力などを底上げすることができる。

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