幕間 アルビン
目覚めた瞬間、オレはこの世界にいた。
世界を一目見た瞬間から自分がこの世界の住人ではないこと、この世界がどこか歪であることが分かった。
【叡智の加護】を持っていなかったとしても、世界の様子を見間違えも見落とすはずもない。
聖族であるオレからしたら、この世界の至る所に黒や紫色の粒子が漂っている。
「穢れ」と呼ばれている悪感情から発生する″負″の因果そのものであり、聖族が忌み嫌うもの。
だが世界に穢れが漂っていること自体が問題ではなく、“時空″が安定していてもどこか異常だ。
嵐の前の静けさと言わんばかりに、この時空の裏にとてつもない何かが今にも溢れ出ようとしているような、そんなものを感じたのだ。
目覚めてから少しして一人の女性がオレの前に現れてオレを引き取られた。身寄りも行く当てもないがないと知った途端に女性はオレを引き取ると即座に決めて曲げなかったからだ。
生まれてからかなりの間、オレは“人″として過ごした。
抵抗するのは容易かったが、当時オレが“子供″だったせいか、女性のワガママを受け入れた。
成長はしても老化しないオレを人間じゃないと気づいても、母さんは最後までオレを息子として人として扱った。母さんは幼かった息子を魔物に殺されてた為か、オレを恐れることも嫌悪することもなかったんだと思うが、これだけは今でもはっきり分からない。
【叡智の加護】と四つの自我を持ってしても分からなかった。オレが生まれながらの人ではないからかもしれんが、これだけは生涯かけても解明できそうにない。
家族としての時間を終えた後、オレはこの世界を隅々まで巡る旅へ出た。
この世界を歪だと知ったときから既に決めていた。
家族として、人としての時間を過ごしたおかげでオレはこの世界のことについて粗方知ることができた。
言語の読み書き。この世界の歴史。世界の情勢。
母さんは“平民″だった為最低限の教育しか受けられない立場だったが、オレからすれば丁度よかった。
上位に上がれば権力を得て活動しやすくなるが目立つ性質上、オレは平民という名の影に隠れて行動し続けた。
聖族の存在が伝説でその本人である以上、かなりの危険性もあったからだ。
「『世界に魔が溢れし時、異邦の世より白き流星が舞い降りる。 白き星が魔を討ち滅ぼしたのち、赤き星子が誕生する。
白き星は黒く染まり。虹の星は消え失せる。そして世界もまた崩れ落ちる』
.....なるほど、そういうことか」
壁画に刻まれたものと古代語を少し見ただけで何を伝えようとしているのかを即理解した。
どうやらオレが思ったとおりの事が過去に起きてたようだ。
過去に起きたであろう″大きな出来事″の情報は粗方集めたが、壁画の絵と古代文字を通してようやくその尻尾を掴んだ。
「必要な情報は粗方揃った以上、オレが“すべきこと“は決まった。
長い戦いになるよ、母さん.....」
残された時間が後どれくらいあるか分からない以上、ここからは準備と並行した頭脳戦となる。
目的を果たす為にはかなりの時間と準備が必須であるからには、常にプランを立てながら状況を把握して的確に物事を進めなければいけない。
どんなに手を尽くしても、大量の犠牲を生み出しても必ず遂行する。
それがオレの″使命″であるがゆえに。
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「やあ。久しぶりだね、アルビン。君ともう一度会える時を楽しみに待っていたよ」
「…来たか。始める前に言っておくが、オレは【ケテル】を持っていない」
オレの計画は『打倒厄災』を第一とした“怪物“の誕生。その為ケテルは必要不可欠であり、破壊されれば破綻する。
ケテルが聖神が司る十の理にして全能の一つである以上、智天使であるオレが一番持っていると思うのは当然だろう。
「確かに君を引き受ける条件としてそれの破壊を頼まれて飲んだけど、それ自体はどうでもいい。準備はとっくに済ませてるんでしょ? さっさと始めようよ」
『自身で決めたことと一度結んだ契約』は最後までやり通し、刺激に飢えては満たして楽しみ続ける。それが悪魔という存在そのものだ。
ジャンルは“戦い″を生き甲斐にし、より強者との勝負を好む。
「遅かれ早かれ。これが、最後の勝負になる。決着をつけるついでに思いっきり楽しもうじゃないか」
「そうこなくっちゃ!」
壁を突き破って赤、青、黄、緑の四色と紫色のオーラと力がぶつかり合って衝撃波が発生して轟音が鳴り響く。
上空で何かが戦っていると気づいたゴレス神聖帝国の住人たちは上を見上げて気になって眺め、一部の者は恐怖と命欲しさに走って逃げていた。
⬇︎古代語(発音)
『ジガイノ マザ オオアリキザア ムアイカアガイ
カラ サラツナガレキラ ナオチキラ
サラツナガレキラ ザ マゴ ゲシツメ アルバ
ガレミムヂレラ ゴ イガウマ デシル
サラツムヂレラ ヴァ ムロマグ ノッジマー
キレキララムヂレラ ヴァ ムジケス
シメシ ジガイ ゴ ナグキナヅル』
以下↓没発音
『ガイヨマバヴェレシガヂ、ヨゾヴウロギヴォヂラガル。ウロヴォヂマキスゼシ、ラカヴォヂバンビョウ。
ウロヴォヂドロガメル、リギヴォヂギヴェル。ガイヨサキデグズデヂル』




